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『不全世界の創造手(アーキテクト)』レビュー

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『不全世界の創造手(アーキテクト)』

小川 一水(著)

タイトルだけみて、よくあるなんだかむずかしい漢字にルビのふられた中二病的呪文とか唱えて精神を物質化しちゃう系のスキルの持ち主が世界を造り変えちゃうようなラノベだろうと勝手に勘違いしてました(すいません)

でも、プロローグを読んで自分の間違いに気が付きました。魔法ではなく物理の力で世界を作り変える。しっかり地に足のついた土木系SFですね、これは。

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プロローグで若干12歳の少年、戸田祐機(トダ・ユーキ)が親の町工場の片隅で友達たちにプレゼンをしているのは、なんと、自分で自分を作り出せる自己生成ロボット!(のプロトタイプ)
素材はそこらへんにある土(の中のケイ素)を使い、ロボット内の電気釜でパーツを焼成し、焼きあがったパーツをロボ自身の中から取り出すところまでのデモを行っていたのです。

「製造公差は今のところ0.3パー、つまり1メートルのものを3ミリまでのズレで作るが、これは0.1パーまで追い込むつもりでいる。でないとネジが入らん。今はすべてのパーツを製造させることが目標で、それが可能になったら今度は自力で組み立てさせるつもりだ」

いやん、もうっ! 「製造公差」や「でないとネジが入らん。」でしびれちゃいますw
12歳の少年がもういっぱしのプロですね。

3Dプリンタで3Dプリンタを作る系のお話をたまに見ますが、当然出てくる「素材はどうするの?」って疑問も最初に解決してしまっているのも素敵です。
そおかー、土かー。すくなくとも地上にはいくらでもあるものねぇ。

なんてことを、お友達たちが理解できればよかったのですが、誰も彼の先進性と天才っぷりに気が付きません。彼も彼で、理解できない友人たちをバカにして、喧嘩別れをしてしまうのでした。(たったひとり、一番理解できていなさそうなチャラい友人を別にして)

それから5年。ようやく本編がスタートします。

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高校生になった天才少年は、人並みに背が伸びなかったものでいじめられてカツアゲされていたりします。小学校のころからのチャラい友人はチャラいだけでまったく頼りになりません。
そして、生家の町工場も海外資本にのみ込まれ潰れてしまっており、彼の天才的な頭脳とスキルで、あの小学生のころに夢見た(基礎設計した)自己生成ロボットを実世界に具現化することが、もはやできなくなってしまっていたのです。

彼のもとにあるのは、細かな字と図を書き連ねたB6判の野帳のみ。(ってのも萌えポイントなんですよ! わかりにくいけど! w )

失意に沈む彼の所へ、金融という別の方面の天才少女が現れます。「あなたの未来に投資させて」と。

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さあ、ようやく世界を作り変える手段と力が、二人の天才とチャラ男のところに集まりました。彼らは、この不完全な世界をどのように作り変えていくのでしょうか?

とまあ、そういうかんじのストーリー。

ストーリー紹介しつつ、「自己生成マシン」と一言で終えてしまっていますが、これはいわゆるフォン・ノイマン・マシン、自己複製機械と呼ばれているアレです。一台あれば、一台が二台に、二台が四台に、と、バイバインを振りかけた栗まんじゅう同様、無限に自己増殖していくことができる機械です。

SFの世界ではこれもまた実はメジャーな技術で、どんどんふやして巨大な木星をぐるんと囲んでしまうなど、惑星改造のような大ごとをするのによく使われたりします。(2010年ごろにもうそういう世界が来ていたはずなんですけどねえ)

バイバインにしろモノリスにしろ、ちょっと現在の技術からは遠い未来技術な気がしますが、それを、すこし頑張って手を伸ばせば実現可能っぽい? ような感じでうまく描いています。(よーく考えると難しいポイントは多いのですけどねw)

決して荒唐無稽ではないと思えるところが、現実に根差していてとてもよいのです。

実際、彼らが地上で行うのは主に土木作業で、リアルに、いま現在この地球が抱えている難題に、真正面から、泥臭く立ち向かっていくのですから。

◇◇◇

私的には、「真に豊かな世界とは?」という著者の書きたかったであろうテーマにとても共感できたのでよかったですわー。

そう、めんどうな作業仕事なんて機械に任せて、人間は機械にできない創作活動や、ぐうたらあそんで楽しむことをするべきですよね!(なんてことはこの本にはかかれてませんよw)

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そうそう、私はこの

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↑新書版を読みましたが、もうじき

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https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784022649676

↑表紙を一新した文庫版が出るようです。
ってえええっ! 主人公はもとより仔馬ちゃん(自己複製ロボ君の通称。このnoteのトップ絵にごちゃごちゃいるやつ)がなんだかちょーカッコよくなってる! フレンダ―?(違)

2020/9/7に発売開始とのこと、現在Amazonさんでは予約受付中です。

解説が 小飼弾@dankogai さんってのも興味ありますねw

電書化してくれないかなあー。



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