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BWD:龍の移住相談なる会-3-
青と白の青空の様な色彩の巨龍は競技場の中に何とか納まっているという有様で、なるほどこの巨体では早々都内で身を休められるようなスペースは見つからないという事がわかる。
特撮に出てくるような巨大怪獣にサイズこそ劣る物の、その質量差は人間に恐怖を抱かせるに充分な代物で、間近で見る龍鱗は一枚一枚が戦車の装甲板めいた分厚さにこれまた青白い色合いの美しい光沢を放っている。
丸まっている龍の頭部からはごくごくわずかに呼吸音らしき音が漏れ聞こえ、人間の尺度とは一緒に出来ないが熟睡しているようだ。それは裏を返せばちょっとやそっと不意をうたれた所でびくともしない己の強靭さを龍自身が確信しているともいえる。事実ボンズと探偵の二人が、歩み寄るまでに観察した龍の鱗には傷一つ見受けられない。
「下手うったら寝起きの一息で俺達ごと背後のビル群が吹き飛ぶぞ」
「わかってるわかってる、ビビんなってカリュー」
「慎重と言ってくれ」
あくまで軽いノリの相方に嘆息しつつ後をついていくカリュー。念のため道具を入れた頭陀袋からブディズムの秘宝、ロウ・ミラーを取り出してターゲットのドラゴンを映してみた。ロウ・ミラーが映したカルマ判定の結果は驚きの真っ白さ、このドラゴンは剣呑な見た目に反してとてつもなく徳が厚いようだ。その事実にひとまずは安心する。
「おーい、龍の旦那、ちょいと俺とお話しちゃくれねーかい?」
ごくごく軽い、雑談に誘うような口調で目の前の真龍へと語りかけるセージ。ここまでくれば肝が据わっていると言わざるを得ない。探偵の呼びかけに顔を地に伏せたまま目をあける真龍。その巨大な宝石めいた瞳には確かな知性が備わっており、起き抜けに目の前の人間を吹き飛ばすような蛮行には及ばなかった。
「ぼくに何か用かい?」
思いのほか可愛らしい口調の、辺りに良く通る声で返答する真龍。首を曲げて探偵の方に向けると真正面からその双眸でもって探偵を見つめている。
「そう、そう、俺っち旦那にお願いしにやってきたんだ」
「なにかな、鱗とか牙とか欲しがられてもぼく自身にも簡単には取れる訳じゃないから、あげられないんだけど」
「ノン、ノン、俺っちのお願いは簡単、ここに居座るのは勘弁してほしいってことさ」
セージの言葉に目を細める真龍。奥ゆかしく周囲を破壊しないように身動ぎした彼は、すぐに探偵の言葉を理解した。
「ああ、ここって空き地じゃないんだ?てっきり誰も居ないから居ても平気かなって思ってたよ」
「そうなんだぜ、と。いつもは人がいないんだがーたまに使うんだ、たまに」
「それは失礼したね、ぼくはほら、幾分この図体だろう?この世界、この国にやってきたは良いものの、気軽に休める場所が中々なくて」
ここまでのやり取りでカリューはようやく人心地がついた。この真龍はセージの推理通り高い知性と理性を持った存在で、ちゃんと交渉も通じる。問題があるとすれば、ただ退いてもらうだけではなく今後の憂いにならぬようしっかりと交渉し、双方にとって良い結末を選択しなければならない。
東京都民が消し炭になるかどうかは未だこの軽薄で女癖の悪い、いやあらゆる点でろくでなしの駄探偵にかかっているという事実はいまだ揺らいではなかった。
【BWD:龍の移住相談なる会-3-:終わり:4へ続く】
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