出産に関する備忘録

出産してみたので、経過と感想を備忘録として残します。元々は計画無痛分娩を予定していましたが、計画日を決める前に破水してしまったため、普通に産むことになりました。

Day 1 : 出産予定日の2週間前(37週5日)の深夜、なんだかさらっと水が出てる感じが発生。しかしその時点ではいまいち何なのか確信持てず。その後、お風呂に入ろうと思い、脱衣所で着替えていたら足に水がかかる。破水なのかと半信半疑だったが、その後だばだば水が落ちてきたため、ようやく事態を認識。お風呂は諦めて、病院へ電話し状況を説明。入院用具を持って病院へ来るよう指示が出たため、事前に登録していたマタニティタクシーを呼ぶ。

深夜、午前1時前に病院へ到着。病院には私と同じ状況の経産婦さんもおり、同時に診察。二人とも破水確定ということで入院。私の方は高位破水で子宮口も大して開いておらず、陣痛もないのでとりあえず抗生剤の点滴を受けた。その間、お隣の経産婦さんは急速に陣痛が進んだらしく、私の点滴が完了する頃にはお産開始となり、最終的には病院に到着後、1時間半で出産完了していた。その余りのスピード感に、横で聞いていた私は驚愕。最後の方は叫んでおられたのだが、分娩中の人の声を出産まで通しで聞いたことがなかったので、あんなにも叫ばざるを得ないことにも驚くと共に、これから自分の身にも同じことが降りかかる未来に恐怖した。

上述の通り、私は元々計画無痛分娩を希望しており、本来であればこの日の翌日に計画日を決める予定だった。しかし誠に残念ながら、計画日を決めに行く前日に破水。点滴中に、”今週は無痛分娩枠に空きがないため、普通分娩になりますが…”と聞かされ、マジかーという気持ちになるも、何事も予定通りに行くはずがない、という諦めもあり、気を取り直す。

この時点では、破水しているものの陣痛の気配はないため、ひとまず1〜2日程度様子を見つつ、それでも陣痛が来なければ陣痛促進剤を使っての出産となる旨の説明を受ける。麻酔使えない上に長丁場になりそう…という一抹の不安を覚える。更に、コロナ対策で立ち会いはおろか付き添いや面会も完全に禁止されており、一人でこの事態に向き合うんか、マジうける、という気持ちに。

その一方で、個人的には入院したり大きな病院にかかること自体が初めてだったので、ナースコールやらナースステーション、分娩関連の各種設備類、慌ただしく働かれている看護師さんや助産師さんたちを見て、わードラマで見るやつだーみたいな物珍しさもあった。

この日は朝までNSTという分娩監視装置を付けて様子見し、その後も4時間置きのNST、及び12時間置きの抗生剤の点滴を繰り返し、赤子の心拍と陣痛の有無を確認。一般的に、破水後24時間以内に陣痛が発生するケースが多いらしく、私の場合も12時間後のお昼頃には何となく20分〜15分置きくらいの軽いお腹の張りが発生していた。しかし本当に軽く張るくらいなので痛みという感じではない。お腹の中の人はいつも通りぐるぐる動き回っており、中の人が元気過ぎてNSTがよくずれますね〜と言われていた。

私が入院した病院は、地域の中では比較的大きめな施設だったため、ひっきりなしに分娩対応している様子であった。私が入院した時に1名、更にNSTや点滴に行くたびに、必ず1〜2名が分娩に近い陣痛に苦しむ声が聞こえていた。結構皆大胆に大声で叫んでるし、絶え間なく”痛い“とか”ああああーーー”という声が聞こえる。悲鳴に近い感じである。事前に配布されていた分娩時の痛みの推移を解説したテキストによれば、子宮口が8cm程度開くと”コントロールを失うほどの痛み”との記載もあり、実際叫んでいる人はその辺りで戦っている様子だった。妊婦が叫んでいるので、彼女たちをヘルプする助産師さん達も声を張り上げねばならず、従って、違う部屋で点滴してる私にも状況が完全に筒抜けなのである。しかしそのおかげでかなり事前学習出来た。

1. 子宮口7cmくらいからがマジでヤバそう
2. 苦しい時はとにかく息を吐けと指示される
3. いきむ時は目を開けて視点を固定しろと指示される

上記2、3は、苦しむ妊婦たちに対して助産師さんたちが必ずこのように指示していたので、恐らくコントロールを失い、出来なくなる人が多いのであろう。よってこの2点は頭に入れておいた方が良さそう。テキストにも同様の記載はあったが、読むのと実際の現場に居合わせるのとでは説得力が桁違いである。

