見出し画像

『UTANO SUMMIT‼』現地参加レポート

 9月23日、三連休の最終日の夜。
 東京からの帰路の新幹線は、当日最終のこだまを予約していた。
 多少交通費が浮くという吝嗇な考えがなかったと言えば嘘になるが、名古屋止まりというのが実に都合がよかった。
 白玖ウタノ初の単独ファンミーティングイベント『UTANO SUMMIT!!』。今回のイベントは絶対に盛り上がるものになるという確信はあった。終わった後で疲れ果てて睡魔に負けてしまっても、これなら降り損ねてしまうことはないだろう。
 その新幹線の中で、そんな自分の考えの甘さを痛感している。睡魔など歯牙にもかけないほどの興奮が未だ私の中に居座っているのだ。
 既にツイッターのいいねは枯れた。この熱を吐き出さなければ帰っても寝られそうにない。
 火傷しそうに熱いスマホを握り、この文章を書き殴ることに決めた。

イベント前日

 今回の『UTANO SUMMIT!!』が、白玖ウタノのファン、ウタノコたちにとって特別なものであることに疑問の余地はないだろう。4月末のニコニコ超会議以来、しかも単独での現地イベントだ。
 先月8月25日、念願の3Dお披露目を経てさらに加速する彼女の勢いもさることながら、ウタノコの熱量が高まっているのがひしひしと伝わってくる。

 影響されやすい私は、歳柄にもなくウキウキと心踊らせていた。
 不惑と呼ばれる歳も近づいてきて体の衰えを実感しながらも、精神的成長は一向に見られない。  
 勢いで前日の宿と新幹線を予約。プレゼントにポケカとTシャツを購入。チケットをコンビニで発券する際は、まあ後方席でも腕組みすればいいやと独りごちるも、待ちきれずに店内で覗き見た席番号がなかなかの前方列とわかり、小さくガッツポーズした。

 そんな調子で迎えた前日22日、朝早々の新幹線に乗り込んだ。事前にウタノコDMグループで話していたこともあり、数人のウタノコと秋葉原駅で合流した。初対面の方もいたが、ともにホットドッグ爆竹エケチェンを投げている仲間意識からか、不思議と旧友と会うような安心感がある。
 さて、ここからの一連の流れも濃密で順を追って書きたいところだが、本題に入る前に余りに冗長だろう。
 端的に何があったかと話すと、自作のタケノコを託され、アキバを当て所無く歩き、メイドカフェでオムライスを飲み、その1時間後につけ麺をすすり、カラオケボックスに入ってからはガイドボーカル相手に全力でコールして、陽気な観光客の襲撃にあいながらウタノンのメン限を同時視聴した。
 何を言っているかわからないと思うが、だって実際そうだったんだから仕方ないじゃないか。
 詳細に興味がある奇特な方は『#UTANOSUMMIT』でツイッターを見ればどことなくわかるかもしれない。前日から多数のウタノコがこのタグで呟いているので、当日に向けて胸が高鳴る様子を見て取れるだろう。

 夕方にかけて散々遊んでホテルにチェックインしたが、近くで別のウタノコの集まりがあるのを見つけて、挨拶にお邪魔した。
 ここでも初対面の方が多く、少し緊張したものの、温かく迎え入れていただいた。ウタノンやUniVIRTUALを知った経緯、タイムスタンプの裏話、知る人ぞ知るおもしろシーン、他箱の推しに至るまで、前のめりになって話に夢中になっていた。ここでの後悔は海外から参戦されたウタノコと交流できなかったこと。自分の語学力のなさが恨めしい。
 ネットでのみ知る人と会うのはリスクだってあるし、警戒して及び腰になる気持ちは私にもあったが、勢いで飛び込んでいってよかったと思っている。今回は交流する勇気がなかったという方も、ぜひ一歩踏み出してみることをオススメしたい。

 気付けば夜も更け、私は一足先にホテルに戻った。どこか夢見心地のまま、鞄からレターセットを取り出した。今回のイベントではプレゼントボックスで手紙を送ることができると聞いて準備したものの、下書きしていた文章に納得がいかず、白紙のまま持ってきてしまったものだ。
 自然と筆は軽かった。流石に恥ずかしい全文を公開する勇気はないが、この日の出来事を経て、絶対に書きたいと思った一文だけを記しておきたい。

