『ウは宇宙ヤバイのウ！〔新版〕』レビュー
『ウは宇宙ヤバイのウ！〔新版〕』
宮澤 伊織(著)
🌼🌼🌼
下校途中のいつもの通学路、いきなり上空に巨大隕石登場。
あと30秒で地表に激突、人類滅亡のおしらせ。
主人公の女子高生、久道 空々梨は、同じ学校に通う従姉妹の非数値 无香から妙に冷静な声で「で、どうするんですか？」と問われるも答えることができず……。
きっかり30秒後、隕石が衝突し、地球の全生命は滅亡してしまいましたとさ。
めでたしめでたし。
：
という夢をみた。というお約束の夢オチ展開の実績が最初の10ページでまず達成。
その後、実は「今」は隕石衝突の３日前である事実を伝えられ、やっぱり夢じゃないじゃん&タイムリープ物だという実績までクリア。
すごい勢いで定番ＳＦ要素の実績を解除していきつつ、やたらキャラの立ったＪＫたちの会話キャッチボールも面白くよみやすく、ウキウキしながらページを消費していきます。
🌼
いやもう抱腹絶倒。めちゃくちゃ面白い。（ヌル香とか、キャラ名だけでも良いっすね）
ＳＦファンなら大喜び間違いなしってネタが連発。お腹を抱えて笑いながら一気に読んでしまいましたw
なんでも、2013年に一迅社から出版されたほぼ同名（『ウは宇宙ヤバイのウ！〜世界が滅ぶ５秒前〜』）のラノベバージョンから、時代に合わせて主人公の性別を変え百合作品にして早川書房から〔新版〕として再出版とのことです。
キャラの性別まで変えちゃう。このＳＦファンが喜ぶ要素を貪欲にとりいれていくエンターテイメント精神、嫌いじゃないですw
それにしてもほんっと誰得？ みんな得だね！ ってかんじにファンが大喜びする要素ばっかり。ネタバレになるのでここでは書けませんが、パロディ元を知っていると嬉しくなってくるとってもいいかんじなネタ、お約束、エピソード、展開や設定の扱い方、料理のしかたがもう面白いのなんの。
著者の宮澤伊織さんは『裏世界ピクニック』を書かれた方、『裏世界…』のほうは怪談やネットロアの二次利用（？）がめちゃくちゃうまいですねこの方。って思っておりましたのですが、ＳＦその他の分野もしっかり広範囲にフォローされておられるご様子ですね。
それも、表面的なパロディではなくて、全部読み込んで味わい尽くして、「めっちゃ好きなんだろうなあ」って思わせる、当人が面白がって書いて……いや、愛をこめて書かれていることがよく伝わってきます。
もちろん、ネタ元なんて知らなくてもしっかり楽しくおもしろく読めます。ネタ元を知らないままでも全然大丈夫ですし、この本を読んだ後からネタ元に出合って、ああ、これか！？ ってアハ体験（？）もできちゃうお得感もきっとアリなんじゃないかと🌼
あ、そうそう、それと、すてき可愛い表紙と作中イラストは漫画『アリスと蔵六』の今井哲也さんなのです。これもばっちり世界観にあっていて素晴らしい☆
表紙も某ＳＦ映画ポスターっぽいしｗ（バック中央にドヤ顔で聳え立つヌル香ちゃんのラスボス感が最高です（笑））
作中にイラストもけっこう入っていて、お話を引き立ててくれています。
面白い面白いと久しぶりにワクワクドキドキして、読みながらなんかとっても嬉しくなってくる。そんな素敵なエンターテインメントＳＦでした。
いやあ、たのしかったー🌼
※あとがきによると、前の一迅社バージョンは残念ながらあんまり売れなくて続編が書けなかったそうですが、この早川版は売れたら続刊できるかも！？ とのことですので、ぜひぜひ皆さま買ってあげてくださいまし。そいでもって続編出してもらいましょう。ほんとおもしろいですよー☆
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