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Photo by
yokoichi
青空に白雪の降る
「雪が見たいのかい?」
「うん、おれ達島から出た事ないじゃん?ホンモノの雪とか動画でしか見た事ねーから」
どこまでも爽やかな青空が続く絶海の孤島、その広大な牧草地の中に海の青と雲の白を映し込んだ様な宝石があった。それはどこまでも清廉さをほうふつとさせる美しい色合いをまとった、巨大なる生物、一体の竜であった。
そんなのんびりと牧場で牛たちを見守る巨竜に対し、島育ちのランニングシャツと半ズボンくらいしか着ていないわんぱくな男の子が拝みこんで頭を下げる。その後ろには、男の子に不釣り合いなくらい着飾り上品な女の子が落ち着かなげに竜の様子をうかがっていた。
蒼穹の竜は大きなあくびをかくと眠気で落ちそうなまぶたを爪のすべらかな甲の部分でさする。昨日は夜通し牛泥棒のUFOを追いかけまわして追い払っていたので少々寝不足なのだ。竜だって睡眠は必要なのであった。
「降らせたら静かにしてくれる?」
「するする!約束するよ!」
「約束だよ?」
かのウユニの光景を写し取ったかのような竜は、おっくうげにその長い首を天に向ければ、オオアギトを開いて口腔より天にわだかまる白雲に向け一条の光を吐く。それはその実、光ではなく極端に温度の低い吐息が空気を歪ませた光景だ。
極寒の吐息を受けた雲は見る見るうちに白く輝く粒を地に差し出していく。目に見えてわかるほど大粒の雪が、常夏の島に降り来ってはその熱でじっくり見る間もなく儚くとけていった。
「すっげー!にーちゃん流石だぜ!ほら君も見なよ!」
「これが、雪、なんだ」
「静かにしてくれるって言ったじゃないか……」
約束を忘れて大はしゃぎする男の子を尻目に、竜はネコめいて丸くなり大あくびの後すやすやと寝息を立て始めたのだった。
空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。
現在は以下の作品を連載中!
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主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!
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