『今回の東京で、たくさんのウタノコさんたちと出逢いました。皆さん温かく迎えてくれました。貴方の歌声が繋いだ絆です。』

イベント当日から開場まで

 迎えた『UTANO SUMMIT!!』当日。
 昨日に引き続きウキウキおのぼりおじさんとなった私は、10年来ほとんど足を踏み入れていなかった秋葉原の街を一人で散策。歩くだけでオタク心が騒ぐのが良い。11時頃になると、ウタノコたちのアキバ到着ツイートが続々と流れてくる。頃合いやよし。目印となるであろうホットドッグ(型のメガネケース)をリュックにぶら下げ、神田明神の鳥居をくぐった。
 ひとまずは参拝の列に並び、二礼二拍手一礼。今回のイベントの成功と、ウタノコたちにとって最高の日になることを祈る。踵を返せば、会場建物のそばにはウタノコが続々と集まり始めていた。
 ここでも初対面の方と挨拶を交わす。名札にはチャット欄でよくお見掛けするあの御方に、ツイッターで絡ませていただいているあの御方のお名前!
 Youtubeの待機所を早めに開いて、積み上げられていくダイヤモンドを見ている感覚に近いかもしれない。ああ、これから『ウタノライブ』が始まるのだ!
 そんなことを感慨深い気持ちで考えていると、私はなぜかシャーディガンを手渡されていた。期待するようなまなざしに、もらい受けたタケノコを頭に装備。手にはホットドッグと爆竹ぬいぐるみ。
 なぜだ。なぜ私は着せ替え人形になっている? アラフォーのおっさんにコスプレさせて何が楽しい?

『いやー、らうーるさんならつけてくれると思って』
『(タケノコを指差して)ウタノンだ! ウタノンがいる!?』
『このままランドマークになってもらいましょ』

 日頃の行いのせいか、好き勝手していい人間だと認識されてしまっているようである。
 こうなりゃヤケだ。うっかり写真を撮られてもいいように100均で買ったサングラスをかける。この不審者、実はノリノリである。

『わー。やべーウタノコがいる』

 残念だったな。その感想はニコ超で聞いた。二度は効かない。

 あ、でも、あのっ…、写真はSNSにあげないでください、ね?
 せめて顔は隠してぇっ!(懇願)

 茶番はさておき、12時になってグッズの事前物販の列整理が始まった。
 運営のゆにちゃんが最強の晴れ男だという噂は本当だったらしい。台風の影響で天気が心配されていたのが嘘のように、神田明神には肌を刺すような日差しが照りつけていた。
 販売開始を心待ちにするウタノコが一列にズラリ。ホール2階外通路の端から端、階段をぐるりと降りて1階正面玄関前まで伸びていった。100人程度は並んでいたのではないだろうか。なかなか壮観だ。会場の真横の通路なので、もしかしてリハの音漏れが聴けるかもなどと期待してしまうのはライブ前のオタクの性。残念ながら音は聞こえなかったが、代わりに思いがけないサプライズがあった。2階の中央まで進むと、ガラス越しに中通路の様子、そして5つのフラワースタンドがはっきり見えるではないか!
 有志ウタノコによるものが3基。うち2基はクラウドファンディングの形で参加者を募っていたものだ。私も僅かなお金で参加させていただいたが、なんと企画参加者は161名に達したとのこと。1基は💎⚡のファンマークを掲げ、もう1基はギターを象っていて、これほどウタノンモチーフのデザインのものが用意されているとは知らず、改めて企画から発注まで全てこなしたウタノコ企画さんに心の底から感謝した。
 反対側にはUniVIRTUALとも交流が深いPalette Projectから1基。数週間ほど前に同会場で行われたパレプロ感謝祭ではUniVIRTUALから1基送っていたことを知るファンには、実に心温まる演出ではないだろうか。
 そしてその間にあるのが、白いドレス――たくさんの白い花々に囲まれて天使のように微笑むウタノンのフラワースタンド! ウタノンが『みんなにプレゼントがある』と言っていたが、さすがは自身もプロオタクであるウタノン。『オタクってこういうのが嬉しいんでしょ?』というのをよく心得ている。嬉しいに決まってるだろ!
 そうしているうちに列は進んで、あっという間に物販に辿り着いた。私はグッズ付きチケット附属の一式の購入のみだったので、チケットを提示して素早く交換完了。邪魔にならないよう外階段を下りたスペースに戻ると、これまで知り合ったウタノコを中心に集まった。

