ドラマ出演
仕事の移動中で、汐留のオフィス街を歩いていた。歩道橋にテレビクルーが大勢いて、これからドラマ撮影が始まりそうな感じ。
スタッフが誘導して歩行者を優先させてロケをしているところに好感が持てた。知ってる芸能人いないかなーと横目に通り過ぎる。
やたらスタイルの良い若手俳優風がいたが、おじさんである私には彼が誰かを認知する事ができない。有村架純も吉岡里帆もいなかったので、後ろ髪を引かれることなく通り過ぎた。
そのスタッフが群がる場所を通り過ぎた所でADっぽい女の子が私の前を全速力で走っていく。いつだって若手は走らされる。
そのADが駆け抜けた道に、時間が止まっている人間がいた。OL風の若い女の子AとスーツおじさんB。道の真ん中で立ち止まっている。いや、停止している。
その異様な光景に「え?」っと違和感を覚えて私も何故か立ち止まってしまう。
前を走って行ったADが大きく手をあげると、後ろから「スタートッ!」と言う声に、反射的に歩き出す私とOL女子AとスーツおじさんB。
歩き出してから、あれ?これ撮影してるよな。自然とエキストラ参加してないかコレ。なぜ、関係ない私が映り込んでいるのに止めない?
そうか、さっきエキストラと一瞬立ち止まっていたから私も汐留通行人Cとして自然にカウントされたのか。
OK、そういうことですか。全てを察した私は、ポケットに手を入れて歩いた。秋風が通り過ぎる。少しだけカッコつけた。