現代討魔伝:ボンズ ウィズ ディテクティブ そのよん
「うるおいがたりない」
「ああん?」
「なんでこのバーはご老人方ばかりなんだ……」
時は新世紀!
二次元の嫁をこの手にめとるべく狂人なる天才が作り出したフィックションとリアルをつなげるマッスィーンによって幻想世界と現実世界は結合してしまった!
現実を侵食する幻想より人々を虐げるべくそう定められた使命にて数々の魑魅魍魎と悪魔が迫る!
これは現代を駆け異形を断つボンズの物語である!
※このパルプの登場人物はフィックションでありリアルの奴らとは関係がない重点。
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ぜんかいのあらすじ
『断捨離』の流行を利用し稀少なコレクションを捨て値で買い叩いていたのはアクマだった!ケチな悪事の割りに強大なアクマを倒した二人に訪れる次なる依頼とは!
「うるおいがたりない」
「ああん?」
「なんでこのバーはご老人方ばかりなんだ……」
場所はいつもの黒ボンズと白探偵のたまり場、バー「涅槃」。
時は花金の夜である。
白ずくめの胡散臭い探偵ことセージはカウンターに突っ伏して嘆いていた。
「そもそも日本がご老人ばかりだからな、今時は」
「名前が悪いよ名前がー、近い意味でもパライソとかパラダイスとかにしようぜ」
「俺の店の名前にケチつけるならツケ請求してもいいんだぞ?」
ぎろり、と表題のボンズよりよっぽどボンズしてる坊主頭の筋骨隆々としたマスターがセージを威圧した。
威圧に対しへらへらとボンズに振りかえる探偵。
「カリュー、建て替えてくれ」
「建て替えるのはいいがいつ返すんだ?」
「その分働きます!」
そう、セージは金遣いの荒さ故カリューに頭が上がらなくて調査などは優先的に対応してるのだ!
「よくコンビ解消しないなお前ら」
「ボンズ的にはこいつも慈悲の対象なんで、一応慈悲の対象なんで」
「二回言われた!?」
わざとらしくしょげ返る探偵を無視して話を続けるマスター。
「セージの寝言は置いといて、幸い店は繁盛しててな。ウェイターかウェイトレスを雇おうと思ってたところだ」
「ウェイトレス、ウェイトレスで!」
「だが今日本は空前の人手不足、幻想世界から来た人々は観光気分で定住する人も少ない。要はえり好みできるほど応募が来るかどうか……そこでだ、働き手を見つけたら紹介してほしい」
「お幾ら万円で?」
「……ツケの1%は帳消しにしてやる」
「オーケーマスター、金額的には不満だがとびっきりの美少女見つけて相殺してやるぜ」
「それよりもちゃんと借金を返すことを考えてくれ……」
火花を散らすマスターと探偵に呆れつつ、自らの服が引かれていることに気づくカリュー。
服を引いているのは小柄な老婦人だ。
「あなた、もしかしてお坊さん?」
「ええ、ご婦人。これでもボンズの端くれです」
「まあ、そうなのね」
「何かお困りですか?」
カリューの問いかけに品のいい眉をゆがめて懸念げな顔を見せる婦人。
「実はね、息子夫婦の家にぽるたーがいすと?そういう悪霊みたいなのが出るみたいで、相談できる方を探していたの」
「それは、『霊障』という奴ですね」
「それよりご婦人、息子さん夫婦にお子さんもいらっしゃいます?」
二人の会話に割って入る探偵。特に疑問に思わず答える婦人。
「ええ、高校生の女の子が一人いますの」
「この依頼受けようぜカリュー!」
「このバカはさておき、お受けいたしましょう。息子さん夫婦にボンズから連絡が入ることをお伝えしていただけますか?」
「ええ、ええ、ありがとうございます……」
ボンズの承諾に手を合わせて感謝する老婦人であった。
~~~~~場面転換!~~~~~
ところ変わって住宅地、老婦人の息子夫婦が住む住宅へ向かう道。
「『霊障』なんて使うアクマ居たっけか」
「そんなのいくらでもいるぜカリュー。同じオカルト枠だからな。だがよー」
「なんだ」
「俺っちの直感がコレアクマがらみじゃないと告げている。んで事前調査でも人間の影が見え隠れ、だ」
「であれば『チーター』か……メンドクセエ話になっちまうな」
説明しよう!現実世界と幻想世界が結合した結果、この世界ではファンタジー魔法めいた力を発現する者達が現れた!
そのうち、法的許可を得て活動するのが幻想を滅ぼす者達、「バニッシャー」であり、無免許の無軌道存在が「チーター」である!
アクマと違い現実世界側の戸籍を持った存在である「チーター」は法の庇護が受けられる、すなわち「バニッシャー」の一存で殺戮処分とはいかぬ!
「『チーター』だとすれば聞き分けのいい子だといいんだがな……」
~~~~~場面転換!~~~~~
「あなた方が母が取り次いでくれた除霊師、なんですか?」
「そうですそうです、俺が探偵のセージ。こっちがボンズのカリュー」
「はじめておめにかかります」
ちゃんとした人間相手のため、まともに挨拶するレアな二人である。
老婦人に似て品のいい夫婦に案内された居間を見回すボンズ。
(食器棚にダイニングキッチン、隅にはテレビか。ここで『霊障』が起きたら危険だな)
探偵の見解も同様なのか、ボンズの目くばせに頷く。
「さてさて、いっつ『霊障』が襲ってくるかわからないんで単刀直入にお伺いしましょう。ご主人と奥さんどちらでもいいんですが、この子を知っておられます?」
探偵が上等な鞄から取り出したのは中学校の卒業アルバムである。
あるページを開いて指し示されたのは一人の女子生徒だ。
見るからに奥手そうな感じで、写真でもうつむいている。
首をかしげる旦那にすぐに気づく奥方。
「この子は……娘の同級生です。中学校まではよく一緒に遊んでたんですが、高校に入ったころからうちに来ることはなくなりました」
「オーケーありがとうございます」
「その子がなにか……あら?」
南無三!奥方が問いかけようとした瞬間呼応するように家が激震する!