 時刻は午後1時を回った頃。ウタノコ14人!でCOCO'sに入って昼食。ここでもウタノコ同士の会話は尽きず、時間はあっという間に過ぎていった。
 「もうあと2時間後には始まっているのか」と誰かが言った。
 ツイッターを覗いてみれば『#UTANOSUMMIT』のタグツイがどんどん流れている。中にはとんでもない大作イラストをあげている先生や、東京にいないと言っていたはずのメンバーの楽屋裏報告もある。
 期待に胸を膨らませているのは私だけではないらしく、神田明神へと戻る道中、元気があり余った一部のウタノコは神田男坂を駆け上っていく。そんな姿をゆっくり追いかけて登り切ると、会場建物前にはさらに人が集まっているのが見えた。既にグッズのTシャツに着替えている方もいる。私もTシャツ、バングルライトを身に着ける。チケットよし。サイリウムの電池よし。ホットドッグと爆竹よし。ドリンク引き換えの600円もよし!

 時刻は3時。物販のときよりも長い、開場を待ち侘びる待機列が作られていく。頃合いや良し。私がいたグループは少し様子を伺いつつも、最後尾に加わった。

開場、そして開演へ

 ゆっくりと列は進み、会場の入り口に吸い込まれていく。
 チケットの半券がちぎられる。握りしめた600円でドリンクを引き換え、ついに神田明神ホールの中に入った。
 物販の待機列でも見えた中通路のフラワースタンドの前は、写真を撮るウタノコたちで溢れていた。私は一旦ホール内の自分の席を探して大きな荷物を置くと、プレゼントの入った紙袋とスマホを持って通路へと戻る。邪魔にならないよう、すれ違いざまにフラワースタンドをぱしゃり。
 なお、このレポートに写真が少ないのはご容赦いただきたい。筆者は写真を撮る技術とタイミングのセンスが絶望的なのである。

左・中央:ウタノコ企画さんによるウタノコ一同のフラスタ
右:ウタノンによるウタノコへのサプライズフラスタ

 次はプレゼントボックスへ……と思ったが、それらしきものが見つからない。なんと用意していたプレゼントボックスが満杯になってしまったとのこと! そもそも今回のプレゼントボックス、贈ることができるものは手紙・色紙類、ギターの弦、ピック、Tシャツ、ポケモンカードとかなり限られていた。この条件でボックスの大きさを少なめに設定しても無理からぬことだろう。しかし、熱意あるウタノコたちがこの機会を逃すはずがなかったのだ。後のウタノンのツイートによれば、結果としてポケモンカード31箱+100パック、Tシャツ約100枚が贈られていたらしい。
 慌てて追加された大きな箱2つに、手紙・Tシャツ・ポケカを入れる。きっとこの箱もすぐに満杯になるのだろう。やっぱりウタノンはウタノコに愛されてるなぁ。どこか満ち足りた気分でホール内へと戻った。
 さて、会場のステージに目を向けてみよう。まず目に入るのは巨大なスクリーン。今回のキービジュアルが画面いっぱいに映し出されており、座席との距離はかなり近く感じる。視線をステージ上に移せば、中央前方には💎と⚡の組み合わさったロゴマークが描かれたお立ち台。3Dライブで使われたものと完全一致、というわけではないが、あの躍動感あふれるパフォーマンスが思い出される。また、左後方にはエレキギターとアコースティックギターが鎮座しており、ギターを弾きながらステージ上を暴れまわる姿が目に浮かぶようだ。先に書いてしまうと、この2本のギター(お立ち台も)は開演前に裏に引っ込められていった。もしかすると実際に使われるギターだったのかもしれない。実際のところはわからないが、いずれにしても粋な演出だ。また、会場内に響くBGMはいつも配信のOPで用いられているものだ。こんなに期待が高まる音楽だっただろうか。リズムに合わせて手拍子したくなる衝動を抑えつつ、座席についた。

