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『ドードーをめぐる堂々めぐり』レビュー

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『ドードーをめぐる堂々めぐり』
正保四年に消えた絶滅鳥を追って

川端裕人(著)

🦤

ドードー (dodo) 🦤は、マダガスカル沖のモーリシャス島に生息していた絶滅鳥類。
大航海時代、1598年にモーリシャス島を訪れたオランダの探検艦隊によって初めて存在が確認された飛べない鳥で、発見されてからわずか83年後の目撃情報を最後に絶滅してしまった幻のトリです。

幻ゆえに、そして、飛べない事とずんぐりした愛嬌ある身体つき(これは初期の想像図によるミスリードだったそうですが)ゆえに「絶滅代表」的な扱いをされています。

18世紀には想像上の鳥だと言われたり、ダチョウの仲間だとかいろいろ言われたりしていました。

※進化論を認めていなかった当時のキリスト教では、神の造った生き物が「絶滅」するなんてことはそもそもありえないじゃんと理解されていなかったそう><

そんな暗黒時代をへて、19世紀にようやく復権(?)、実在していた(でも絶滅している。それも人間の関与で絶滅させられた)鳥として世に知られるようになります。
そして、科学的な調査で骨格からダチョウやペンギンじゃなくてハトの仲間だということがわかったそう。

また、絶滅代表選手として特にファンタジー作品に愛され、あのルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』にも登場。ルイス・キャロル自身の投影ともいわれています。

というところまでが基本情報。

で、この度なんと、この大昔に絶滅してしまったドードー鳥が、当時、(おそらくは)生きたまま日本に来ていたという新発見があったのです。

約350年前の江戸時代、ばりばり鎖国していた日本ですが、長崎の出島だけはオランダ船の入港がゆるされていました。
その出島に、交易の際の「貢物」、値段のつけられない特別な商品としてラクダやヒクイドリ、オウムなどの珍しい動物が連れられてきては将軍様に献上されていたのです。
その中に、我らが(?)ドードーも入っていたのだそう。
オランダ船の日誌や船荷目録にも、そして、長崎出島の目録にもしっかり記載されていたという新事実がロンドン自然史博物館の研究員によって発見され、2014年に『ドードーとシカ、1647年の日本への旅』という論文が発表されたのです。

そんな新発見のニュースを知った著者の川端裕人さんは、喜び勇んで論文の著者へ連絡を取り、日本語の情報は日本で探すのが一番。日本で裏どりしますよ! と協力を申し出たのだそうです。

というところから始まる、まさにドードーをめぐる堂々巡り。

空間的には日本だけでなくヨーロッパや、モーリシャス諸島までを。時代的には約350年前、17世紀から現代までの広大な時空間でのドードーの探求。
博物誌と生物学をまたにかけた「絶滅」をめぐる壮大な旅の記録が本書なのです。

🦤 🦤 🦤

いやー、知的好奇心くすぐられまくりの一冊でした。

アリスに出てきたのは知っていましたし、最近ではニンテンドー・スイッチの「あつまれ!どうぶつの森」に出てくる航空会社「ドードー・エアラインズ」(お世話になってマスw)で妙に身近に感じていた愛嬌のある鳥さん。でもそういえば絶滅しちゃってるのよねえ。ぐらいの印象だったのです。が、本書の導入で川端さんのリアリティ溢れる実際の興奮に引き込まれw
一気に壮大な知的探求の旅にお付き合いしてしまった感じです。

ドードーが日本に来ていた! というだけでも驚きなのに、その到着した1647年の長崎って、あの島原の乱の10年後、キリスト教宣教師つれてくんな! とポルトガル船の来航を禁じていた日本に、むりやりまた入国しようとしたポルトガル船を、オール九州勢諸藩大名と5万の人員で追い返したという「島原有事」のちょうど真っ最中だったという事実。

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↑来航したポルトガル船を閉じ込めている図。この時の湾内、出島の近くにドードーが乗っているオランダ船も描かれてます。(湾外にいるのがオランダ船だと最初勘違いしていました。御免なさい。湾外にいるのは中国船だそうです。川端さんご本人にご指摘いただいちゃいました><)

こんな資料見せられたらコーフンしちゃいますよねええw

ってところからはじまって、もうぐいぐいといろんな場所と時代にひっぱりまわされますw
生命と歴史について、ドキドキしながらまさにドードーめぐりの旅を味わえる良著でありました。

※そして、まだこのドードーめぐりの旅は終わっていません。つい最近(2014)にこんな新発見があったのだから、まだ、どこかにドードーの記録が埋まっているかも。特に日本での記録は世界のドードー好きドードロジストからも見過ごされているガラパゴスかもしれません。そうした、もしかしたらこれドードーに関係あるかも? という「目」を増やすのも、本書の目的なのだそうです。

あなたのお家や、田舎の納屋とかに、頭でっかちのふしぎな鳥の骨や絵が転がってたりしませんか? もしあったら世紀の大発見になるかも、ですよ?

なんてちょっとお宝さがし気分も味わえる本なのです。生物学・日本史・世界史などなどいろんなジャンルをまたにかける知的コーフンの書。おすすめです☆

ちなみに、この本の表紙の絵、出島を望むドードーの図は、2014年に発表された論文の共著者の一人で絶滅動物の復元画家さんのリア・ウィンターズの手によるものです。もしかしたらこんな風な景色をドードーがみていたのかも? って思うと不思議な気分になります。

あとあと、もひとつちなみに、先ほどからこのページで使っている絵文字、 🦤 (みえます? iPhoneでは表示できますがPCでは出ないようです)はドードーの絵文字なんですねー。絶滅動物なのに絵文字としてあるなんて、いまだに愛されてる証拠ですね! 絵文字製作者さんにもドードー好きドードロジストおられるのでしょうかw

🦤 🦤 🦤

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