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コンテスト、決着

 西部劇を模したバーの中は、今や胡乱な奴らが詰め掛けて壁のど真ん中にかかったデジタルサイネージを今か今かと注視していた。
 アロハを来た天狗、ゆったりカジュアルな眼鏡の青年、モノアイアイコン覆面プロレスラー、赤ら顔に豊かな栗毛を三つ編みにした杖持つ少女、品のいいグレーのスーツの紳士に、二足歩行の象、浅黒い肌にタフな目をした初代チャンプ、レッドジャケットの熊めいた男から、ビシっとスーツで決めた壮年男性、水墨画の世界と間違っていそうな黒ずくめの男、などなど……個性豊か過ぎる連中がCORONAを手に発表の瞬間を待ち望んでいた。逆噴射小説大賞の結果発表を。
「まだか、まだか……!」
「落ち着きな、センセイ方が今夜って宣言した以上は遅かれ早かれ来るぜ」
「あ、来ましたよ!」
「S・Gの反応早いな!」
 ブゥン……とサイネージに火が入り、淡々とした、しかし熱く熱情たぎった選評コメントが表示されていく。そうしてまず最初に表示されたのはあるパルプスリンガーの作品だった。
「B・Tか?」
「スゴイ!大賞取ったのはB・Tだ!」
「ウオオオーッ! スゴイ!」
 最終選考に残った者、惜しくも敗れた者、それぞれの感慨を胸にCORONAを打ち鳴らし、次々にあおり始める。だがしかして。
「……ん?肝心の新チャンプは何処だ?」
「あ、そういや何処にもいねぇ。何やってんだアイツ?」
 パルプスリンガー達がざわつきと共にテーブルの下を覗き込み、あるいは店内のちょっとした影やらあさるも、当然そんなとこに居るはずもなく。
 早々にCORONAのみに立ち戻ったちょうどその時に、彼はやってきた。ウエスタンドアを力なく開けて入ってきたのは、燃え尽きるほど熱いロボット物Tシャツを着こんだちょっと童顔の男子学生。そんな彼に対し振り向いた全員の熱い、複雑な視線が突き刺さる。
「え、なに、なんなの皆そんなコワイ顔して」
『おまえだよ!逆噴射小説大賞受賞者!』
「……えっ?」
 一斉の突っ込みを受けて、新チャンプ、B・Tはガクリとその場に尻餅をつく。横顔には冷や汗だらだら、瞳ぐるぐる、状況を飲み込めないと言わんばかりだ。
「待って、状況が呑み込めない、というか腰が抜けた……」
「皆新チャンプの胴上げだーっ!」
『オーッ!』
「あ、ちょ、まーっ!」
 へたり込んだB・Tをパルプスリンガー達がぐるぐる取り囲んで持ち上げると一斉に胴上げで宙に巻き上げる!
「大賞受賞おめでとうB・T!」
「ありがっとございまーす!嬉しいけど降ろしてーっ!」
 ワッショイワッショイと祭りめいて新チャンピオンを祝福する彼らは気づいていなかった。デジタルサイネージの末尾に以下の文言が確かに存在する事に。
『次回、第三回逆噴射小説大賞は2020年10月開催を予定しております』

逆噴射小説大賞受賞作品は以下の作品だ!おめでとうございます!

そして次回「第3回逆噴射小説大賞」は、2020年10月に開催予定だ!忘れるなかれ!

空想日常は自作品のワンカットを切り出して展示する試みです。
要するに自分が敬意を感じているダイハードテイルズ出版局による『スレイト・オブ・ニンジャ』へのリスペクト&オマージュになります。問題がない範疇だと考えていますが、万が一彼らに迷惑がかかったり、怒られたりしたら止めます。

現在は以下の作品を連載中!

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
主にロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #毎日投稿 #空想日常 #掌小説

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ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL