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『聖地』とは神に繋がりやすい、強力な『Wi-Fiスポット』である【儀式論 第9章 空間と儀式】

前回の時間に引き続き
今度は「空間」と儀式についてです。

この章からは

・私たちは「穴」を通って異世界に行く
・聖地とは「神」に繋がるWi-Fiスポットである

という話をしていきます。

私たちは「穴」を通って異世界に行く

キリスト教、イスラム教、仏教…
様々な宗教で「聖人」とされる人の多くは
「聖なる空間」…この世を超越した空間

関わっています。

この「聖なる空間」において
人間は世界=神々や祖先たちの世界と
交流することができるからです。

この「聖なる空間」へ入るために
いわゆる「聖域」があるわけです。

この「聖なる空間」への入り口…
すなわち「異世界への入り口」は

様々な物語の中で「穴」として
表現されています。

例えば
「不思議の国のアリス」では
少女アリスがウサギの穴に入っていく
ウサギを追いかけて、穴に落ちます。

「となりのトトロ」では
少女メイがトトロが逃げ込んだ穴を見つけ
その中に落ちます

もっと古いところなら、
日本神話では
太陽の女神アマテラスが穴(洞窟)に
籠ってしまい、世界が暗黒の世界
になります。

ここでアマテラスが入った洞窟は
「天岩戸」であり、死の国であり
この世ではない別世界
です。


この「穴」「洞窟」が
異世界と繋がるイメージ
…というのは
「人間の誕生の記憶」と結びついている
…と、ある学者はいいます。

 自己の誕生の記憶も洞窟や穴と結びついている。どのような人間も皆母から生まれてくるが、その母の支給が一つの身体洞窟であり、そこに新たな生命が宿り、時満ちて産道という「穴」を通ってこの世に出てくる。その産道体験をどのような人も内蔵している。(鎌田東二『世阿弥』)

P323

人は皆、生まれる時に
母の産道という『穴』を通って
胎内から「この世」への
ある種の異世界への移動を
体験している
…というんですね。

言われてみればなるほど…
という感じです。

私たちは皆、
『穴』を通った異世界移動の経験者
だからこそ、物語にも
『穴』をモチーフにしたものが
よく表れてくる…というんですね。

中々面白い指摘だな、と思います。

聖地とは「神」に繋がるWi-Fiスポットである

とあるキリスト教の牧師が
「天国では、儀式も祈りも存在しない」
と語ったそうです。

これは、天国には神そのものが
いるわけですから、
わざわざ儀式や祈りをせずとも
神と繋がることができる
わけですね。

つまり、逆に言うと

天国から遠く離れた地上”だからこそ”
儀式や祈りが必要だ
 
ということなんです。

神の居る天国…というのが
計り知れないパワーの源

そこに地上から繋がるために
儀式や祈りがある
のではないか
と、著者は言うわけです。

Wi-Fiの電波にも
強いところと弱いところがあるように
神へ「接続」するときにも
繋がりやすい場所、繋がりにくい場所があります。

その「つながりやすい場所」
というのが、いわゆる「聖地」
なわけです。

神社、寺院、教会といった聖地は
神に繋がる強力なWi-Fiが設置された
スポットだ
ということですね。

そんなバカな…と思うかもしれません。
Googleマップで見れば
他と同じ、ただの空間でしかない…と
思う人も居るでしょう。
確かにその通りです。

しかし、「パワースポット」
という言葉が
浸透していることからもわかるように
他の場所とは違う「何か」がある、と
感じる人も少なくないわけです。

本書の中では、「聖地」
「パワースポット」の感覚について
芸術家の岡本太郎が沖縄の御嶽で
感じたことが紹介されています。

沖縄の御嶽で突き動かされた感動は全く異質だ。何度も言うように、なに一つ、もの、形としてこちらを圧してくるものはないのだ。清潔で、無条件である。だから逆にこちらから全霊をもって見えない世界によびかける。神聖感はひどく身近に、強烈だ。生きている実感、と同時にメタフィジックな感動である。静かな恍惚感として、それは肌にしみとおる

P345

一見なにもないのに
強烈な神聖感を感じ
感動、恍惚感をおぼえる
…と

こんなことを言われると
ホントに「何か」あるんじゃないかと
感じさせられてしまいますね。

私自身は、まだこの「パワースポット」の
神聖さを感じたことはないのですが
この章を読んで、ちょっと興味が沸きました。

きっと、実際に見た人にしか
分からない何かが
そこにはあるのでしょうね。

まとめ

・私たちは「穴」を通って異世界に行く

さまざまな物語の中で
「穴」を通って異世界に移動する
イメージが使われている

これは、人間が生まれる時
母の産道という穴を通して
この世という異世界に
移動した経験からきている…
と、考える学者もいる。

・聖地とは「神」に繋がるWi-Fiスポットである

儀式や祈りは、天から遥か遠くに離れた
地上から、神に繋がるための技術である

神に繋がる際、つながり「やすい」場所
というのが地球上には存在し
それが「聖地」である。

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