『われらはレギオン4』レビュー
『われらはレギオン4』上・下
驚異のシリンダー世界
デニス・E・テイラー(著)/金子浩(訳)
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↑の1・2・3の続き、第四巻。です。今回は上下巻の二冊構成!
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宇宙探査機集合体としてよみがえり、光電子コア・マトリクスのコンピュータ頭脳に生まれ変わったボブたち(複数形)。
タイトルの『われらはレギオン』の通り、彼らは集合体。もともとのオリジナル・ボブの複製たちです。
銀河に広がっていくボブのネットワークは半径100光年におよび、その集合体を指してボブの宇宙と自称しています。
(なので、このシリーズ名は『われらレギオン』シリーズではなく、ボビヴァース・シリーズということになってます)
複製に複製を重ね、オリジナル・ボブとの差異がだんだんと積み重なっていく彼ら(ルパンのマモーでもそんなネタありましたっけ。ちなみにこっちでは「複製浮動」と呼ばれています)。
個性や考え方もだんだん違っていって、いつしかボビヴァースも一枚岩ではなくなり、人類との交流を良しとしない派閥が生まれてしまいます。
特に目立つのは新スタートレックで言うところの最優先指令(銀河連邦に属していない異星種族文明に接触しても干渉してはならないという指令)を尊寿するべきという、通称「宇宙艦隊」一派。
そして、入れ子構造のダイソン球を使った超巨大コンピュータAI(マトリョーシカ・ブレインというやつ)を作ろうとする一派なんてのも。
ダイソン球は、SFファンにはおなじみの恒星をぐるっと人工の球体でくるんでしまってそのエネルギーを余すところなくつかっちゃおうという壮大な構造物です(掃除機じゃないよ)
その他にも、スタートレックネタやらボーグ(機械生命体)やら、もともと(生前)SFファンだったボブの趣味そのままに、けっこうシリアスな展開をものともせずに、作中人物と読者両方に向けたSFネタが怒涛のごとくおしよせますw
今回の目玉のネタは、うさぎ座イータ星系で発見された巨大な異星人による巨大人工物。どうやらダイソン球に匹敵するサイズのスペースコロニーのよう。
かつて、第一世代のボブたちの一体であるベンダーがこの星域で消息をたってしまっています。その安否の調査に乗り出したボブが巻き込まれる騒動とは……?
また、このベンダー探索ミッションと並行して発生する人類社会との確執と、ふくれあがる政治的な混乱を、ボブとゆかいな仲間たち(?)ははたして上手く乗り切ることができるのでしょうか……?
というのが大まかなストーリーの骨格です。その骨組みにお話の流れをあたえるのが先ほども書いたSFネタの濁流w
スタトレにスターウォーズ、D&D(これはテーブルトークRPG)あたりは基礎中の基礎知識、そのほかおなじみネタやら、リングワールドを筆頭にノウンスペースシリーズ(ラリー・ニーヴンのSFで使われている共通舞台設定)あたりを下敷きにした用語や展開がバンバンでてきますw
このあたり、知っているとたのしさが何倍にもなります。SFオタク知識を試されてる感たっぷりw
そして、巨大宇宙建造物のハードSF的な考証と、AIと人間の知性(の複製)に関するちょっぴり哲学的だったりするお話が交わって、今回もばっちり。二冊分しっかり楽しめました☆
前作までのボビヴァースを楽しめた方なら十分おもしろいとおもいます。SFオタクなら読んで間違いなし! おすすめです☆
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