朝起きたらようじょになってるなんてそんなバカな展開が
「……マジかよ」
カーテンの隙間から差し込む陽光にて、自室で目を覚ました俺はすぐに自身の異変に気付いた。成人男性としては屈強と言えた腕は今は若木の様で、服はおろか下着すらゆるゆるで下に落ちる。流石に焦りを感じつつも冷静さを維持して情報端末のインカメラを使って自分の顔を確認するとそこには紛れもなく間の抜けた感じの目つきの悪い幼女の顔が映っていた。ブッダファック、ブッダは俺に何の恨みがあるというんだ。
ーーーーー
『ブハハハハハハッアハハハハハハハ!!!』
信頼できる相手に体格に合う服を持ってきてもらい(もちろんいつも通り黒で統一で)、”Note”にあるバー・メキシコを訪れた俺を出迎えたのは当然他のパルプスリンガーの爆笑だった。本音を言えば部屋に引きこもっていたかったが、寝てれば治るという保証はどこにもなく、昨晩何かをここでされたと考え恥を忍んで手がかりを探しに来たのである。
「え?なに?お前マジでR・Vなん?」
「ウソついて何になるんだよ、大体こんな目つきの悪い幼女が居てたまるか」
一番笑い転げていたA・Tにストレートに抗議しつつ椅子に座ろうとするが……中々届かない。手をかけてやっとこ登ると今度はテーブルに背が届かない。いくら何でも縮み過ぎだろう俺。自宅で試してみたが、ハンドガード付き大型ナイフ「アトラス」なんて持ち上げる事すらできなかった。
「手がかりを求めてここに来たものの、思い当たる節はないんだよなぁ」
「ハッハ、昨日何やったんだお前」
「いつも通り、パルプ並べてチャすすりながら新作書いて、飯時になったらメシ食ったぐらいだ」
「それで幼女になるって呪いでもかけられてるんじゃね?」
A・Tの一言に首を回してM・Tと目を合わせるが、当然彼は首を横に振って否定する。彼が俺に呪いとかかける理由は……ないはずだ、多分。クソデカため息が口をついて出る。そんな俺をマジマジと見る紅蒼の二振りの斧を腰に帯び、近代の古めかしい黒コートを羽織ったJ・Q。
「しかし、面妖な症状だの。性転換に若返りとは」
「俺自身はどっちも興味ないのだが、参った」
「ふむぅ、何にせよワシの知識では何をどうすればこうなるかすぐには解明できん。スマンなR・V」
「いや、こんなんパッとどうこう出来るのなんてそれこそブッダ位だ。ありがとうJ・Q」
彼に感謝の意を述べつつも思案する。一体どうしたものか……幸い精神状態は元の年齢のままだが、物理肉体が幼女になっている以上時間が経つにつれて精神まで幼女化する恐れは否定できない。そうなれば今の俺という存在は完全に消失し、全く別のこの目つきの悪い幼女という存在に切り替わる。そうなれば死んだも同然だ。
テーブルに突っ伏してうなだれてしまう俺に、不意に聞きなれた声が背後からかけられた。
「あら、ようじょパウダー、効果でたんですね」
かけられた声の方にギギギギとぎこちなく振り向くと、そこには見慣れた、喪服めいたドレスの不健康そうな女性の姿。俺の知己、N・Mだ。
「お」
「お?」
「おまえかああああああああああああ!?」
ーーーーー
「いやー、新型ゾンビパウダーの研究で出来た副産物だったんですけど、人間の成人男性に投与した際のデータがほしくてですね」
「おまえな、せめて許可を……いや、そもそもそんな物騒な物ホイホイカレーの隠し味みたいなノリで放り込むな」
「大丈夫ですよ、無味無臭ですから。実際昨日食べたカレーの味も変わってなかったでしょう?」
「アレかよ!全く油断も隙もないやっちゃ」
抗議する俺を笑いを抑えきれない様子で見守る皆の衆。当然だろう。俺が観客の立場だったら俺だって笑う。惜しむらくは当事者になってしまった事だ。
「まあご安心を。まだ研究段階ですから長くても1日、つまり明日起きる頃には元に戻っていますよ」
「だといいがな……」
俺は恐らく疲れ切った表情を晒しながら、今の自分にとっては高い椅子から降りて皆に声をかける。
「すまん、皆。騒がせたな」
「いーぜいーぜ、面白いショーだったかんな」
「みせもんじゃねぇ!全く」
再びクソデカため息吐き出すと俺は早々にバー・メキシコを退出した。ブッダよ、せめて次はもっとまともなトラブルにしていただきたいものだ。
ちなみに、身体の方は一晩寝たらちゃんと元に戻った。良かった良かった。
【朝起きたらようじょになってるなんてそんなバカな展開が:終わり】
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