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元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜⑯

「ねぇ君の名前はなんと言うの?」
と俺が聞くと、
「私の名前? 私はねリリスっていう名前なんだけど貴方がつけてくれる? 私に名前をくれるかしら?」
と言ったので俺は彼女のことを考えながら考えてみた。
リリスか。確か意味は何にでも化けられるだとかそういう感じの意味ではなかっただろうか? だから俺は
「リリス。君は今日からリリィと名乗るといい」
と言うとその瞬間に 彼女の身体が光に包まれたかとお思うとそれはすぐに収まっていき 光が消える頃にはその姿が変わっていた。
見た目的にはあまり変わりはない。
違う点といえば先程までは黒色のドレス姿であったのが白色のワンピースに変わっている程度であった。
それから俺達はしばらくの間は
「一緒に遊ぼう」
と誘われて俺はリリィと遊び続けた。
鬼ごっこをしたり、かくれんばをした。
だけど俺は途中で飽きてしまったので、
リリィに
「ごめん。ちょっと外に行ってくる」
と言って家を出た。
外に出た俺はまずは近くに見える高い塔を目指すと階段を駆け上がり始めた。
何とか頂上までたどり着いた俺はそこから 遠くの景色を見渡した。
そこから見える光景は絶景であった。
美しい街並みにどこまでも続くような草原が広がっていて、 それらを眺めていると自然と心が癒されていくのを感じると俺は満足したので帰ることにする。
「あらっ。おかえり。
何をしてきたの?」
と彼女は問いかけてきた。
俺は何も言わずに首を横に振ると俺達が過ごしていた日々はとても充実していて楽しい毎日が続いていた。
しかし、そんな日常はある事件を境に崩壊してしまうことになる。
あれは俺と彼女が出会ってから数年の月日が流れた頃のことであった。
ある日突然、俺達の暮らしていた村に魔族の軍勢が迫ってきたという知らせを受けた俺は急いで村に戻ることにした。
だが、俺はそこで見てしまう。
無惨に変わり果てた村の姿が
そこにはあった。
建物は全て壊され、死体の山が築かれていて、 それでもなお、まだ殺戮を続けようとしている者達の姿が見える。
「うおおぉぉ!」
叫び声を上げて走り出した。
気がつくと、いつの間にか手に握られていた剣を振るっていた。
刃を振り下ろす度に鮮血の花びらが舞う。そして肉片となって飛び散っていく。
そして、遂に最後の一人を殺した。
終わった。
これで終わりにしよう。
後味の悪い夢を見た。
目覚めてみると全身汗まみれで、着流しが濡
れてしまっている。
50.
どんな内容の夢かは覚えていないが、おそらく悪夢だったことだけは間違いない。
だが、目が覚めてしまえば夢の残滓さえも消えていく。
だから、気にせず朝の支度を始めた。
朝食を終えた後は、いつも通り冒険者ギルドに向かう。
受付嬢に挨拶してから、
依頼ボードを確認する。
──やっぱり薬草採取の依頼しかないか。
これといって面白そうなものがない。
なので、昨日の続きをしてみるかと思い、
採集物を探しに出かけた。
森の奥へと進んで、木陰に隠れて【収納】から鍬を取り出す。
畑仕事に使うものだが、
使い勝手は悪くない。
早速作業に取り掛かる。
クワは土を掘り返すのに適している。
その分、力が必要だが。
ザクッ、ザクザックサク。
手応えが面白い。
根っこごと掘り起こす。
それをひたすら繰り返す。
地道な作業を黙々続ける。
何時間経っただろう。
1時間以上はやったはずだ。
やはりスキルのおかげで楽に終われた。
途中、変なものを見つけたが
放置しておいた。
見つけたのは角材くらいの大きさの
