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江戸からはるばる雨宮いばらは、常陸の国に赴任した雨宮又右衛門に会うために、女の身で一人旅立った
又右衛門が亡くなる年に書き上げられた
『美ち艸』は、実はその頃にはもう書き始まって…
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2021年12月の記事一覧
「水府の三門」◆道しるべ◆⑦
『白鬼王』名を呼ばれているような気がして
しばし、暗闇に耳を澄ます
虫すら眠る静か夜
横たわる又右衛門は、弧を描くように低く、蒼い閃光を放つ輪を視ていた
その足首から湧き出でるような、力強い煌めき
白き鼻じろに灰色と黄の立て筋
輝く白い・・狼か
蒼き双眼が、来る
狼は姿を消して久しいと聞く
里川はかつて狼の被害に村人たちは困り果てていた
太田と袋谷の間、平たく荒れた藪すこの道
果てなく
狼の
「水府の三門」◆道しるべ◆⑥
『狐の嫁入り』
寛政三年一人の賢者が雨宮又右衛門と入れ替わるように退官した『百姓学者として水戸藩に仕えた男』名を長久保赤水
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あのね
又右衛門さま、けっこう絵心がおありでお上手なのよ
わたくしが小さい頃お絵かきしていたら
「落書きか?」
って、笑って・・
それから一緒に夕暮れになるまで描いていた
「いばらはもっと小さい時に、又右衛門さまに抱っこして頂いたことがある」
そう聞い
「水府の三門」◆道しるべ◆⑤
『雨宮又右衛門という男』
水戸藩医に実父と実兄を持つ
次男であったためか、雨宮家の養子となる
「雨宮瑞亭」「西澤散人」の雅号を用いる
寛政三年
雨宮又右衛門(三十三歳)
水戸藩領常陸松岡郡郡奉行就任
同年水戸藩
尸罪決定後ー自死・牢死により死せる者
塩漬にした後、刑場引き出し、尸体といえど
定めにのっとり処刑の後、晒す等
見せしめの刑を廃止した
これより三年づつ
雨宮又右衛門は松岡郡・南郡・太田