『アグレッサーズ』《戦闘妖精・雪風》レビュー
『アグレッサーズ 《戦闘妖精・雪風》』
神林長平(著)
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①『戦闘妖精・雪風(改) 』、②『グッドラック』/③『アンブロークン アロー』と続いてきた《戦闘妖精・雪風》シリーズの最新巻、④『アグレッサーズ』です。
大ヒットした①『戦闘妖精・雪風』(以下タイトル略)はアニメにもなり、異星(フェアリィ星)の空を翔けるFAF(フェアリイ空軍)特殊戦ブーメラン戦隊の超音速戦闘機(戦術戦闘電子偵察機)の格好良さ、搭載される人工知性(コンピュータ知性・雪風)とパイロットの深井零少佐(後に昇進します)のバディっぷりは全SFファンの知る所となりました。
ちなみに①のタイトルに(改)とあるのは、②の『グッドラック』に合わせてすこし手直しされているからです。(改)なしでも十分面白く、単体作品として傑作なのですが、今つづけて読むのなら(改)ありのほうが辻褄があってよいとおもいます。
さて、今回私は新作の④を読むために③を読み直し、そのままぶっとおしで④に挑戦。④を読み終わって脱力。ふはー。っとしてから②をまた読み直しているところです。(これ読んだら久しぶりに①読もうかな?)
それぞれの巻の間に我々のリアルな実時間では何年も(へたしたら10年以上)経っているのですが、作品中ではそのまま時間がつながっていて、すぐ次の瞬間が次の巻になっているようなイメージです。まさに続き物。(前の巻で出撃して空飛んでる最中に巻が変わったりして、「え? まだ作戦中だったの?」なんてびっくりしたりもしますw)
うちのnoteではネタバレはしない方針なので、各お話の概要は公式(?)のnote
↑の冬木糸一氏による解説をご覧いただくとして、私の方は新作④『アグレッサーズ』を読んだうえでの概念的で感想的なレビューをば。(ネタバレはしていないけれど、読んでいないと意味がわからないかもしれませんごめんなさいw)
《戦闘妖精・雪風》シリーズは、①からして当時のSF界に与えたインパクトはすごかったと思うのです。が、②や③へと進み進めてみると、その時代時代の、さらに「先」へ向けた著者神林長平の視点や観点が良い意味でやはりものすごいと感じるのです。
①はたしかにSF(サイエンス・フィクション)でした。
機械と人間の関わり合い、一種の対立構造を、さらに別の軸をもつまったく未知の存在である異星体『ジャム』を登場させることによって鮮明にし、二元論ではなく三次元の対立と相互コミュニケーション&ディスコミュニケーションの物語として立ち上がらせている手腕はさすが。
そして、これらの構造的な奥行をさらにつきつめて先鋭化していき、②や③になるともう、空想科学小説(SF小説)というよりも空想哲学小説(フィロソフィー・フィクション)と呼ぶべきではないかという気さえしてきます。
でもって今回の④では、そのさらに先へ。より哲学的な内容の、深淵に落ち込んでいくかのような前半から、中・後半での思考的な新展開。今までの哲学を下敷きにして新境地を切り開き、それでいてしっかりとエンターテインメントなSFにこれまた昇華させている。原点回帰しつつ次元があがっている感じで解放感がとんでもないです。
(読んでいておもわず「あせんしょんっ!」って叫びましたね(意味不明)
(今回初登場の新キャラもいいかんじです! 人気出そうw))
とりあえず、かつて②や③で挫けてしまった方も、④の後半のエンターテインメント的なカッコいい思考バトル&空中戦(ほんとよ?w)を理解するための基礎教養として、頑張って再読してみることをおすすめします。
そして、④をラストまで読んで、哲学的に次元上昇する解放感をぜひ味わってみてください。少なくとも、現時点で最先端のSF新境地へ連れて行ってもらえることは間違いないと思います。