隊長、生命体を発見しました!
私の故郷は面積550平方キロメートル、人口4万人ほどの小さな町。これがどのくらいの規模なのかは、東京都23区の面積622平方キロメートル、人口985万人と比べるとイメージがつかめるかもしれない。天気のいい昼下がりに大通りを歩いても、たまに車が通り過ぎるくらいでほとんど人を見かけることがない。まどろんでいるような町だ。
今回、私はあるミッションのためこの町に戻ってきた。まずは町の様子を視察。子供の頃の記憶を頼りに、小学生の頃よく一緒に遊んだ友だちの家に行ってみると、そこにはもう誰も住んでいなかったり、廃屋になっていたり、更地になって雑草が生い茂っていたり、駐車場になっていたりした。数十年前、生命体が生き生きと活動していた場所は色が失せ、朽ち果て荒れ果てて、昼間なのに静まり返っていた。
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翌朝。ホテルのレストランで窓の外を眺めながら朝食をとっていると、思いがけず、通りを挟んだ反対側の歩道を7、8人の子供たちが歩いていくのが見えた。私は思わず双眼鏡を握りしめて、
「隊長、生命体を発見しました!元気な子供たちです」
と叫んだ。
「ランドセルを背負った子供たちが学校に向かっています。小さい子供たちは黄色い帽子をかぶっています」
食事を終えると私は町を歩き回った。
しばらくすると小学校が見えてきた。校庭は東京の小学校ではまず見られないほど広々としていて、運動着を着た数十人の子供たちが体育の授業を受けている。
「隊長、ここでもたくさんの生命体が活動しています!」
でも、昔とはちょっと違った。生命体の数が少ない。私が子供の頃は小学校に近づくと、校庭で体育の授業を受けたり、放課後遊び回る子供たちの元気な声が「ワーワー」聞こえてきたが、今はほとんど聞こえてこない。その声は眠っているようなこの町の夢の中に吸い込まれてしまったかのようだ。
それでも、確かに私の故郷に生命体は存在していた。眠っているようなこの町で元気いっぱい育っていた。
「隊長、大丈夫です。この町は必ず蘇ります!」
らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。
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