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星の海は力士の土俵 スペースリキシVSシリーズ #1200文字のスペースオペラ
ビロードの黒いカーテンに、ネコが爪で穴をあけたが如き星々が瞬く空間を、力士が征く。巨大なスペース障害物が、あの伝説的リキシレスラーが放つロケット頭突きめいた姿勢で巡行する力士の髷にあたっては、何の障害にもならずに砕けて散っていった。
長距離遠洋漁業船「大漁丸」こそが、この力士に名付けられた四股名である。リキシブレインにあたる操縦席で、出てくる時代を間違えている古典的な海の男が艦長席に身を委ねて鼻歌交じりにホロモニタを眺めていた。独立型漁業支援人工知性、パトリシアがモニタから通知を立体表示。
「魚群、発見しました。それと救助信号もいくつか」
「SAFに流しとけ、密漁者乗せる義理はないからな」
「あい、きゃぷてん」
「それと立会いフォームに移行、主制御系統を俺に回せ」
「あい」
ロケット頭突き巡行形態から、大漁丸が蹲踞を経由して立会いの緊迫感のある構えに移る。標的は手強い。改修を重ねた漁業船力士である大漁丸の力をもってしても、油断をすれば航行不能の憂き目となる。
「魚影、確認。進行ルート上に本船が存在します」
「いつも通りだ、負け筋に入ったら逃げるぞ」
「あい、あい、きゃぷてん」
立会い姿勢のまま、大破したイカめいた密漁船の隣を行き過ぎる。大漁丸のモニタ上に、無数の光体が流星群の如く瞬いた。
「来たぞ!」
青いオーラをまとった、大漁丸の威容に勝る巨体の青銀のロケットめいた存在が雨あられと迫りくる。それは、マグロであった。
銀河マグロ。それは泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロが、その在り様を進化させ、空に、そして宇宙へと適応した生物である。宇宙という無限の海を獲得したマグロは、存分にその速度を増し、巨体を得るようになっていった。過去には星をも砕く銀河マグロが存在したと伝承には残っている。
「ハッケヨイ……ノコッタ!」
先頭より迫りくる一際サイズの大きい銀河マグロの突進を真正面から受け止め、足裏に搭載した反作用推進機構でもって宇宙の土俵に踏みとどまる!操縦席が一気に赤アラートで染まった!
「ヌウゥゥゥゥ……ドスコイ!」
無数の銀河マグロが行き過ぎるマグロ流星群の真っただ中、大漁丸の投げから大物銀河マグロが隕石に叩きつけられ動きが止まった!すかさず手刀でマグロの急所であるエラ近辺を刺し貫き生き締めとする!
「パティ、エーテル凍結保存と牽引措置」
「あい、きゃぷてん」
大漁丸が巡行形態に戻ると、伸びたマワシが銀河マグロを締め付け牽引する。また、今日も生き残る事が出来た。銀河マグロ漁は命がけである。
「寝る、後たのまぁ」
「あい、きゃぷてん」
星の海を、マグロを連れて力士が征く。
こうして各星系のご家庭の食卓へと、銀河マグロが届けられるのであった。
ー次回予告ー
イカレタ美食家が求めるのは、神話級の名状しがたい生物!?
多数の漁船が犠牲になった相手に大漁丸はどう戦うのか!
次回「求めるはクトゥルフ刺し」
どうぞご期待ください!
【終わり:1198文字】
今年の冬コミに参加します!
現在は以下の作品を連載中!
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