天使の記憶に残る悪魔

幼い天使と悪魔は友達だった。
いつも2人で、空の上も地の底も冒険していた。
天使は無性別なので、男である悪魔は女装することで中性となり(クロスドレッサー?)、天使と同じ世界を見ようとした。

2人は大人になった。天使という種族は感情を捨て、悪魔という種族は人間に寄り添う生き物となる。
悪魔は、社会に溶け込むために女装をやめた。
天使は、使命に忠実になった。

ある日、世界の存続のために働いていた悪魔は、いつかの天使と出会う。
そこは酒場だった。人間の欲で塗れていた。
天使とは、そういうものを粛清するために存在する。

悪魔は、「俺のこと覚えてるか?なあ、見逃してくれよ」と命乞いをした。
天使は、「そのような記憶は無い。私は、貴様のような種族を滅ぼすために来た」と返し、悪魔を消滅させた。

悪魔は、いずれ寿命を迎える。
悪魔は、子孫を残す。
悪魔の孫が、祖父の記憶を覗き、天使の行いを嘆いていた。

悪魔は、世界の様々な記憶を閲覧出来る。
もちろん天使のそれも。
しかし、天使は記憶を1つしか残せない。
天使には寿命がない。
代わりに、使命を果たすと完全に消滅する。
そして、たった一つの記憶を世界に残すことが出来る。

悪魔の孫は、祖父を殺した天使の記憶を見つけた。
それは、「天使と永遠に仲良くできないなんて、大人たちが言ってる事さ。俺たちはずっと友達だ」と笑う悪魔を見つめていたものだった。

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