下請け・フラクタル
「下請けってよぅーアストロ、フラクタルだよなぁ」
「アニキィ、そのフラクタルってのがクライアントバラしたのと、どう関係するんですかい?」
太っちょのアストロは、薄汚いプレハブ小屋で豚を解体する様にちょうどクライアントを一人バラした所だった。
やせぎすのジャンゴは、アストロの手際の良さを大層気に入っていた。
「良いかぁアストロ、お利口な俺が教えてやる」
「あいー」
「俺達が始末したヤツは、べらぼうな依頼料がかけられてた訳よ」
「たった100ドルが?」
「ちがーう違う、良く聞くんだアストロ」
ジャンゴは安煙草の紫煙を吐き出しながら管を巻く。
「ホントは大本のデケェ組織が大枚払って下の組織に押し付けたんだ、わかるか?」
「へぇ、まあ」
「で、押し付けられた方もびびってもっと下の奴らに押し付けた。元の依頼料さっぴぃてなぁ」
アストロの横です巻きにされた冴えない男が、猿ぐつわを飲み込まんばかりに動揺する。
「ズルくないですか、そら」
「おうとも賢いアストロ、だがあのクソを殺ったのは俺達だ。つーまーりー、全てのカネは、俺達が受けとる権利がある」
ジャンゴの言葉にアストロは目を輝かせて頷く。
「わかったよアニキィ!まずは、コイツらって事が!」
「そうだそうだ、良いぞぅアストロ」
ジャンゴの意図を理解した太っちょのアストロは、本職を活かした手際でもう一人を捌いていく。人間は豚よりも遥かに脆い。
くぐもった声はすぐに途絶え、肉を裂く音だけが響いた。
腑分けされた肉に、煙草を押し付けて火を消す。
「これで、俺達の取り分は100ドルから1万になった。だーがぁ足りねぇ。殺しを下請けに回した奴らは、命の価値って物をまっっったくわかってねぇ」
「そうだそうだ!」
「だから、俺達がわからせにいく。奴らに、殺しのお値段ってヤツをなぁ」
これが二人の、長い殺戮の始まりだった。
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