さて、入院後20時間が経過した頃から、なんとなくお腹や腰の痛みが増してくる感じがある。生理痛に近い感じで、15分〜7分置き位のペースで、1〜2分間位痛い。たまに15秒位で収まる時もあり、規則的とは言い難い。陣痛と言えば、規則的な痛みがお約束のはずだけど、かなりバラバラだったので、助産師さん達からもこれはまだまだ時間がかかるね〜とのコメント。しかし、その後午前1時頃から、不規則ながらも徐々に痛みが強くなってくる。意識して息を吐いて我慢する感じ。まだまだ我慢は出来るけど、普段の腹痛とは一線を画す感じがあり、NST上でも痛みが強まりつつあることが確認出来る様子。ひとまず部屋に戻り、少しでも睡眠を取るよう促された。痛みがない合間を縫って少し仮眠。

Day 2: 午前4時頃、あれれ結構痛いな、という感じで目覚める。痛みの場所が下腹部から腰とお尻に移動していた。腰を撫でると痛みが少し紛れる。こういう時、普段なら付き添いの人が腰を撫でたり押したりしてくれるんだろうと思われる。男性からワイフ等の出産付き添い体験を聞くと、テニスボールで押してあげた、とか、腰を撫で続けて手が痛くなった、というコメントを聞くが、あれはこれのことか、と思い至る。コロナ対策で付き添いの人がいない私は、ひとりで自分の腰を撫でたりお尻を押してみたりしつつ我慢する。この時点で陣痛の間隔は8分〜5分位で、まだあまり安定してない。しかし午前5時半過ぎ、痛みを我慢するのが結構しんどくなってくる。夫氏に、マジで痛くなってきた旨一報を入れ、ナースコールして助産師さんへ状況を説明し、分娩室を訪問した。

分娩室には先客の方がいらして、かなり苦しんでおられる様子。しかし今回は私も結構苦しいので、同胞よ…という感じがある。NSTを付けると痛みが加速していたらしく、ようやく入院後2回目の内診。そこで既に子宮口が6cm開いていたことが判明。助産師さんから、よく頑張ったね!と褒められる。もっとホメてくれ…(陵南フクちゃん)という気持ちになる。入り口が良い感じなので、痛みの進み方次第ではすぐに8cm位まで進むと思うよ、とのコメントを頂くが、果たして”すぐ”とはどの程度の時間を指すのか?想像がつかないので期待を持たないようにする。

そこから2時間くらい、ひたすら痛みを我慢する。分娩室には携帯持ち込みが許されているので、痛くない間は気晴らしにTwitterを見つつ、痛い時は意識的に息を吐いて痛みを逃す活動を行う。お隣さんは苦しみがMAXに達している様子で、ずっと悲鳴を上げている。お隣さんの子宮口が9cmくらいになった時に、どうやら赤ちゃんが出てきた様子。おめでとうございますー!という声が聞こえたのだが、妊婦さん本人は苦しみ続けている。どういう状況なのか?声だけでは判別出来ないが、赤子出産後の方が辛そうな悲鳴で、ずっと痛い痛い痛いーーーと叫び続けている。こちらとしては、赤子が出たら陣痛は嘘のように消えると認識していたので、隣で発生している事態が一体何なのか、恐怖でしかない。一体彼女の悲鳴の終わりはどこなのか?お隣さんに想いを馳せてしまった。

午前8時頃から、私の方の痛みも完全に余裕のないレベルに昇華。この年で痛みに声を出すのもみっともないので、腕を噛んでみたりしてやり過ごしていたのだが、それも出来ずにガタガタ震えるみたいな感じになってしまった。息もかなり頑張らないと吐けず、勝手に下半身に力が入ってしまう。恐ろしい。分娩台のレバーを引っ張ると身体に力が入ってしまうので、意識して腕を上げ、手を開くようにする。倒れて助けを求めてる人みたいな感じだったと思う。助産師さん達は完全にお隣さんにつきっきりだったので、私の方はあまり見ててくれなかったのだが、ようやく私の状態に気付いてくれて、内診してくれた。9cmとのこと。おいおいこれでまだゴール見えてないのかよ???という気持ちになる。しかし、助産師さんからは、いい感じだからそろそろ力を入れてみてもいいよ!とのGOがかかる。ここからがマジで恐ろしかった。いきむと楽になる、というテキストの記載は、私の場合は全く逆で、力を入れるとめちゃくちゃ苦しい。全然楽じゃない。力を入れると、ぎゃーーー、とか、ゔあーーー、みたいな、殺される間際の人みたいな声が出てしまう。しかも丁度タイミングの悪いことに、夜勤さんと日勤さんの交代時間に当たってしまい、申し訳ないけど日勤さんに引き継ぐまで40分位耐えてね!いきみ方の説明とかは日勤さんからするから!と言われる。そんな、ご冗談では?むりむりむり。しかしそれも仕方のないことなので、あと少しで終わるあと少しで終わると自分に言い聞かせ、日勤さんの登場を待つ。

