習作 夢十夜①
夏目漱石の夢十夜を読み返す内に、自分も書きたくなった。
いずれ夢を題材にした話を書くつもりだったので、図々しくも文豪の胸を借り、暫く続けてみようと思う。
第一夜
二階の自室の引き戸を開けて廊下に出た。
近頃この始まりの夢をよく見るので、
廊下を歩きながら、これも夢だなと思った。
階段の前に来て下を覗き込んでみると、
電燈に照らされた階下がしんと浮かび上がっているばかりで、その他は闇である。
その内、前から決めていたような気になって、どうせ夢ならここから飛び降りてみようと思った。
そうして深く考えぬまま、頭から飛び込んだ。
飛び込んだ瞬間、もしやと思った。
何度か同じ夢を見たからといって、これも夢とは限らぬ。
初めから、夢と勘違いした現実ではなかったか。
私はたちまち恐怖した。
身体中の血が、後悔と一緒になって心臓へ逆流した。
最早為す術はなかった。
激突する寸前、目が覚めた。
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