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UE:ハウリング・ロア ep-6
身動ぎする灰色装甲巨人をクナイで制する黒武者。
完全に武装は破壊されており、再形成する余力もない。
「何故そこまでアイツに拘るんだ」
「そんなの!オレがアイツをスキだからに決まってるだろ!」
共通通信帯域を通じてその場に居る全員にこの騒動を主導した黒豹の如き女傑の吼え声が響き渡る。気まずい空気があたりに漂った。
「……それでも力づくってのは良くないだろ、男女問わずな」
呆れて返すハガネの席の後ろでうんうんと頷くカナメ。彼女も実際略奪恋愛の被害者であった。何に釣られてか同様に相槌打つ周囲の群衆巨兵達。
「じゃあどうしろって言うんだ!?」
「俺に言うなよ、こちとら色恋なんぞミゾに蹴っ飛ばして戦いに生きてきたんだぞ?」
暗に、そんな戦闘バカでも突っ込むほどの恋愛ブキッチョぶりをほのめかしてやるも、女豹は察する事はなかった。
そんな奇妙な硬直の最中、ライブを終えた冥王機がモーゼめいて群衆を割って視線をぶつけ合う二機の合間に入った。
「その、よ」
「……どうしてもオレの物にはなってくれないんだろ?そんないけ好かないランカー野郎まで雇って」
「そりゃあ、な。俺は誰か一人のためには歌わねぇ。俺の歌はこの星の皆のもんだからな」
指揮官機と冥王の胸部にくっついてる白狼の視線が交わる。冷厳なる白狼の抗議の視線。
「その代わり、今日はここに居る全員のために歌うぜ。それじゃダメか?」
「そんなんで、埋め合わせになるかよ……でも」
彼女の言葉の続きを謎の緊迫感をもって周囲の者達は見守った。
「今日の所は、それで諦めてやる。覚えてろよ」
「忘れる暇もないくらい絡んできてたろ、クレア」
名を呼ばれればフンと拗ねたように首を背ける指揮官機。
話がついたことを確認し、敵機に突き刺さったままの太刀を鞘に納める黒武者。
つづいて満載した火器を下げる群衆巨兵達。
「……ってことでライブ続行だ!全員聞いてってくれよな!」
リキヤがギターをかき鳴らして狼たちが咆哮するとそれに呼応するかのように群衆巨兵達もまた歓声をあげる。ついでに機体を吹っ飛ばされて安全圏から見守っていた被撃墜者達も両手を挙げて駆け寄ってくるのがフルメタルドーンのカメラに映った。その様子に真顔になるハガネ。
「は?もしかしてこいつらもクラン勧誘してたのは単にファンだったからとかか?」
「どうでしょう、ひとまず丸く収まったならいいんじゃないですか?」
サンプルデータを充分に収集出来て満足げのカナメの言葉に脱力するハガネ。ここまで大立ち回りする必要が果たしてあったのであろうか。その疑問はライブの熱狂とそれを凌駕する冥王のシャウトに吹き飛ばされた。
「お次は『サン・シーカー』だ!最後までぶっ飛ばしていくぜ!」
熱狂渦巻く地獄のライブは陽が落ちきって夜になるまで続いた。
なんだかんだハガネ達も最後まで付き合い、後日リキヤのアルバムデータに手を出したのはまた別の物語である。
【UE:ハウリング・ロア:ep-6 終わり】
マガジンについてはこちらをご参照のほど
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