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「水府の三門」シリーズ

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江戸からはるばる雨宮いばらは、常陸の国に赴任した雨宮又右衛門に会うために、女の身で一人旅立った 又右衛門が亡くなる年に書き上げられた 『美ち艸』は、実はその頃にはもう書き始まって…
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#みち草

「水府の三門」 ◆道しるべ◆⑩

「水府の三門」 ◆道しるべ◆⑩

茨の道、野の道

いばらは再び山道を急いだ

御岩権現山の峠の茶屋とやらで、茶菓を頂いたりなぞしてしまったからだ

茶屋は峠の坂を登り始めたすぐ脇にあった

坂はなだらかに見えても、高ノ原から下ってくる人々にとっては、まっすぐに進めず爪先が前にのめって難儀らしい
木の肌の杖を突いて下りて来る人を見ていると、大変そうだなあ、と思いながらもいばらは笑いをこらえている

そうはいっても、坂を下るその大変

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「水府の三門」◆道しるべ◆⑨

「水府の三門」◆道しるべ◆⑨

番外編ー冥府船頭

胸板と間に一突き

引抜いて振り返ったところを

満月斬り

それで絶命したはず

時世の句か、呪いのまじないか

口から血をゴボリながら、襟口と肩袖に掴みかかってくる

(まだ息があるとは・・金子の欲に溺れるは冥府魔道への、まこと近道よ)

不自然な位置で逆立てた刀を、股間の間から突き立てる

えぐり抜いた切っ先が脇腹を突き破った

地べたにずり落ちて、ビクビクとはぜているそ

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