『6502とAppleⅡ システムROMの秘密』レビュー
『6502とAppleⅡ システムROMの秘密』
柴田文彦(著)
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かのアップルコンピュータのスティーブ・ジョブズの相棒であり、技術担当スティーブ・ウォズニアックの最高傑作と名高いAppleⅡ。
そのAppleⅡの心臓部に採用された、当時の一般的なCPUとは大きく異なった特殊な設計のCPU6502の詳細な解説。それと、いかにその6502の性能を巧みに引き出してAppleⅡが設計されたかを、丁寧に紐解いた解説本です。
スティーブ・ジョブスの伝記や、アップル創業時の出来事などはマンガにもなったり、いろいろ語られていますが、ウォズニアック氏に焦点を当てた本っていままであまりなかった気がします。これは、その技術にほれ込んだ著者が、如何にウォズが凄いかを256頁(ってのも良いですねw)にわたってひたすら書き綴った本なのです。
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パソコン黎明期の歴史に関する本をめくりながらこの本を読んでみると、確かにこの6502が特殊なCPUであったことがわかります。元になったのはモトローラの6800というCPUで、ライバルのインテル8080と同じく当初定価は$360で売り出されていました(1ドル300円時代(!)なのでCPU一つで約10万円!)。まだパソコンなんてものが世の中になかった時代ですけど、そんな高額なチップを使ってホビー向けのコンピュータを作っていては、全体でそうとう高額になってしまうのは容易に想像できます。
そこで、6800から機能を削りに削って、かなりエキセントリックな(つまり普通には使いにくい)CPUが設計されました。それがこの6502というやつ。ようは廉価版なのですが、うまいこと使いこなして、得意な分野に集中させるようにすると、高級品の6800を凌ぐ性能を発揮します。ただ、その「うまいこと」がとても難しい。じゃじゃ馬を乗りこなすようなもので、そのCPU(6502)の設計意図を完全に理解して、CPUの周りの回路を設計して全体を正しく協調するよう組み上げねばなりません。お手本になるパソコンなんてまだなかった時代に、です。
それを、作り上げてしまったのが、『ウィザード』ウォズ。その人だったわけですね。
それも、まさに魔法のように鮮やかな冴えた解決法で。
(このあたりを『スティーブ・ジョブス』等を読みながら読んで見ると、それはそれでまた燃える展開なのですが、いまはおいといてw)
そして、この本はその6502の解説だけでなく、AppleⅡのハードウェア構成やシステムROM(の中のプログラム。それも、ほぼウォズの手による作品です)の内容も細かく解説してくれています。6K-BASIC、システムの2KモニターROM。1バイトの無駄もなくみっちりと作り込まれた魔法の曼陀羅であり完成された宇宙。
※2Kは2KB、2キロバイトの意味です。1バイトは1文字と考えてよいので約2千文字。今読んで下さっているこの文章、このあたりまでで(画像ぬきで)ちょうどそのぐらい。わずかこれだけの情報量にパソコンの基本機能を詰め込んでいるわけです。めちゃくちゃすごくないですか?
この本でいま改めて解説してもらうと、確かにこれは、当時こんな魔法を使われたら、著者さんも、世界中のホビイストも、そして、スティーブ・ジョブスも惚れこんじゃうのもわかります。世界に魔法をかけたスティーブ・ジョブスに、最初に魔法をかけたのは、実はウォズニアックの技術だったのかもしれませんね。
本書ではROM内容の重要なところは機械語のコードと逆アセンブルした解析結果が解説つきで載っています。
さらに、情報だけでなく実際にいじれるようにと、6502とAppleⅡのエミュレータソフトも紹介してくれています。(Webブラウザ上で動作しているのに、それでも当時のAppleⅡ本体よりもずっと高速なのだとか。)
エミュレータ上の6502で機械語をモニターから打ち込んで動作させたり、ウォズの手によるシステムROMの中身を探検したりもブラウザからできちゃうとのこと。
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外出禁止の自宅待機で暇を持て余している方、こんな時こそいにしえのコンピュータの中に構築された世界を探検して、当代きっての魔法使いの創造の技を調べてみるというのも良い時間の使い方かもしれませんよ。そりゃきっと難しいと思いますが、難しいからこそ挑戦しがいのある、大人の知的探検ですね。
この本は、そんな冒険のよいガイドブックになるとおもいます。
↑実家の倉庫に眠っていた本体(j-plus)さんと記念撮影。
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