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マン・ハンティング・ウィズ・ポスト・アポカリプス 10
「エンジさんは仕事をする上での目的とかないんですか?」
「ねぇよ。義理を果たして後は好きにやれれば上々だ」
工場に現れてから即投げかけられたコーデリアからの質問に即答するエンジ。ふうん、といった面持ちで納得するコーデリア。二人の周囲をフチクモ達がせわしなく歩き回っている。
「だがまあ、そんな企業はそう多くねぇ。ココ以外には精々俺の知っている範疇じゃ両手に収まる位の数だ。後はどいつもこいつも人間を消耗品みたいに扱いやがるファッキンスカム企業共だってことだな」
「私も、人狩りにさらわれてたらそうなってたでしょうか?」
「多分な」
エンジの端的な回答に身震いするコーデリア。そんな彼女を空いているデスクの前に座らせて携帯UNIXのモニタを面前に向けてやる。
「ま、今はやりたいことに専念しろ。それが一番スキルが伸びるからな」
いじりたかったんだろう?と言わんばかりに促すエンジにコーデリアは目を輝かせてUNIXのキーボードに触れた。
「あれ?パスワードかかってない」
「新品だからな、自分で設定しろ。わかってると思うがあまり間抜けなパスはやめとけ」
念のため釘はさしておく物の、コーデリアが設定したパスは長文めいた代物でパスワード、の域を完全に逸脱していた。ちなみに、過去によく言われた数字記号を織り交ぜた八桁以上、というパスワードのセオリーはさして意味がない、というのがこの時代におけるエンジニア達の認識であった。総当たり式のハックでもCPUのスペックが極まっているため、八文字程度ならあっさり破る事が出来るのだ。
ミシンめいた高速タイピング音を奏でてUNIX上でコーディングを始める少女。まるで演算ログの如き速さでプログラムが構成されていく。その様子を確認してはエンジもまた自身のUNIXを操作し始めた。しばし、ただっぴろい工場のデスクにタイピング音だけが響き渡る。その音を遮ったのはコーデリアの方からだった。
「そういえばエンジさん」
「なんだ?」
「ここって買収とか、接収とかされたことないんですか?」
「あるぞ、例えば……」
過去の記憶を掘り出している間に、ずしん、ずしん、ととてつもなく大きな物体が足踏みするような地鳴りが二人の聴覚を揺さぶってきた。その感覚にいつにも増してウンザリした表情でエンジが続きを吐き出した。
「こういうバカは不定期でやってくるって訳だ」
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