耐えること30分、ベテランぽい助産師さんが登場。神に見える。正しい姿勢と呼吸を教えてもらい、さあいきみましょうーと言われて力を入れたところ、助産師さんはそれに合わせて思い切り私のお腹を下に押したのでめちゃびっくりした。すごい、押し出してる、めちゃ原始的。しかしそれによってかなり出てきたらしい。お医者さんも登場し、いよいよお産です、となる。お医者さんは会陰切開のために登場した様子である。会陰切開の説明を受け、麻酔の注射を打ってもらった。噂では、陣痛の痛みの前では会陰切開など気にならないので麻酔はない、と聞いていたが、普通に麻酔の注射をしてくれた。この時点では、何故か陣痛は比較的楽になっていて、2分位の全く無痛のインターバルを経て、頑張って力を入れる感じになる。インターバルの間はかなり冷静になれるので、思わず絶叫してごめんなさいと謝ってしまったのだが、お医者さんも助産師さんも吹き出していた。全然静かな方ですよ、と慰められた。その後数回力を入れ、途中で会陰切りまーすと宣言され、更に何度か力を入れた後、頭出てきたので力抜いてくださーいと言われ、そのままずるっと人間が出てきた。朝9時半だった。おめでとうございますー!と言われたものの、こちらとしては感動とかそういうものよりも、良かった、これでもう痛くないんや…という気持ちが優ってしまい、思わず、もうこれ以上痛いことってないですよね…?と質問してしまった。後陣痛がある人もいるけど、基本的には大丈夫ですよ、とのことで一安心。

その後、赤子を抱っこしてみたり、胎盤出されたりしつつ、そのまま分娩台に横たわった状態で夫氏に出産の旨を電話でお伝えした。まさかこんなに早く生まれると思っていなかったみたいで、かなり驚いていたし、そもそも生んで5分で電話してくるとは思ってなかったらしく、それについてもびっくりしていた。確かに私もこんな血塗れの状態、且つ切開した股を縫合されている最中に携帯いじれるとは思っていなかった。更に、促進剤を使ったりすることを想定していたので、早く進んで良かったなあという気持ちであった。因みに、切開したところを縫合されるのは結構痛い。

産後2時間はその場で安静、ということで、そのままの状態で横たわっていたのだが、とにかくめちゃ尾てい骨が痛くてびっくりした。あれだけ痛かった下腹部と腰とお尻は無痛なのに、唐突に尾てい骨が痛くなるのは不思議な感じだった。当日はその後部屋で安静に、とのことだったけど、数時間横になれば歩ける位までには回復することが分かった。

学び:

1. 普通分娩はやはり痛い。

2. しかし進み方は人それぞれ、痛みの感じ方も人それぞれなので、他の人の体験談を自分に置き換えてもあまり意味ない。

3. たまに、トイレや風呂場で一人出産し、赤子を捨てる人がニュースになるけど、まず一人で産むという恐ろしい経験をしてることがすごい…だけど、この現代社会においては、そのまま遺棄せず、せめてどこか施設に預けよう…

4. その一方で、ヤノマミは森で子供を産み、その場で赤子が精霊だと感じると葉にくるんで蟻塚に放り込み殺すんだけど、なるほど、世界観次第ではそれも不思議ではないな、という気持ちにもなる。行為自体がプリミティブ過ぎるからであろう。

5. 子供を産まないと女性は一人前じゃない、と取引先の男性役員から言われたことがあるのだが、こんなに醜悪な発言はない。お前も体験してないだろ、としか言えない。この体験を経ずとも男は一人前だ、と言いたいんなら、その履いている下駄の高さたるや軽業師並みだろう。体験したからこそ言うが、これを体験せねば一人前にはなれない、などと言うべき事象の類ではない。他人から強制すべきものでもない。個人的には、正直なところ、今後軽々しく子供は?とは聞けなくなると思う。

6. 人の悲鳴を延々と聞いているのは辛い。拷問にかけられている人の声を聞かせ続けるのも拷問の一種だと思った。沈黙における穴吊りの効果を理解した。

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