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芸術は儀式から生まれた【儀式論 第6章 芸術と儀式】

儀礼、儀式を推しまくってくるのが
この本なわけですが
この第6章も最初の一文から全開です。

芸術は儀式から生まれた。これは疑いのない事実である。

P205

断言していますね。

芸術は、儀式から生まれたんです。

 宗教は聖なるものに対する信念であり、大いなるものへの帰一の感情であるが、芸術も、また、このような呪術と儀礼を紀元にもつ。舞踊や演劇は、呪術的儀礼での狩りの所作の再現から生まれ、そこから原初期の音楽や絵画も生まれた。呪術的儀礼の興奮状態こそ、日常的生からの超越であり、芸術が生まれ出る場であった。今日芸術的行為とされている舞踊、演劇、音楽、絵画、彫刻、詩などの源流を尋ねていけば、原初の呪術と儀礼に至る。逆に言えば、今日の芸術にも、一種の呪術的性格が残っているのである。芸術の歴史は、人類の歴史とともに古い。    (小林道憲『芸術学事始め』)

P206

儀礼における狩りの所作の再現
→舞踊・演劇
→音楽・絵画

という流れで
芸術は生まれてきた
というわけです。

また、この芸術を生むエネルギーは
「呪術的儀礼の興奮状態」
からきているとも言っていて
少し、「宗教」的感覚とも
近いかな
、という気がします。

孔子と『音楽』

孔子は儒教を開き、今でもその教えは
日本で広く受け入れられています。

実はこの孔子が
音楽好きだった…という話

面白かったので紹介します。

論語にはこう書かれているそうです。

孔子は斉国にいるとき、聖天使とされた舜の音楽を聞いた。感動のあまり長い間、肉の味がわからなかった。そして孔子は言った。「思いもよらなかった。音楽にここまで熱中してしまうとは」と。

P213

何だか堅そうなイメージのある孔子が
音楽好き…というのは意外ですよね。

そしてこの「音楽」を
「礼」(道徳的な規範)と
組み合わせて、こんな話もしています。

「楽は打ちに動くものなり、礼は外に動くものなり」。
音楽は、人の心に作用するものだから内に動く。礼は、人の行動に節度を与えるものだから外に動く。
「礼は民心を節し、楽は民声を和す」。
礼は、人民の心に節度を与えて区切りをつけるものであり、音楽は、喜怒哀楽の情をやわらげて人民の声を調和していくものである。

P213

『音楽』は人の心に作用して
人びとを和に導く

『礼』は人の行動に作用して
人びとに節度を与える

こんな風に組み合わせた概念として
孔子は礼と音楽を捉えたんですね。

音楽というのが、
立場も身分も、もっと言えば
国境も超えて人と人をつなぐ力を
もっている
こと…というのは
古代中国の時代から既に知られ
活用もされていた…ということです。

もちろん、音楽だけでなく
他の芸術も含めて
似たような性質をもっています。

有名なロシアの小説家、トルストイも
「芸術は人々を合一させるという特性をもっている」
と述べています。

普段、社会生活を営んでいると
あまり芸術に触れる機会は
無いかもしれませんが
人と人とをつなぐ意味では
芸術というのが非常に大切だ

…ということを、この章は
教えてくれています。

まとめ

芸術の元は儀式である。

儀礼における狩りの所作の再現
→舞踊・演劇
→音楽・絵画


孔子は、音楽と礼を
組み合わせてこう言っていた

音楽は人の心に作用して
人びとを和に導く

礼は人の行動に作用して
人びとに節度を与える


芸術は人々を合一させる
という特性をもっている

のである。

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