エンド・バイ・デイライト
ベンチが作った影の下に潜む俺の前で、泥酔してた全裸のおっさんが朝日を浴びて溶解していく。
「やらかした……」
場所は公園、あるのはまばらに設置されたベンチ位で後は日差しを阻むような物は何もない。
エンド・バイ・デイライト症候群、通称EBD。
人類が瞬く間に罹患したこの厄介な吸血鬼病は字面の通り、日光にあたると死ぬ、そういう体質になる病気だ。
そしてもちろん、俺も罹患してる。
だってのに夜の間会社の飲み会でしこたま飲まされアルハラ喰らった俺は自宅に帰り着く前にベンチで寝こけちまったらしい。
「最悪だ……」
そもそもここが一体全体どこの公園かもわからない。スマホはバッテリー切れだし、よしんば通話できてもこんなとこには誰も助けには来れない。
この忌々しい日光の下で数分歩き回ればさっきのおっさんと同じ目にあってジ・エンドだ。
そして何より、もっと差し迫った危機が俺の腹部を襲った。
「腹いてぇ……」
間違いなくこの痛みは、下したヤツだ。
つまり、出さなきゃ収まらねえ。だが辺りにはトイレなんかない。
ベンチの下から探れる範囲は閑静な住宅街でしかなく、この公園にも公衆トイレの類いはない。本当にこじんまりとした公園で木陰になる木すらないんだ!
「生きて帰ったらあの時代錯誤のクソ会社に辞表叩きつけてやる……」
間の抜けた政府ですら、朝ふかしせずに夜が明ける前に帰れってアナウンスしてるってのにうちの会社と来たら従業員の生死も省みず飲み会やるんだぜ?もう何人も泥酔からの日光浴死してるってのによ!
今まで試したことがないからわからねぇが、日光の下を歩けるのはせいぜい一分位だ。
場所が悪い事にその一分で行けそうな日陰は見当たらない。
「詰んだ……」
このまま俺は漏らして死ぬしかないのか、そう絶望した俺の目に日の光を浴びて輝く少女が写った。
【続く】