イドラデモン・アニヒレイト -1- #ppslgr
永久凍土でもあり得ない速度で生じた氷柱が、開けた光の差し込むNoteの商業ストリート上で、虚ろに徘徊するショーウィンドウマネキンめいたボット群体を一撃の元に凍結させる。
「カッカ!」
猛禽の如く鳥かごの様に閉ざした氷柱に飛び掛かるのは、焔色と藍色の手斧を双手に握り、長いケープをたなびかせるインバネスコートをまとった灰の髪とあごひげの壮年の男だ。
つば付き帽をかぶった彼が右手に握った焔色の手斧を刈り取る様に振るえば、一瞬で氷柱を煉獄が塗りつぶす。当然、氷柱は瞬時に蒸発し水蒸気爆発を誘発、中に閉じ込められたボット群はどうする事も出来ずにまるで安全性検証人形のように粉々に消し飛んでストリート路面に冷たく転がる。
「前々から見かけてはいたが、今日びいくら何でも増えすぎじゃないか!ボットが!」
「一体全体なんでじゃろうなぁ!?」
俺の後方で手斧を振るう男、J・Qがその戦闘力を遺憾なく発揮する間も有らばこそ、俺は俺で手にした黒橙の黄昏時を映し込んだが如き大剣を振るう。斬撃の軌跡から十数体のボットがトーフ人形よりもあっさりと両断されては、刀身にともなった衝撃波が無事だった上下半身を発泡スチロールが散るも同然にばらしていく。
だが、俺が斬り伏せた数に勝るボットの群れが、わらわらとゾンビ同然ににじり寄ってくる。彼らの手に握られているのは、気に入った作品に贈るためのハート型スキ・チップだ。だが、ボットにかかればそれは凶器にもなる。そう、俺に向かって手裏剣の如く、速度は銃弾のそれ並みで投げつければスキと言えど殺意の現れにしかならない。
「その攻撃、不愉快極まりないな!」
返す斬撃の剣圧をもって、機関銃のように撃ち込まれるスキを悉く斬り落とし叩き伏せる。こんな形でスキをもらっても嬉しくもなんともないという物だ。続いて、力任せに大剣でもってストリート路面をぶん殴り、生じた衝撃波をもって並み居るボット共を粉微塵に粉砕!だが第三陣の群れがうごうごとおぼつかない足取りで迫ってくる!
「チィッ!」
「ハッハァ!コイツを喰らえい!」
大剣を青眼に構えた俺の背後から、焔藍二色二枚の円が犬に追わせるフリスビーめいて飛翔すればボット群の左右から襲い掛かり次々と両断!凍結!焼滅!一体残らず破壊していく!フリスビー、否、手斧は速度を緩めるとJ・Qの両手に巣に帰る鳥めいて収まった。
「今ので打ち止めのようじゃな」
「ああ」
精巧に人間を模したボットの残骸が無惨に転がる様は、まるで戦場の様であくまで商業施設のはずのNote内には相応しい光景とは言い難い。だが、放置すればここはボットだけが闊歩する虚無の空間となり果てるだろう。であれば荒野と揶揄されようと人間が居た方が万倍マシである。
「これはもう、ボランティアで対症療法しているだけじゃラチがあかんレベルになってきたな」
「うむ、以前と異なり行動も過激化しておる。こいつはちょっとばかし見過ごしておけんのう」
大剣を背負った鞘に納めると、後片付けは周遊する樽形状の清掃マシーンに任せ、J・Qと共にまずはバー・メキシコに戻る事にする。元から断つならば、まずは出所を改める必要があるだろう。
【イドラデモン・アニヒレイト -1-:終わり:その-2-に続く】
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