なすすべなくその場にいる四人が揺さぶられる!
「おおおおおお、おおおうこれ『霊障』とかいう生易しいレベルじゃなくね!?」
「まさかここまで悪化してるとは!」
振動に翻弄されつつもすぐさま戦闘態勢に入る二人!
「ここは危険です!すぐに娘さんと合流して外に出てください!」
振動が収まると思いきやひとりでにガラスが割れる勢いで開きサラミサイルを乱射する食器棚!カリューは夫妻に襲い掛からんとするサラミサイルの前に立ちはだかりライトセーバー降魔の利剣でこれをことごとく撃ち落とす!!だがしかし!食器を撃ち切った食器棚は自身を兵器のごとく撃ち出してきた!
「渇っ!」
部屋を揺さぶるほどのボンズシャウトで食器棚を押しとどめるとこれを両断し叩き伏せる!
「まずいぞ、これほどまで力を振るうほど成長してるとなるとここの家族の身が危険すぎる」
「まったくだぜ、これはミスッたな!」
なおも飛来する家具!テレビ!ブルーレイレコーダー!テレビゲーム機各種!そのことごとくを剣が薙ぎ払い銃が撃ち落とす!
「ご家族は退避したか?」
「ああ、娘さんと合流してだな」
飛来するポルターガイストを防ぐ合間に届く悲鳴!
「くそ、外もか!」
悲鳴を受けて飛び出る二人!
飛び出た先にはおお!なんたるすさまじき力か!引き抜かれた木に宙を舞う車に屋根すらはぎ取られて凶器と化し犠牲者家族の周囲を旋回している!
そして見よ!抱き合って震える家族の前に立ち朧の様に揺れる亡霊あり!
今にも家族を押しつぶさんとするポルターガイスト、そして少女の霊の前にボンズと探偵は立ちはだかる!
「そこまでにしときな、お嬢さん。いじめの報復に一家皆殺しはやりすぎだって!」
「そうか、ではこの子も犠牲者なのか!」
探偵の推理結果に頷くボンズ。
「そうさ、この子は一年前から不登校に陥ってた。原因はこの一家の娘さんよ」
二人が旋回するがれきを打ち払いながら状況確認する、夫婦に挟まれてひたすらに謝り続ける少女の姿!
「あの少女の霊は俺が何とかする!セージは家族を守ってくれ!」
「あいよ任された!汝は土塊、されど命やどせし土塊なりてその身をもって脆き人々の盾となれ……ゴーレム!」
おおみよ!探偵のタブレットに描きしサモンプログラムが周囲の大地を人型の巨人と変え無数に飛び交うがれきを叩き落す!
がれきの合間を縫ってボンズが少女の霊にかけつけるも一際大きながれきがボンズを襲う!おお、南無三!
「カリュー!」
だがしかし!がれきの凶器はボンズの手前で止まっている!少女の生霊自ら止めたのだ!立ち尽くす少女の霊に歩み寄るボンズ!
「もういい、もういいんだ。これ以上罪を重ねればお前は戻れなくなる。だからもうやめておきなさい」
おお!なんたる慈悲か!カリューはライトセーバー降魔の利剣を地に放ると少女の霊を抱きしめて優しくさとしたのである!宙に浮いていたがれきが次々地に落ち無力化されてゆくではないか!
完全にがれきが沈黙し、静寂が戻ってきた時には少女の霊は既に姿を消していた。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏……
~~~~~場面転換!~~~~~
「はぁ~~~~~~~~~~~~……」
事件解決後、いつものバー「涅槃」の昼下がり。
そこには珍しく仏頂面ではなくアンニュイな表情でクソデカため息をついてカウンターに伏せるボンズの姿があった。
「どうしたのさカリューちゃん」
「いや、なに……俺もまだまだボンズとしての徳が足りんと思っただけよ」
「ふ~ん。そんなカリューちゃんに紹介したい人がいます!こっち向いて!」
「ああん?」
怪訝な顔で振り返ったボンズの前にうつむいて立っていたのは天使もかくやと言うほどの美少女であった。豊かな黒髪を緩やかな三つ編みにし、前々から相談されていたここのバーの制服……フォーマルな給仕服をまとったその少女は顔を伏せつつも視線だけはまっすぐボンズを見ていた。
「……どなた様で?」
「いやだなーカリューちゃんったら!自分で救ってあげた子覚えてないとか薄情だなー!」
「えっ、えっ。前回の事件のターゲットの子は既にお亡くなりでは?」
「言ってない言ってない、不登校になったってだけ」
ポクポクポク、チーン
数瞬経過後、自分が勘違いしていた事を悟ったボンズは見せる顔もなくカウンターに臥せってしまった。
「いやー、そりゃこんな可愛い子がいたら嫉妬で苛めちゃうのも無理ないって!な!カリュー!」
「ソットシテオイテクダサイ」
カウンターに伏せながら震える声で抗議するボンズを放置してセージは少女の元に戻ると、
「ほら、自己紹介しなきゃ、名前名前」
「あ、そうでした……カスミ、と申します。引きこもりのリハビリに、とセージさんにここのアルバイトを紹介していただきました。よろしくお願いします、お坊様」
「カリューデイイヨ」
深々と頭を下げて感謝する少女を振り返る余裕もなく、ただただ気恥ずかしさに震えるボンズであった。
【この続きは作者が思いついたら続く】