開場前の舞台 ギターとお立ち台は撮り忘れたのだ

「本日は(わっわっわっ…)UTANO SUMMITに(に…に…)ご来場いただき(き…き…)誠にありが――」

 会場まで30分というところ、わざとらしくディレイまで声で再現した会場アナウンスが響く。ゆるち(三日月ちゆる)の声だ。
 「わー!ウタノンのイベントなのぉ!」と、ウタノンの声が割り込み、会場が笑いに包まれる。仲が良さそうで何よりである。ウタノン自身の声で禁止行為などの注意事項が読み上げられる。「わかったかー?」の声に、「はーい!」とどこか間の抜けた声で返事するウタノコたち。
 空席がチラホラと見られた座席も、10分ほど前になるとほぼ完全に埋まった。もう一度注意事項のアナウンスが流れる。今度の「わかったかー?」には、観客席も「いえーい!」と大きな歓声で応えた。
 まだかまだか。時計の針は4時を指す。スクリーンがすぅっと暗転し、「おぉっ」と幾人かの声が漏れた。

 さあ、開演だ。

補注

※1 次からイベントの具体的な内容の感想に移ります。余り詳細に書きすぎないよう心掛けていますが、ライブパートのセットリストにも振れているのでネタバレを食らいたくない方は、先にツイキャスのアーカイブを視聴することを強くお勧めします。5000円は少し高く感じるかもしれないですが、それだけの価値があると思います。
※2 以下で記事内の写真は、配信アーカイブのスクショOK区間(ライブパートのみ)を使用しています。

ライブパート前半

 スクリーンが再び切り替わり、スタイリッシュな音楽に合わせて画面も踊りだす。SD巫女ウタノンが可愛らしく愛嬌を振り撒く。これまでの歌ってみた動画のサムネが彼女の軌跡を辿るように流れていく。会場からは手拍子。始まるカウントダウン。5、4、3、2、1……!

 「みんなー! UTANO SUMMIT!! 行けんのかー!」

 気合いの乗ったウタノンの声。何度も聞いたイントロが流れ出す。
 まさか最初に…!? 私を含め、戸惑うウタノコもいただろう。だが、当たり前のように声は揃った。

 「もう一度ーーー!」

 予想外のトップバッターは、オリジナル曲『未来証明』。一気に会場のボルテージは最高潮に達した。
 クラップの音が鳴り響く。それでも彼女の歌声は決して埋もれることはない。その圧倒的な存在感をもって、「もっと大きい声出せるよなぁ!超えれるもんなら超えてみろ!」と訴えかけているかのようにも聞こえる。
 勢い余ったか、「追いついて追い越して!」の声も観客席からわずかに聞こえたが、思わず言ってしまう気持ちもちょっとわかってしまう。
 野太い「あい!あい!あい!あい!」の声が空気を震わせる。
 ラスサビで全力の「もう一度ーーー!」の大合唱、続けて大きな拍手と歓声が止む暇すら与えず、彼女は歌い始める。

 イントロなしで 「いっせーの!」  白玖ウタノチャンネルの歌ってみたの代表作ともいえる曲、AliAの『かくれんぼ』だ。
 コール練習配信には入っていない曲だったが、「いっせーの!」や「もういいかい?まーだだよ」の声も次第に大きくなっていく。
 合唱コーラスパートは、会場のウタノコたちの声でより厚みを増し、溜めたものを吐き出すように彼女は歌う。その声が少し震えているようにも聞こえて、序盤も序盤だというのに少し泣きそうになる。
 「もういいかい?もういいよ!」 白玖ウタノを象徴する2曲で、UTANO SUMMIT!!は鮮烈なスタートを切った。

ライブ序盤の様子。わずかだが右側のペンライトの位置が…?

 少し余談になるが、このスタートでちょっとした珍事が発生している。冒頭の注意喚起で「過度なジャンプや椅子の上に立つような行為は禁止」とアナウンスされたものの、座席の前に立つ通常のスタンディングはOKなのか、多くのウタノコが躊躇ってしまったようだ。
 結果として、会場右側だけが立ち上がり、他はそのタイミングを見失って着座のままという光景が生まれたのだ。上の写真は配信アーカイブのスクショだが、若干だが右側のペンライトの位置が高いのがわかるだろう。

 さて、ここで一旦MCパート。一言一句をここでは記さないが、ライブを経験してきたウタノンらしい軽快なトークだ。自然な流れでスタンディング許可を明言するのも忘れない。椅子の呪縛から解き放たれた左・中央列のウタノコたちも、鬱憤を晴らすかのように声を上げる。ライブパートは始まったばかりだ。

