NEJM Clinical Problem-Solving: Taroの"別解"
日帰り出張の往復で拝読しましたが、大変面白かったです。
実は御恵投いただいていたにも関わらず自分でも予約購入していたので(僕的によくある話)医局には2冊あります。
NEJMのCPSは割と眼を通しているつもりですが、正直申告で半分以上のケースを記憶しておらず、フレッシュな気持ちでdiscussionを読むことができました。駄目だろそれじゃ(笑)
感染症の細々したことを結構忘れてるなぁと感じました。
以下、色々思ったこと。
> DRED-Cについて、次回作[おっと]でもう少し詳しく教えてほしい。File.007「DRED-Cの重要性」では、"E"の重要性に重きを置いておられるけれど、個人的に"C: コンテクスト"が気になる。
> p82 「突然発症」: 突然発症らしい病歴で真の突然発症ではないことがあり、その逆もあるとのことですが、緩徐発症の病歴が実は真の突然発症というパターンは相当珍しい気がします。気がするだけ。
> p96-Episode 3: "bitemporal wasting"を「両側頭部は消耗性の変化」と訳しておられますが、これは「両側頭筋の萎縮」ではないでしょうか。
「メジャーな低酸素の原因としては貧血の精査が必要」→ 貧血それ自体でSpO2 90を切る症例ってあまりなくて、他の臓器障害との合わせ技ならあるようにも思いますが、どうでしょ?
> p98-Episode 4: HCO3 28と上昇しており、AGは11なので、Ⅱ型呼吸不全・呼吸性アシドーシスの代謝性補正の可能性を疑い、せめて静脈血ガスを採取しておくべきだった、と僕ならコメントするように思いました。
> p104-Key point 「呼吸困難で咳がある場合は気道関連を考慮できるため、鑑別の絞り込みには有用」 たまに肺うっ血に至る前[もしくはごく軽度の肺うっ血]の心不全でPVCによる乾性咳嗽とDOEというパターンがあるように思います(ほぼ言いがかりw)
> p138: 「vancomycinはなぜ投与されたか不明だが」→ 原著画像では一部気腫性変化があるのみで空洞形成は判然としませんでしたが、喀血なのでCA-MRSAによる肺膿瘍も一応疑ったのかもしれません。それにしてもピプタゾバンコはセンスないですね。青木眞先生にしばかれてほしい。
> 何ヶ所かコメントで言及されている「サットン」(p54, 104)は、どちらかというと「オッカム」かなぁと思ったりしました。読み間違えてたらごめんなさい。
> typo: p48「節関リウマチ」→「関節リウマチ」
p97「アドバイアス」→「アドバイス」
学生の頃はNEJM-CPSやMGH case recordは「聳え立つ巨峰」(いや、ぶどうじゃなくて)でしたが、今はdiscussantやclinical courseに「ボーッと生きてんじゃねーよ」とか悪態をつきながら読むようになっているので、トシをとったと思うわけなんですよね。
File.006とか(志水先生が書いておられる通り)何故そんな間隔を空けてフォローされているのかわかりませんし、File.011は本邦なら多くのERで即日診断の端緒に至ったはず(病態の全容はわからないにせよ)と思います。えっ、入院翌日にエコー当てたの?ちゃんとattendingにプレゼンした?みたいな。File.010も、難治性UTIというフレームで捉えられたらno-brainでPCRと細胞診は出すよね、とか。
でも、本書の主眼はそういうところではなく、"志水流Diagnostic Excellence Teaching"のapplicationなので、僕は多くを学び、多くを復習しました。全ての内科医に強くおすすめする次第。
次回作待ってるぜ!