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「僕は今日も違うカメラマンの男とデートをする③」special by しろの

2/12 19:10

梅田ヨドバシカメラ梅田、2階で待ち合わせ。僕は早めに終わったから、19時前にはついてたのだけど、今日の男はちょい遅刻らしい。

なぜ大阪の撮り手界隈は梅田のヨドバシカメラの2階へ集いたがるんだろうかって他府県の人たちは思っているだろうけど、ここで撮り手代表として言っておく。それはカメラコーナーがあるからなのだ。多分大阪府民の撮り手の人だったら、一度はヨドバシカメラの2階を屯うであろう。

並ぶ最新機器をちょっとだけ触る。やっぱり、最新機器のカメラはいい。きれいに映るし、多機能だ。首にぶら下げているいつもの相棒のG12がちょっと嫉妬したような重さで首に負荷をかけてくるように思えた。

「いやぁ、ごめんごめん!ちょい遅れた!」

事前のメッセージでは「身軽で来ますねー」と言っていたのに、大きなリュックを背負ったのが今日のデートのお相手、しろのさん。冬のフェス帰りなのかわからんような、身軽な恰好であるけれど、身軽で来ますねって言えるほどの荷物ではない。「重たくないの?」と聞いたら、彼はカバンの中身を見せてくれた。中身もゴリゴリにごついNikonの一眼レフとストロボ、「オスモポケット」と呼ばれるちいちゃな機械だけが、小さく見えた気がした。

店を出て、阪急の通路を通り、阪神側へ移動する。今週末はずっと雨らしく、すごく冷える折り返し地点。吐く息は白く、市内の住民のほとんどはマスクの着用を忘れない。

彼は、終始しゃべってばっかりだった。例えるなら、NHKのラジオニュースに近い。Nikonの性能の事、最近炎上したフジフィルムのやり方について、写真のことについて。詳しくここへ書こうと思ったが、カタカナと英語が並ぶような説明だったので、多分話は3割ぐらいしか聞いていないからまとめられない、すまぬ。ただ、私から話そうとすると「あ、そうですか」と割とあっさりだったのがすごく悲しい。まぁきっと興味ないんだろうなとメンタルの低い自分をよいしょさせておく。今日の男は、よくしゃべる人だ。

開始から1時間後、時刻は8時を回る。小雨を気にせずに、酸性雨に打たれるスナップはなにわのソールライターな気分。帰り道の狭い路地でキスをしているカップルたちを撮り切る。ソールライターさんはきっと、カメラを何台もダメにしてきているだろうと思いながら、彼のお経のような話を頷きながら、撮りつづける。阪神沿いを一回りして帰っていた頃には彼も、しゃべってばっかりだった自分が気にしたのかこっちに僅かながらに質問を投げてくるようになった。

スナップを1時間半した後に僕がよく行くラーメン屋さんに立ち寄る。寒い日の夜のラーメンは格別においしい。名物のとろ肉ラーメンをほおばると、口の中がホロホロするような気分。「ねぇ、すきなタイプの女の子っているの?」と聞いたら彼は、首を横に振った。「俺、好きなタイプの女ってあんまりいないんすよ。っていうか、最近はカメラが彼女っていうか。強いて言うなら元KARAのニコルかな?」ジェンダーレスなのかと一瞬考えたが、そうでもないらしい。元KARAに関してはKARAのKの字も知らないから伏せておく。

帰り道、すぐに帰ろうとしたら「よかったら、遠回りしてかえりませんか?」と笑顔でせがまれた。その笑顔は女の子みたいににっこり笑った表情で、初デートの女の子のようだった。夜の道をすこしだけ歩く。「最後に、聞きたいんですけど、いい写真ってなんやと思いますか?」と聞くと彼は自前のカメラをぎゅっと握り「僕ね、モデルさんを撮った時にモデルさんが喜んでくれるような写真を撮りたいんですよ。その後に10年・20年後見たときに、その感動がその倍になれるような写真がいい写真やと思います。自分自身、カメラがなくなったら、何も残らないですからね。僕、商業カメラマンなんで笑」

彼の眼差しは初々しく、その姿はプロフェッショナルの卵だった。

Special Thanks..
しろの

Twitter:

https://twitter.com/sirono_official?s=20


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遠隔vibration
写真を撮るOLです。