 ウタノコ待望の「ジーク・ウタノン!」のコール&レスポンスが会場を揺らす『シドニア』
 白玖ウタノを語る上で外せないガンダムからは『Believe』。白のペンライトは後ろの視界の邪魔にならないように控えめの高さで、されど皆振る手には力がこもっていく。
 止まることなく容赦なく歌い続ける。今度はエレキギターを携えて、ペンライトを捨てるように観客席に呼びかけてきた。暗闇に染まる会場の中、バングルライトのどこか怪しげな赤の光が幻想的に揺らめく。

バングルライトの光のみが揺らめく『逆光』 握る拳にも力が入る

 セトリ予告曲『逆光』。厚みのあるギターの音に、数百人によるクラップが負けじと鳴り響く。固く握った拳を宙に突きあげる。この一体感がライブ、白玖ウタノの歌声のもとで生まれた結束だ。
 そして、そのままペンライトを持ち替えることなく、前半ラストの曲『God knows…』に続く。ギターボーカルでも衰えることとない大迫力の歌声。間奏ではがっつりとかき鳴らされるギターが空気を揺らす。そこにウタノコたちのクラップや合いの手が加わって、音の洪水が脳を揺らすかのようだ。
 一際大きな歓声があがる。およそ30分とは思えない濃密なライブ。
 果たして後半ではどんなことをしでかしてくれるのか。期待が尽きない。

バラエティパート

 だが、今回の『UTANO SUMMIT!!』はファンミーティング。ライブだけでは終われない。ここからお楽しみのバラエティパートだ。

 最初は、イベント後のゆにちゃ界隈でも話題の『ウタノンのオタ芸講座』。課題曲は『ロマンティック 浮かれモード』。曰く、本来は初手から土下座らしいが、隣との間隔が狭いのでその場の手振りにアレンジするとのこと。しかし、2Dメインのイベントでどうやってオタ芸をするのか……そう思っているとスクリーンに映し出されたのは、まさかの3Dウタノンである。
 確かに3Dを使わないとは言っていないが、よりによってここで使うのがウタノンらしい。回りに迷惑をかけないアレンジオタ芸で可愛らしく動くウタノン……スクリーン端でキレッキレの全力で動くもう一人のウタノンにどうしても目が行くが、きっと気にしてはいけないのだ。
 後でアーカイブで見返してやると決意しつつ、必死でウタノン(全力じゃない方)の真似をする。リズムに乗り切れず、途中で左右が逆になってしまったりするが、これが意外なほどに楽しい。正直に言うと、私は『オタ芸=厄介』という偏見を持って触れてこなかったわけだが、本人許可のもとなので気にせず楽しめる。
 さて、二回の通し練習を経て、ようやく本番といった段階でいきなりゲストの登場が告げられる。「あ、これ、今回来てるゆにちゃメンバーの誰かに歌わせるつもりか?」と私は思った。歌いそうなのはみくりん(星衣未空莉)かぬいちゃん(心羽白ぬいの)か?
「『海月』って言ったら『シェルちゃーん!』って言ってくださーい!」
 まさかのウタノンのハニー、海月シェルの登場である。唖然とするウタノコそっちのけで、観客席に背を向けて最愛のシェルちゃんに全力コール&オタ芸の3Dウタノン。つつましくミニオタ芸をするウタノンはスクリーン端に追いやられてしまっているのが実にシュールでもある。
 後に、海月シェルのツイッターと配信(2024/9/24)にて『ウタノンを観に来たのに、なぜ俺たちはシェルちゃーん!と叫んでいるのか…?』と表現されていたが、まさにその通りである。ちなみに、海月シェルサイドからの裏話も同配信で語られているので、興味のある方はご覧いただきたい。頼まれた側が困惑するのは当然だと思うが、広い心で了承するのは愛のなせる業(?)かもしれない。
 だが、ウタノコの適応力も流石のもの。エケチェンの無茶振りには慣れている。最初は戸惑って笑うばかりだったが、いつしか『シェルたまシェルたまお仕置きキボンヌ!』の野太い声。最後は『大の大人が~』大合唱。終わってみれば、心の底から笑える楽しい企画だった。
 シェルちゃん、本当にありがとう…!