ある謎の生物の死体。
形は巨大な昆虫を想像すれば
いいかもしれない。
手足があるけど翅があって飛べそうだ。
さすがにこれを持ち歩くつもりはないが。
何かの素材になるかもしれないので
取っておく。
「そろそろいいか」
結構集まった。この辺りで切り上げよう。
もう昼時だし。
道具を仕舞ったあと、帰路につく。
「あっ」
忘れてたものを思い出して回収しておいてくれと頼まれたことを思い出す。
それは今朝見た奇妙な虫みたいな
生物の残骸だった。
どう処分したものか。
埋めるのが一番なのだろうとは
わかっているが。
なまじ知性がありそうな雰囲気が伝わってきてしまったせいもあって、
つい躊躇してしまった。
結局、何も考えず全部まとめて
焼却してしまった。
こういうのは考えるだけ無駄である。
帰り道を進み、街に戻ったあと宿に帰る。
女将さんが昼食を用意して待っていた。
夕食に比べて、
ややあっさりとしたメニューだ。
ご飯を食べ終わると、すぐにベッドに転がって眠ってしまう。
せっかくの休日なのに
勿体無いとも思わなかった。
次の日の朝、今日こそ街を出るための準備を進めておく。
荷車を引っ張るための馬と馬車を
手に入れる。
それと道中で食すための保存食を買い込む。
街の外へ出ようと門へ向かう。
すると、そこに妙に見知った顔を見つける。
それは以前、護衛の仕事を引き受けたことのある貴族の令嬢達。
俺の姿を見かけると、
向こうが先に反応を示す。
そして、
「あっ! ユウトさぁ~ん。ちょうど良かったですわぁ! このお2人があなたにお話したいことがあるらしいですの。お願いできます?」
相変わらずお喋り好きらしく、唐突に声をかけて来る。
貴族の娘というものは自分の利益になること以外は基本、したがらない人種が多い印象があるがこの人たちは例外かもしれない。
とりあえず、話の邪魔にならないように、
離れた所に移動する。
それを見て彼女たちが会話を再開した。
「良かったですわね。やっと彼に会えましたよ、お姉様。」
「うん、私すごく嬉しかったのよ。彼は私が命を救われた相手なんだもん。運命的よね?」
ふむ、これは一体どういう状況だ?
51.
「俺の聞き違いじゃなければ、あなた方が俺に用事があるということで宜しいでしょうか?」
こちらの質問に、少女のうちの一人がやや興奮気味に答えてくる。
どうやら正解のようだ。
「あのっ、失礼を承知で申し上げるのですけれど、貴殿のお力を貸していただくことは出来ないのですか? 私たちの護衛をして欲しいんです」
「……それは構わない、いやむしろ是非やらせて欲しい、と言いたいところだけど生憎俺の本業は冒険者でね、依頼を受けてる最中で、君たちだけにかまけている訳にはいかないんだ」
俺の申し出を聞いて、少し残念そうにしている彼女らの様子には少しばかり罪悪感を覚える。ただ俺には俺の事情があるので仕方がなかった。
「では、報酬さえ払わせてもらえれば、その、構いませんの?」
「俺の力が必要とあれば、もちろん協力しますよ」
彼女達を連れてきたのとは別の女の子が、口を挟んでくる。
「では、私たちは貴方のことを信頼しているので、代わりに他の人を信用することにしましょう。
その代わり、そちらの方と連絡が取れるようにして頂きたく思いまして」
その言葉を受けて、
俺は【交信魔法】を使う。
相手の指定は適当に俺の記憶に
残っている人間だ。
念じるだけで、記憶の中にある人物のイメージが浮かんでくる。
そして目の前の少女たちの姿を見ても特に驚かなかったということは、すでに会ったことが何度かあるということだろうか。
イメージの中で目の前に現れたのは、
若い男性であった。
背は高く体格の良い人だ。
年齢は20代後半あたりかな?
