キャンプ・オブ・ザ・デッド
「火野、火出してくれ」
「あいよ」
水木の指示に応じて、毛羽立たせた薪に指先から火を灯してやる。
が、あっさりとは火がつかない。仕方無しに着火材の新聞紙に火をつけてから薪に移す。
「あいっかわらずの低火力だなー、ライターの方がまだ強いぜ」
「そういうお前だって霧吹きがわりがせいぜいじゃん」
「こっちはサボテンに水やれるし、サボテン持ってないけど」
「他に使いどころねーのかよ、おーい雨田ースマホ充電できた?」
暗雲たれ込むキャンプ場、そこに俺達は幼なじみグループでゆるくキャンプに来ていた。
今はテント張り終えて、焚き火に火をつけるとこ。
オレの呼び掛けに離れたとこで丸太に座って、冷めた目でスマホいじってた雨田が返事を返す。
「急かさないでよ、そんな急に電気流し込んだらスマホ壊れるわよ」
「わかってる、わかってる」
「わかってない!」
都会っ子な雨田はここに来るにも気乗りしない感じだったけど、親に送り出されて来た。
見た目は結構可愛い、大人びた感じでオレと同級生とは思えない。
何より雨田のスキルは電気だ、少なくともスマホは充電出来るからバッテリー切れとは無縁でとてもうらやましい。
焚き火を見守ってた所に、平凡なキャンプ場に似つかわしくない悲鳴が響き渡る。
「!風居!?」
「どうした!」
サボって木の枝拾いでもしてたはずの風居が森の中から息を切らして駆け寄ってきた。
しかもその後ろから追ってくるのは、どうみてもゾンビだ。グロくてキモい。
「火野!手ぇ貸して!」
「お、おう!」
雨田へ手を差し出すと、しっかと握り返される。柔らかい。
「風居!伏せて!」
彼女の呼び掛けに、風居が飛び込みスライディング決めると雨田が突き出した指先から、稲光と火炎が撃ち出される。燃え上がり、膝をつくゾンビ。
「これ、キャンプ中止ね」
でも、迎えが来るのは明日のお昼だ。
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