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『人類冬眠計画』レビュー

表紙

『人類冬眠計画』

生死のはざまに踏み込む
砂川玄志郎(著)

📚

きました、人工冬眠!
ワタクシ、前々から↓

このあたりでおわかりのように人工冬眠には興味シンシンなわけです。
岩波科学ライブラリーから『人類冬眠計画』なんて強烈なタイトルの本が出たら買わないわけないじゃないですか!
というわけで早速読んでみました!!

◇◇◇

著者の砂川玄志郎さんは小児科医の先生。
重症の子供たちを治療するための、麻酔の技術や麻酔して搬送する技術は、それぞれにとても高度で困難なのだそうです。(なにしろ身体も小さいしね……)

治療するためには急激な病変を抑えて、代謝を低下させる必要があるけれど、全身麻酔は危険(心肺までマヒして停まってしまう)。しっかりした治療施設に運ぶために搬送しようとしても、ちょっとした振動などであっさり身体の代謝バランスが崩れて危険な状態に陥ってしまうのだとか。
こういった観点から、意識が止まっているのに生命機能が自動的に維持される「睡眠」に興味をもち、さらに、それが長期にわたって継続しているのに生命が停止していない「冬眠」の研究をはじめたそうです。

なお、「冬眠」という言葉ですが、動物がよく「冬」に冬眠するので「冬眠」といっているけれど、冬眠状態になるのは冬に限ったことではないそうです。外気温の低下によって代謝を抑えて冬眠状態になる動物が多いのはたしかですが、なかにはそうでない動物もいて、たとえば熱帯に住むフトオコビトキツネザルなどは、主食の木の実がなくなる乾季に冬眠状態になるそうです。(なので「休眠」のほうが正しい用語だけれど、「冬眠」が一般的な言葉になってしまっているので「冬眠」を使っているそうです)

では、どういった動物が「冬眠」状態になるのでしょうか。
この疑問は難しくて、実は冬眠する動物と冬眠しない動物の間にはこれといった特別な差が見受けられず、何がキーとなって冬眠するのか、どうにもわからない探求の日々が続いていたそう。

で、なんだかんだといろいろあって〈中略〉w

2020年に筆者の砂川玄志郎先生と筑波大学の櫻井武教授らのグループが、ハツカネズミ(マウス)の脳の一部を刺激することによって、本来冬眠をしないマウスを冬眠状態に誘導できることを発見したのだそうです。(すごい!)

視床下部のQRFP神経を興奮させて……って素人にはよくわからないですけれど、まあとにかくそういうことをすればよいようです。これをQIHと名付けたそう。(もちろん本書ではちゃんと詳しく書かれていますよ)
そうすれば、冬眠しないはずのマウスも冬眠状態になるのだとか。

おそらく氷河期を乗り越えて進化してきた現在の動物種(人類も含めて)は、「冬眠能」というべき能力が隠されていて、それをうまいこと刺激してやれば、人工的に冬眠することができる! というわけですね。

もちろんまだマウスでしか実現できていないわけですが、マウスは他の動物(哺乳類)のなかでも際立って人類によく実験され解剖されて(><)、ゲノム情報などもしっかり解明され理解されているモデル生物です。
このマウスでこのような発見があったということは確かに画期的で、研究がすすめば将来人間にもQIHが発見されて、ニンゲンも人工冬眠することができる未来が来るに違いない!!(ばばーん)

という大発見までの道のりと、人類が冬眠することができるようになった社会はどうなるのか、という夢が語られている、人工冬眠好き(?)にはとても興味深い内容の本でした。

なお、このQIHの発見をTEDで語られている内容が動画で公開されています。

英語の講演ですが自動翻訳で字幕だせますので大丈夫。(ちょっと変な訳がありますがw)

興味のあるかたは動画だけでも見てみると面白いとおもいますよー🐀

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#砂川玄志郎 #人工冬眠 #クライオニクス #らせんの本棚

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