筋肉質で男前な感じの男性だ。
あまりイケメンとは言えないが、
悪い人では無さそうである。
俺が頭を下げると、彼もまた軽く一礼した。
どうやら俺のことは知っている様子で。
名前を名乗った上で自己紹介を始める。
まずは俺から。
名前と職業を伝える。
次に女性陣が順番に名乗っていく。
先程の提案については、引き受けても構わないとのことで。
さらに詳しい話は明日にでも話し合おうということになって。
それで一旦解散となった。
宿に戻って、晩飯を食べる。
明日の予定について考えていると、
珍しくエレナが話しかけてきた。
「ねぇ、今日はずっと上の空って感じね。
どうかしたの? あ、わかった。昼間、一緒にいた子たちに惚れちゃってたんでしょ。
それで悩んでるとか」
冗談めかした口調で、
彼女はそんなことを言ってきた。
「違うよ」
否定するが、信じて貰えてなさそうだ。
その証拠にニヤついた笑みを浮かべて、
こっちを見つめてきている。
まあいっか。別に隠すことでもないし。
それに、いずれは彼女には話すつもりでいた。
その前に、今のタイミングで伝えておこうと思った。
だから、そのままの気持ちを伝えた。
「俺は明日、この街を出て行こうと思う」
彼女の表情が一瞬凍りつく。
52.
それから、暫く沈黙が続いた後。
「理由……聞いてもいいかしら」
恐る恐るという感じで尋ねてくる。
なので俺は素直に答える。
「このままここに居続けても俺にとって良いことはないから」
それから俺が奴隷として売られた経緯を説明し始める。
今まで誰にも聞かれなかったので彼女に対しては一切語っていなかったが、この際だから全て明かすことにした。
途中で遮られるかと思って話をしていたのだが予想に反して最後まで静かに
耳を傾けてくれた。
そして全ての説明が終わると彼女が真剣に問いかけてくる。
「ねぇ。もし私のことが必要なら助けてくれる? 私はあなたの傍に居るべき? ねぇ、教えてほしい」
最後にそんな疑問を投げかけてきた。
だから俺は彼女の目をしっかりと見据えながらはっきりと伝えることにする。
必要な時に必ず駆けつけること。
たとえどんな困難な問題に直面していようが絶対に見捨てたりはしない。
自分の心の中に渦巻いている想いを包み隠しもせずに打ち明けていく。
そんな風に正直に向き合うことで少しでも彼女の心を動かせるのではないかと
考えたからだ。
やがて、ようやく理解してくれたのか。
彼女は優しい微笑と共に言葉を
返してくれる。
ならば、遠慮なく頼らせてもらおう。
ありがとう。
「本当にごめんなさい。これからは、もう少し自分を大切にするから……」
と彼女は言い残すと足早に部屋を
立ち去ってしまった。
引き止める間も無かった。
何というか気まずいし追いかける
気にもならない。
今はそっとしておいてあげればいいだろう。
「ユウトさん。おはようございます!」
朝起きたらリリスがいた。
最近、何故か毎日のようにこうして出迎えているような気がするのは気のせいでは
ないだろう。
何のためにやって来てくれているかと言えば、単なる暇潰しか世話焼きだろうけど。
「ところで例の件なんだけど考えてくれたかしら?」
またその話題かと思いつつも、俺は用意していた返答をする。
やっぱり、その仕事を受けるかどうかは保留にさせてもらうことにした。
今は旅の準備をしている状態で忙しくて。
何より、まだ正式に受けた仕事じゃないのに受けてしまうのは良くないかと
判断した結果だった。
そのことを告げたあと、
すぐに出かけることにした。
「もう行っちゃうのね。寂しくなるわ」
女将さんの見送りの言葉を聞きつつ、
厩舎に向かう。
今日は新しく仲間になった馬の様子を
見に来たのだ。
まだ体調が万全ではないらしく、休ませておきたいということだった。
ちなみに名前は【グレイ】に決めた。
牝馬で、色は黒。
美しい毛並みを持つ、
綺麗で大人しい性格の子だ。
背中に乗ってみると、
馬とは思えないほど乗り心地が良い。
移動速度を上昇させる効果もあるらしく、この子を連れて行くことに
決めて良かったと思える。
この子がいれば、いざと言う時に役立ってくれそうだ。
その後、市場で買い物をして荷物を詰め込んだあと街を出た。

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一ノ瀬 彩音
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