久賀ラトルのシナリオ入門講座Vol.1


この記事は、ゲームシナリオを一度も書いたことがない人に向けた内容になります。すでにプロとして活躍されている方にとっては時間の無駄になる可能性があるので、その点をご了承ください。

今回はVol.1ということで、ゲームシナリオとは何かについてお話しします。この記事は10分以内に読み終わる想定です。

♢この記事のライター:久賀ラトル
成人向けPCゲームに20作品以上携わったシナリオライター。エロスを題材にしたものが多い。成人向けソシャゲのシナリオライティング経験あり。

〇ゲームシナリオとは何か

ゲームシナリオ(以下、シナリオ)を語る前に、まず、ゲームについて理解しなければなりません。ゲームとは、シナリオ、イラスト、ボイス、システムといった複数の要素を組み合わせて構成されたものです。つまり、シナリオは1つの表現方法に過ぎないということです。小説と比較すると、その本質がよく見えてきます、

【小説】
・文章が主体であり、基本的に言葉ですべてを表現する必要がある。

【シナリオ】
・文章が主体ではない。イラスト、映像、音声、システムといった様々な要素とシナリオを組み合わせることで、内容をユーザーに伝える。

相違点は他にもたくさんありますが、ひとまずこれだけ分かれば充分です。このように、シナリオは、小説における文章ほど大きな役割を担っているわけではありません。ゲームを進行させるための表現の1つと思ってください。

〇シナリオの役割

シナリオは「ゲームを進行させるための表現の1つ」と先述しましたが、もう少し具体的な話をしましょう。たとえば、上品に笑う女性を表現するシーンを思い浮かべてください。小説的表現だと、次のようになります。

「ふふっ」
 彼女は口元をおさえながら、静かに笑った。

これを、シナリオ的表現に変換します。

「ふふっ」

シナリオならこれだけで充分です。では、詳しく説明していきます。小説は文章主体のため、女性がただ笑っているだけのシーンでも地の文で補足する必要があります。

一方、シナリオは、「ふふっ」という台詞だけで事足ります。イラスト、ボイス等、文章を補助してくれるものがたくさんありますので、わざわざ地の文を入れる必要がありません。

では、シナリオが絶対的に必要になるのはどのような場面でしょうか。それはずばり、心理描写です。主人公がなにを思っているのかは、やはり文章化してあげないとユーザーには正確に伝わりません。ボイスを用いて、声優さんの演技力に任せるのもダメではないですが、誤解を招く可能性があります。イラストも同様で、絵だけでは心理を充分に伝えられません。

また、ユーザーに印象付けたいシーンがあるのであれば、イラスト、ボイス、効果音にあわせてシナリオ(文章)でダメ押しするのも効果的です。今度は小雨のシーンを使い、具体例を示しましょう。

効果音:「ぽつり、ぽつり」という小雨の音

【主人公】
「雨、か……」

イラスト:空を見上げる主人公

とつぜん降り出した雨に、俺は思わず目を細める。

妻の最期を見届けたあの日も、こんな天気だった。

妻に先立たれ、悲しみを背負って生きている主人公の姿を、ユーザーに強く印象付けるために様々な手段を用いてワンシーンを描いています。シナリオ(文章)がなくても通じるとは思いますが、イラスト、ボイスだけではすぐに次のシーンへと切り替わってしまうため、ユーザーへの印象付けが弱くなります。つまり、シナリオには、良い意味での間延びをさせる効果もあります。

〇まとめ

・小説と異なり、シナリオですべてを表現する必要はない

・シナリオは、ゲームを進行させるための表現方法の1つ

・イラスト、ボイス、効果音、システム等では表現できるものはシナリオでわざわざ表現しなくても良い

・心理描写では特にシナリオ(文章)を必要とする

・シナリオには印象付けたいシーンでの間延び的役割もある

以上で、Vol.1を終えたいと思います。

ご質問等ございましたら、お気軽にどうぞ!

では、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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