空舞う飛竜は願いを抱いて
「宅急便でーす、受け取ってくれないと食べちゃいますよー」
「居る!居るから!3分だけ待って!」
晴れ渡る青空の下、何処までも生い茂る森林に伸びる取り分け高い林檎の樹。
その根元にたたずむ運び屋である空色のワイバーン、ハルアトはこの場所に指定された自身の手のひらにも余る小箱を手に洞に向かって呼びかける。
「お待たせ!いやー、まだ来ないと思ってお風呂入ってたんだ……ごめんね?」
「いいですよー、今日は荷も少ないですし」
木の洞に仕込まれたドアより顔を出したのは、ピーアと呼ばれる小人族の青年だ。言葉の通り湯気をまとって眼鏡を曇らせた小人はハルアトの手に飛び移っては小さな小さな小箱を受け取る。
「ありがとう、飛竜の運び屋さん。今日届かなかったら依頼の品が間に合わなかったよ」
「いーえー、これが仕事ですから」
「良かったらこの木の林檎食べてってください、そろそろ食べごろですので」
「ありがとーうございまーす」
小人の青年から虫眼鏡で見ないとわからないようなサインを伝票にもらうと、ハルアトは力強く飛び上がり様に熟れた林檎の実をいくつか捥いで肩掛けの鞄に放り込んだ。
青と緑が衝突しあう空の地平線で、彼は次の届け先を確認。
「カルキヨン平原の向こう側にあるネクマシ村?あれ、ここ確か廃村じゃ……」
と、不意にハルアトの身体が軽くなる。
いや、彼が牽引していた積み荷の縄が切断されたのだ。
当然落下した積み荷は渓谷の川へ着水、沈んでいく。
「何をするんだ!」
ハルアトは急襲者……紅いワイバーンに騎乗した赤騎士に詰問するも、すぐさま川へと急降下!積み荷を回収しにかかる!
一方ハルアトを襲った急襲者はその様を傍観。
「貴公には悪いが、これも大儀の為」
「もう届いてませんよ、旦那。それにこの程度でアイツが諦めるとも思えませんな」
「む……」
そして急襲者も彼を追う!
【続かない:797文字】