『瑠璃の宝石』レビュー
『瑠璃の宝石』
渋谷圭一郎(著)
💎
谷川瑠璃(たにがわ・るり)は綺麗なモノに憧れる女子高生。祖父がかつて近くの山で水晶を拾っていたと聞き、自分でも採れるのではないかと山に出かけてしまう行動力の持ち主。
そんな山中で出会ったのは鉱物を研究している大学院生の荒研凪(あらと・なぎ)。骨董市で見つけたという外国製の戦槌(ウォーハンマー)を背負って山歩きするような変わり者ではあるのですが、自然科学に対する姿勢と鉱物の知識は本物で、何も解らない初心者の瑠璃を水晶の鉱床へと導くのでした。
そうして鉱物(宝石)の魅力にはまったルリは、ナギさんの後ろをついて回り、ガーネットやサファイヤ、金など、様々な奇麗なモノを発見、採集していくことになります。
漫画なのでほいほい見つかるのかと思いきや、なかなかそうはいかないのが良いですね。産地がわかっていてもそう簡単には見つからないのが貴石というわけです。
それぞれの発見に至る道筋で、科学的な手法で地道に調査し探していく過程を追体験できるのが素晴らしい💎
石はどこから生まれて、どこへいくのか。
我々人間にはひとところに止まって見えていても、数千万年という悠久の時間スケールではけっこう動いている石たち。
その動きを推理して追跡するのは、石のプロファイリングめいていて、まるで科学捜査のようです。
人間主観・視点ではない自然環境の気持ち(?)に寄り添うこと……。
時間的・空間的にそれぞれ遠大から微小スケールまでのフォーカスや、物質固有の特性個性、特徴への深い洞察といった感覚は、自然科学の根底であり真髄である気がします。科学するココロというか、想いのこもった描写やわかりやすい解説もまたGood!(∩´∀`)∩☆
単純な宝探しストーリーとも読めないことはないですが、これはもう立派なサイエンス・アドベンチャーといえるでしょう。
石たちの美麗な描写と、折々に入る理系にはとってもグッとくる詩的な演出も見逃せませんw
※あ、美麗なのは石だけじゃないですよ。キャラも可愛いし自然の描写もすばらしいし、それに、見開きいっぱいに描かれた軍手の網目なんて、ここでしかみれませんw
巻を追うとキャラクターも増え、行動範囲や狙う対象も増えていきます。(作中にもありますが)日本って4大プレートがせめぎ合う、鉱石にとってなかなかにぎやかな所のようです。
わたしも日頃ただの石と思って見逃してしまっている身の回りの石たちに、ちょっと目を向けてみようかなと思えてきました。
それこそ、河原の小石や雨どいの中の堆積物までw
あとあと、鉱石ハンマーとザル(パンニング皿というそう)ほしくなっちゃいましたねw 目指せ一攫千金!(違う)
現在、4巻まで出ています。
1巻はkindle Unlimitedで読み放題対応のよう、アンリミ会員のかたは試し読みによさそうです☆
科学するココロをわすれていない方に、特におすすめのコミックです☆