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「僕は今日も違うカメラマンの男とデートをする⑩」 special by umade

ちょうど夜のTwitter徘徊をしていたとき、とある募集文を見かけた。

「ゴミポートレートの被写体を募集してます、ゴミは生きていく中で必ず排出されるものです。それは生き方によって多くの種類を伴っていくもので、自分の周りのゴミというのはその個人の生き方を表すものだと思います。
皆さんの生きてきた証と皆さん自身を僕に撮らせてください」

ゴミ、僕がいつも毎朝にだす大きなビニールに入った生モノや使ったマスク、お菓子のクズが一括して入っている大きな袋。指定の曜日にはそれぞれのカテゴリー事に捨て、また次の週で同じことを繰り返す。ゴミの行き着く先は夢の島と呼ばれる孤島に捨てられるか、再利用されるらしい。それらを背景に人の写真を撮る、それがゴミポートレートだと彼は言う。

僕はすぐ様、彼に連絡した。彼はもちろん歓迎してくれた。もともと僕の写真をみて、フォローしてくださったのがきっかけだったからかもしれない。彼は事前にどんなゴミをテーマにするか聞いてきた。僕は色々考えて『写真』を捨てることにした。

一年前、僕は写真を捨てた事がある。
どうでもいいネットのやらかしで、クズと言われた。『クズの写真』と、周りにひそひそと言われた。被害者ではなく仕方ない近い感情だった、自分のまいた種だもの。僕は自分の作った写真とブックを捨ててもらった。その記憶を僕はゴミポートレートの中に入れたかったのだ。部屋は自宅にした。ゴミは家で出したくて。

当日。

最寄り駅まで迎えに行くと、彼はいた。今日のお相手、馬出くん。僕はノスタルジックな感覚に陥いる。いやぁ、いたな。大学の生協学生委員でいたな。大学生らしい丸い髪型に、肩掛けバック。ヲタサーの姫状態に扱われた人生がまた懐かし無。僕は、バイクを突いて話をした。彼はどうやら写学生であり、卒業のためやいろんな事があって撮っているのだと聞いた。あと先生に『物足らないんだよ。いっそういう被写体の家に行けば?』と言われた話も聞いた。
いいな、青春したいな…ハメ撮り時代と僕は彼の目をずっとみていた。彼もまた僕をチラッと見ながら、目線を外す。なんも変哲のない会話に僕は興奮した。彼はなんとも思っていなさそうだが、僕はど興奮していた。おいおいパンツが濡れちゃ…いかんいかん、今回は真面目なんだから。

そんなこんなで撮影が始まった。僕は、処女展に飾った女性の写真を破った。ビリビリと裂かれてく彼女の半顔が何かを訴えたいかのように僕を見るような気がした。『だめだ、これ以上は…。』と言ったら、彼は『大丈夫です。自分のペースでええですよ。』と言ってくれた。窓から出る日差しがビリビリに引き裂けれた彼女達を照らした。

『ねぇ、彼女いるの?』と聞いたら、『いや、今はいないっすね、それより就職っすね。』とファインダーを覗いて僕を写した。引きで撮る彼の立ち姿はまさにあの頃の同期に似ていた。いいなぁ、弟みたい。なんとも愛らしかった。

帰り道、彼と帰るその距離を僕は家族のように送り出した。「またデートしてくださいね。あと就職がんばれ」そういうと、彼は笑顔でふりかえって、手を仰いだ。

帰った後、彼の座った椅子で転寝をした。夢はみなかった。

special thanks by umade

twitter: https://twitter.com/umade_sei_photo


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遠隔vibration
写真を撮るOLです。