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ロストテクノロジー!回転ヘッドの話
SPY×FAMILY 良いですよねー。まちカドまぞくとこれは欠かさず毎週見ています。(アマプラで)
で、今週公開された第五話はアニメのオリジナル要素やまもりで原作では見かけないシーンが沢山!
もともと自動車等の工業デザインや服飾にめっちゃ凝ってるSPY×FAMILYなんですけど、今回びっくりしたのはこれ!
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オープンリール型のビデオデッキが登場していました。
オープン、つまりまだビデオカセット(VHSとかベータとか)になっていなかった時代のビデオであることが分かります。
そして、ただオープンリールというだけでなく
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ちゃんとビデオデッキ特有の回転ヘッドも(カバーがかかってますが)描かれているのもすごいw
(あと、デッキに立て掛けてある(落書きされた)テープの箱も正方形でリアルですねーw)
てなわけで、今回はこのロストテクノロジー、回転ヘッドのお話です。
まずはアナログ記録と磁気テープのこと
オーディオのアナログ信号をテープに記録する方法に磁気テープ記録がありますね。いわゆるカセットテープとかがそれです。このあたりはまだ電気屋さんで売ってるのをお見掛けしますネ。
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このカセットの中には磁気テープが入っていて、カセットデッキに差し込むと
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磁気テープに部分にこの録再ヘッドというのが接触して、アナログの電気信号をテープに塗布された磁性体に転写(したり、再生時には読み取ったり)できるようになっています。
アナログ信号なので、信号の強弱が時間によって変化します。それをテープを送る(送り続ける)ことでヘッドとテープ(の磁性体)の間に起電力を発生させて(フレミング!)読み取ったり、逆に記録したりできる仕掛けなわけです。レコード板に刻まれた溝がテープに記録された磁性体の強弱におきかわってるわけ。これだけでもスゴイテクノロジーだとおもうけれど、ビデオはもっとすごいのですw
あ、そうそう、普通のカセットテープは「コンパクトカセット」というやつで、昔はもっと大きな(コンパクトではない)カセットテープというやつもあったようです。ビデオカセットぐらいのやつ? さらにその前には、カセットに入っていないオープンリールのテープで録音再生していたのですね
音質はテープの速度に比例する!
これもアナログレコードとおんなじですね。レコードには毎分33回転のLPレコードと、45回転のシングルレコードがあります。一分間に33回転するLPレコードより多く回転する45回転のEP(シングル)レコードのほうが高音質です。ただし、記録時間は短くなってしまいます。
テープも実際に速度を上げて高音質にするワザがあります。オープンリールデッキにはテープ速度を変更する機能が普通にあるますし、カセットテープでも黎明期にはいろいろあったようです(よくしらないw 興味ある方はしらべてみて!)
そしてビデオ!
ビデオ(映像)も昔はアナログ信号でした。
ただし、音声のみのオーディオ信号と違がってデータ量は膨大です。記録する周波数を跳ね上げなくてはなりません。
理論的には、テープの速度をめっちゃあげていけば(高音質化すれば)ビデオ信号も含めて記録できるのですが、実際にそんなテープをつくったらリールが機械に入りきらないぐらい巨大化してしまうでしょうし、せいぜい一分とか記録できるだけになってしまいます。
なので、昔のカシコイ人がどうしたかというと、
テープじゃなくてヘッドを動かしたれ!
というやつ。
回転ヘッドの登場です。
ヘリカルスキャン方式とも言います。
テープを巻き付けた円形のドラムにヘッドを取り付けてドラムを回転させて、テープの磁性体との相対速度をガンあげして、高周波数帯まで記録しちゃおうというあるいみ無茶苦茶な方式です。
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テープ面に対して斜めにヘッドが動くのもポイント。
テープ自体はゆっくり動いて、ドラムが高速回転します。ドラム取り付けられたヘッドの当たる位置がテープに対して少しづつずれながら、らせん のように読み書きされるので、ヘリカルスキャンと言われていました。,,Ծ‸Ծ,,
めちゃくちゃ頭いい! でもって高度な技術の結晶です!
でもこれ、理屈通りちゃんと動作します。きっとものすごい技術革新と試行錯誤が繰り返されたのだとおもいます。当時のエンジニアさんすごいですね。
なお、上図のようにぐるっと一回転巻きつけるのは難しいので、家庭用ビデオはΩの形に巻き付けたりU型にするとか、これまたいろいろあったようです。
ビデオカセットをデッキにつっこむと、自動的にこのドラムヘッドのまわりにテープを巻き付ける(ローディング)という作業が行われます。機構的にけっこうおもしろい動作をするので、私なんかはそれを見るだけでご飯のお替わりができますw
ただこれ、面白がってがちゃがちゃやってるとよく誤動作してめきょきょ! ってテープ食べちゃうんですよね……あの音きくと一気に食欲失くしてしまいます><
そして SPY×FAMILY にもどると
そうした回転ヘッドを使ったビデオデッキでオープンリールのやつが家庭用にあったのか調べてみたら
こういうのがあったようです。回転ヘッドやキャプスタンのあたり、SPY×FAMILY のに似てますね~。東国(オスタニア)なので東芝製なんでしょうか(それはたぶん違う)
なお、回転ヘッドはテープの送りが止まってもヘッド自体は回転しつづけるので、ヘッドに巻き付いている部分の信号を読み取ることができる、という副作用的な機能があります。
なので、再生中にテープ送りをとめると
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時系列記録のアナログテープなのに一時停止しても映像を静止画で出し続けることができちゃうわけです。(乱れるけどね)
作中ではモジャさんが一時停止してましたが、回転ヘッドじゃなかったらこれは出来ない相談なわけですねー。
そのほかにもヘッドが一回転する間にテレビの走査線一画面(1フレーム)分を記録するとか、いろいろ技術的にスゴイことが山のように詰め込まれているアナログビデオの世界なのです。が、当然これらはいま知っていても何の意味もないロストテクノロジーですw
私も小説のネタで調べなかったらここまで突っ込んで知ることもなかったでしょうし、まったくもって知らなくてもいい技術なんですが、そんなマニアックな細かい点まで踏まえて描いている SPY×FAMILY ってばなかなかやるじゃーん! というお話なのでした。
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