 オタ芸パートの次は観客ウタノコとのトークパート。遠く海外からいらっしゃった方、国内再遠方を名乗り出た方、ウタノンやゆにちゃメンバーが気になる女性ウタノコ。休憩的な位置づけのパートのはずだが、前のめりで話を聞くウタノンが印象的だった。

 バラエティパートのラストを飾るのは、告知段階でも謎に包まれた『???公開収録』のコーナー。なんとその内容は新オリジナル曲のコーラス。それを現地ウタノコたちの歌声で収録するという。
 まあ、でも素人に歌わせるわけだから短くて簡単なはず――内心で高をくくっていると、バンドサウンドなオケが流れ、ウタノンの綺麗な声でお手本が歌われる。
 ……いや、音程難しいな!?しかも長いな!?
 最近歌に対する自信がめっきりなくなった私には非常に荷が重い。同じように思ったウタノコも他にいたかもしれない。だが、Vsinger白玖ウタノは歌が上手いだけではない。教え方もとても上手いのだ。
 一つ一つ短くに切り分け、ポイントの解説もしてくれる。1パート上手く行くと過剰なぐらいに褒めてくれる。音を外していないか不安だった筆者も、ちょっと自信を持ってもいいかもと思えてくる。実に単純な性格のおじさんである。
 次第に会場内の歌声も自信を帯びてくる。最初はあれほど難しく思えたのに、近い将来に発表されるであろうオリジナル曲にウタノコたちの熱をこめようとしている。それぞれの声色は違えど、最後には綺麗にまとまるのだから不思議だ。
 そうして無事に収録は終了。このコーラスがどのように組み込まれるのか。完成形を楽しみに待ちたい。

 バラエティパートは終わったが、まだまだ終わらないUTANO SUMMIT!!。『まだまだ行けますかー!?』の声に、歓声で返す観客席。
 ライブパート後半戦に突入だ。

ライブパート後半

 さて、ここからはあえて曲名は書かないこととしたい。ここまで書いてきて今更ではあるが、まだ見ていない方には『この曲を持ってきたか!?』という新鮮な驚きをぜひアーカイブで味わっていただきたい。
 繰り返し書くが、5000円払ってでも見る価値があるはずだ。

 後半にもなると、最初は様子見だったウタノコも慣れたからだろうか、サイリウムの光の波は一層高く、強くなったように感じられる。自然と腹の底から声が出るような感覚がした。配信でも身に沁みるほどわかっているはずだが、白玖ウタノは観客を煽るのが上手いのだ。

 爽やかでアップテンポの曲が続くと思いきや、一転しっとりとした弾き語りも披露してくれる。デビューからの1年半余りだけではない、白玖ウタノを形作ってきた日々に想いを馳せるような、それでいてさらに上を目指そうとする決意が歌声から滲み出ているように感じた。

 楽しい時間はあっという間に過ぎ去るものだ。次でラストのブロックとなることが告げられると、「エーイマキタバッカリー!」の声が観客席から発せられる。いつもは多少わざとらしくコメントしているが、今回ばかりは本気だ。
 『ラストスパート声出していけるのかー!』
 これでもかと大きな声をあげる。だが、まだまだ足りないと貪欲にさらに大きな声を求めてくるウタノン。気付けば、こんなに腹の底から出せるのかと自分でも驚くぐらいの歓声をあげていた。

 乃衣ママお手製の手持ちマイク(前半でも使われていたがこの頃になってようやく気付いた)に切り替えて、怒涛のようなクライマックス。ウタノンの十八番と呼べる曲たちは何度も聴いたはずだが、聴くたびに新鮮な驚きをくれる。
 圧倒的、衝撃的。『白玖ウタノはすげぇぞ!』と語ろうとするときについ使ってしまう言葉だが、今回のライブも例外であるはずがなかった。
 魂を鷲掴みにしてくるような低音、雲を晴らし澄み渡るような高音。私には技巧的なことはわからず、的確に表せる語彙力もないが、このときばかりはただただ夢中になってペンライトを振り上げた。

 『これで本当に最後の曲です!』
 最後だけは曲名を出さずには語れない。
 トリはいつ来るかと待ち侘びた予告曲『best day,best way』だ。
 覚悟していたであろうウタノコたちは流石、最初から「ふっふー!」の声綺麗にが揃う。
 「はい!」のタイミングも完璧。キャユオウミャ……レッツゴー!(※やけくそ)
 きっと練習配信の賜物だろう。観客席と一緒に作り上げるこの曲をラストに持ってくるとは、なんとも憎い演出ではないか。
 らーらーらーらーの声に合わせて、白い光が揺れる。終わりを惜しむようでいて、送り出すような優しい光だ。

ラストの「ふっふー!」。この日一番高くペンライトが舞った瞬間かもしれない。

 走り出した心 もう止まれないんだよ
 今日という日を新たなスタートに、さらに高く翔けていく。そんな情景が目に映るようだった。

閉演…?

