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マッチングアプリで彼氏募集したら、とんでもないゲーマーが釣れた件について②~告白編~

前回のあらすじ
会社の後輩くんから勧められたマッチングアプリをインストールした閃きちゃん。
一本のメッセージを送ってきた彼を標的に狙うが、どっこい!顔も名前も雰囲気も知らないという。さて、閃きちゃんの運命はいかに!?

僕は硬直した。
顔バレはマズイから、マスクと伊達眼鏡をつけていたが、あまりにも普通なので、かけた眼鏡はすぐ外した。
『あ、えと、すみません。お名前は…』
『しーさんです。しーさんって呼んで(✿´ ꒳ ` )』
『しー…さん』
『はーい(*`ω´*)』

なんとも朗らかな光景ではあるが、僕はドチャクソ緊張した。新品の下着はグッチョリで汗と愛汁で溢れている。
今までの初デートは僕がいつも振り回してたので、敬称なんて付けずだった。しーさんだなんて、言えるはずもない。

『しーさん、あのえと、輝です。本日はよろしくお願いいたします。』
自分なりの丁寧な挨拶で第一声。いや、これは本当に日本国の敬語なのかと疑問ながらに発した。しーさんは、まるで春の日差しのような眼差しで僕の前でニッコリする。笑顔が眩しいすぎるせいか、その頃の僕は表現するなら干されイカのようだった。

とりあえずなんやかんやの自己紹介は済ませ、京都駅の新快速に乗り換え。40分くらいしばらく駅には着かない。駅の2人がけに座った僕たちはしばらく黙っていたが、僕の痺れが切れたので、僕から質問してみた。
『しーさん、あの、ご趣味は?』
『趣味ですか?僕、ゲームが好きなんですよ。彼此、20年くらいかなぁ。なにかしらのゲームしてるんですよね。輝さんは?』
『私は、写真とあと、映画鑑賞ですかね・・』

ここで初めて、写真以外の趣味がわかった。ゲームかぁ、僕もある意味では小さい頃からゲーム機があったし、離婚した父が残したよくわからないホラゲーばっかりやってたので、話はなんとなく通じた。趣味は写真を撮ることと、会社の終りに、エロ動画みるくらいしかなかったが、エロ動画見る女は地雷すぎるので映画鑑賞と言っておいた。それくらいは女子女子してもいいだろう。彼は20年くらいのゲーマーで、ゲームも作るぐらいの腕前。写真はただ見るのは好きだが、撮りに行くのは面倒くさいのでやらないらしい。システム系のエンジニアとして勤務していて、ゲームのオフ会に行くが合う友人がいなかったらしい。合う友人は絶対できる、あわよくば、彼女もできたらなぁくらいの願望でとりあえず、片っ端からメッセージを送ったら僕がヒットしたらしい。

こいつ、まさかゲーヲタ※なのか?と思い、率直に質問した

※ゲーヲタ:ゲームヲタク、童貞くんという別の意味があり差別用語とされる。

『しーさん、あの、もしかして彼女って…いたことは…』
彼はちょっと困惑した表情であったが、すぐに眩い笑顔に戻した。
『経験はあまりないけど、付き合ったことはあるよ。ちょっと色々あってあんまり話したくないんだよね。ごめんね、こんなで笑。経験ない人はダメかな(´・ω・`)?』
失言したァアァア。やってしまった、もうダメだ。半泣きな僕は自暴自棄に浸る。

そこからは基本無言かゲームの話しかしなかった。お昼ご飯を食べるまで、しょんぼりしていた。いやいや、それくらいで立ち直れよって思うんだけど、折角狙った獲物を一言で失うのは悲しい。するとご飯を食べずにいる僕を心配したのか、彼はキョロキョロしている。『輝さん?大丈夫?よかったら僕の頼んだパスタ食べる?』
そういってフォークで巻き巻きしたミニパスタを僕の口へ差し出した。え、これは、アーンすか、アーン。口に運んでくれたパスタはすんごく美味しかった。『美味しいですよね!僕、パスタが好きなんですよねぇ。』と照れて笑った。くそ、可愛いなオイ。

それからは河原町へ散策。ギャラリーを巡る約束をしたが、出店のガチャガチャ、雑貨屋さん、スイーツがよほど楽しかった。楽しい時間は早いもので、18時を回っていた。

『私、帰らなきゃ。今日用事あるんです。』
僕はギャラリーのパーティに出席す予定だったので、早く切り上げるつもりだったが、彼は少し寂しい顔をする。帰れない。すると彼は手を差し出す。『手を、その、繋ぎましょ。まだ一緒にいたいから…』というのだ。可愛すぎるが僕には勿体なさすぎる可愛さだった。
『あの、わたし、その、汚いから…』僕は手が出せなかった。勇気がない。いや、本当は自分は汚くないことは知っている、ただ下ネタばっかりいう地雷女にこんなほんわかした優しさがあっていいのかという不安だった。自己嫌悪に走ってしまった僕の目には大粒の涙が溢れていた。
彼はびっくりして、頭を撫でてくれる。『輝さん!?大丈夫!?えと、僕なんかした?ごめんね…』いや、君は悪くない。ちっとも悪くねぇんだよ。めんどくさいメンヘラ女かて。でも涙は止まらなかった。その時だった。

彼は、僕の頬に手を差し伸べ、涙を両方の親指でぬぐい始めたのだ。彼の顔は母犬を心配している子犬のようだった。彼はこう言った。

『輝さんに、なにがあったか分かりませんが、俺は輝さんの笑顔好きです!だから笑って?』

はじめてだ。好き以外にこんなプロポーズ(勝手に思っている)があるなんて。僕は幸せかよ。
僕はいきなりの告白に、戸惑いもなく、『付き合ってください!』と言った。無意識な回答だった。すまねぇ、ほんとバカな僕だよ。

だが、彼は目を丸くして、恥ずかしそうな顔でコクリと頷く。僕がびっくりだよ。おい待て待て待てェイと。まだ一日もあってないのに?いや告白したん自分やけどもさ…うーん…すき。

そんなこんなで僕達は初対面からカップルになったのだ。世間ではpairsカップルというらしい。電車の広告に書いていたので、pairsは人気らしい。

あれから、1ヶ月。彼に何故、あの時の告白をOKしたのか聞いてみた。彼は、にっこりして『フィーリングだよ、フィーリング。ひかりちゃんとまた明日も明後日も会いたいからOKしたんだよー。』と言う。彼の能天気さが僕の至らなさを救わせたのだと思う。

あとがき
この記事を読んでくださり、ありがとうございます。カップルの惚気話?はーん、無理と多半数の方は思っていらっしゃるでしょう。僕も無理です、爆ぜてほしいくらいです、そんなもん。しかし、こんな出会い方もあるのかと頭の片隅あたりに残してもらいたいのが、僕の狙い所。いっぱい出会っていっぱい別れてほしいのです。運命のキューピッドは必ず矢を仕留めますから。

写真を撮るOLです。