荒神斬り:残悔編 五話
澄み渡るような青空の下、以蔵とかみきり丸は打ち捨てられた神社の階段に腰かけていた。楓は原体である狐に戻ってかみきり丸の膝にまるくなっている。
「あれで終わったのか?」
「この一帯を襲っていた荒神は昨晩の集団がすべてだそうだ」
「ほうか」
自分から問いかけておきながらどこか上の空の以蔵の横顔を見やるも、自分からは深く聞かないかみきり丸。
自分は自分で次の旅先を考えていたのだ、無論荒神の現れる地を、だが。
「おまんはまた別の荒神を斬りにいくんか」
「そうだ」
「おかしな奴や、なんでそがに荒神にこだわる?」
「なんでだろうな」
柄にもなくすっとぼけて見せるかみきり丸に気を許したのか、破顔して笑う以蔵。
「まあ、ええ。わしには荒神退治はむいちょらんとわかったわ」
「そうか」
相変わらず他者に深入りしないかみきり丸に背を向け立ち上がる以蔵。
そんな以蔵にかみきり丸は包みを投げて渡す。
「む?」
「そっちの取り分だ。受け取ってなかっただろう」
「へっ、ありがとううけとるわ」
受け取った包みを懐に納め、にへらと笑って見せては空を見上げる以蔵。
以蔵につられて空を見渡すかみきり丸。
「ええ空や、今日は気分がええ。こがな日が続くとええな」
「そうだな」
かみきり丸が視線を降ろした頃には以蔵は既に背を向けていた。
「達者でな、以蔵」
「おまんもな、かみきり丸」
蒼天の下、暖かな日の光が以蔵の道行きを照らしていた。
【荒神斬り:残悔編 終わり】
作者注記
岡田以蔵、という人物の史実をたどっていくうちに思いついた話だったのだが、思いのほか仕上げるのに時間がかかってしまった。
お楽しみいただけたならさいわいである。
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