 万雷の拍手の中、会場の灯りが戻る。
 この曲で締めるのは予想外だったけど、いいセトリだった。椅子に腰を下ろそうと思ったとき、誰かが叫んだ。
 『アンコール!』
 会場の撤収時間に余裕がないと言っていたような記憶がある。私は少しためらった。本当にいいのだろうか?
 『アンコール!』つられるように私も叫んでいた。「今回はアンコールなしです!」とアナウンスされても文句は言うまい。だけど、チャンスがあるならば、まだ終わってほしくない!駄々をこねる子供のような気持ちで、ひたすらに繰り返した。
 2、3分は声を上げ続けていたかもしれない。やっぱりないのかなぁ。諦観も脳裏をよぎったそんなとき、スクリーンの色が変わった。

 とんでもないサプライズだった。これが見られるとは…!
 アーカイブでは配信されていない現地のみでのコンテンツのため、どこまで書いていいのかわからないので明言するのはやめておく。

 今回は『2D中心』のイベントである。
 あと、ライブパートのセトリちょっと意外だったよね。

 つまりそういうことである。
 どうだ配信勢、アーカイブ勢、羨ましいだろう。
 だけど、私だってもう一度見たいんだよぉ!

 残った体力を振り絞るように声をあげ、腕を振る。されど一挙手一投足を見逃すまいとスクリーンを見つめ続けた。
 夢のようなひととき。そうとしか今は形容できない。だが、これをもっと大きな舞台で、たくさんの人が目にできる日は近い。そう確信した。

あとがき

終演後の神田明神正門 なんかエモい

 私は今、あの興奮・衝撃・歓声を思い出しながら、東京から帰る新幹線に乗ってこの文章を書いている。
 9月29日。別件で東京に行ってきた帰途である。恥ずかしいことに、ここまで書くのに1週間を要してしまった。
 前日を含めれば約2日間、あまりに濃密な時間だった。子細を書こうと思えばどこまででも書けてしまい、本筋に関係ないことを書いては削りを繰り返していたのも遅筆の原因だろう。

 イベント後についてもいろいろと語りたい話はたくさんある。書き出すと蛇足となってしまうので、ウタノコたちの絆を確認したひとときがあったとだけ書いておこう。

 ここで謝辞を。 
 まず、今回のイベントを通じて交流していただいたウタノコの皆様に感謝を申し上げます。1年前、白玖ウタノを、UniVIRTUALを知る前の私からしたら、このようにたくさんの人と交流できるとは想像もできませんでした。
 また、今回挨拶できなかった皆様にも感謝を。次回イベントでお会いできたら是非お話できたらと思います。わたし、やべーウタノコじゃないよ?

 そして、非常に読みづらい文章にもかかわらず、ここまで目を通していただいた皆様に心より感謝を申し上げます。

 最後に…
 待望の現地イベントを企画し、多大な尽力をされたUniVIRTUAL運営様 
 忙しい中でも手伝いにかけつけて驚かせてくれたUniVIRTUALメンバー

 そして、たくさんの素敵な企画と全力の歌でウタノコを楽しませてくれたウタノン! 

 本当に素晴らしいイベントをありがとうございました!

 蛇足だが、この締めの文章を書く直前、新幹線に乗る前に少し時間ができたので、改めて神田明神に立ち寄った。
 イベントが盛況のうちに無事終わったことを、一人のウタノコとして感謝したいと考えての参拝だ。賽銭は少ないにもかかわらず、感謝したついでに貪欲に願った。
 白玖ウタノ、UniVIRTUALの今後が明るいものでありますように。
 ついでに、今日のポケカ開封配信で良いものが引けますように。

 さて、ポケカ開封配信の進捗はどうなっただろうか。
 イヤホンをはめて、配信を開く。

 神引きに困惑するウタノンの悲鳴が耳を劈いた。