春気分
ある日電車に乗るとスカートの短い女と坊主男が一緒にいた。女は景色を見て黄昏て、男はスマホを見ていた。
やがて男も目線を上げるとポケットに手をいれて半分女を垣間見しつつ、窓の外をみた。男と女は一歩の距離。窓の外に何かを見つけたのか楽しそうに指を差し、話す。
やがて日が落ちて、あたりが暗くなると女は窓ガラスで前髪を直す。男の足は女の方を向いている。が、女の足は男の方を向いていない。そういうことか。と思うと目線を横にやる。すると、眼鏡猿男と背の低い肌の白い女が話していた。
春は過ぎて梅雨が来たというのに気持ちはまだ春気分なのだろうか。「草が萌えれば春となる。紙が燃えれば灰となる。君に萌えれば恋となる。」というのは世の中の道理である。