北海道日記(17)

(前回までのあらすじ)公演が終了しました。

打ち上げに誘っていただけたので、ほっとしました。お店に行く時にも雪は降っていて、道はけっこう大変なことになっていました。初めて除雪車を見ました。除雪車とセットで、ダンプカーが数台、路肩に止まっていました。雪をダンプカーに積んで、山とかに捨てに行くのだそうです。一緒に歩いていた学生さんが教えてくれました。前田さんが「雪祭りの時とかは、雪像に利用したりしないの?」と聞くと、雪像には、溶けにくく、固まりやすい成分が入っている雪を使うので、除雪した雪を再利用はしないのだそうです。なんだか本末転倒だなあと思いました。

居酒屋に行き、打ち上がりました。20人以上で行ったので、団体席のような所に案内されたのですが、隣の団体席では体育会系の会社の飲み会が行われていたようで、声が大きく、「うぇーい。」というようなかけ声もしばしば聞こえてきて、ほとんど会話が成立しませんでした。「え?」と「すいません、聞こえません。」を、いっぱい言ったと思います。なのでほとんど覚えていません。隣の「うぇーい。」に合わせて、エレキさんや小山さんや櫻井さんも「うぇーい。」と言っていたこと、けっこう大きめの器にケチャップが大量に盛られて出てきたこと、深浦さんが、登場シーンが少ないのに弁当はたくさん食べる、登場シーンが少ないのに台詞を噛んだ、そして弁当をたくさん食べる、といじられていたことなど、断片的に覚えています。

体育会系の飲み会の方が先に終了したので、それからはゆったり話すことができました。僕はその時、記録映像を撮影していたMさんの隣にいたので、あれこれしゃべりました。Mさんはグラフィックデザインの仕事を主にやっている方でした。撮影しながら公演も楽しんでいただけたようで、細かく感想を言ってくれました。僕も印刷関係の仕事をしていて、まあ似た業種なのですが、Mさんの感想を聞き、質問に答えているうちに、自分の今の仕事は、作劇にも影響をしているのだな、と思いました。チラシデータの作成、いわゆるレイアウト作業というものを行ったりするのですが、修正の指示をもらうと、一度組み上げた全体を、部分的に別のものに差し替えて、再度全体の体裁を整える、という作業を行います。仕事なので、締め切りが迫ると、好むと好まざるとに関わらず、終わるまで作業します。そういうことを、ほぼ毎日繰り返しています。戯曲の体裁を整えたり、途中の流れを変更したりする際にも、同じような考え方をしているなと思ったのです。「乗組員」を見た時、島田さんの呼吸のようなものが感じられたように、そういう生活の一旦は、作品に反映されるのだなと思いました。

居酒屋が閉店時間になったので、別の居酒屋に移動し、二次会をしました。3分の2くらいの人数が残っていました。なんとなく、アルコールを飲みたい人達と、もういい人達で分かれました。僕は弱いので、もういい方に行きました。前田さん、島田さん、深浦さん、生水さん、柴田さん、僕、という面子で固まり、ジュースとスイーツを注文し、だらだらとしゃべりました。ファミレスみたいでした。
好きなジブリ作品の話になりました。完全にファミレスです。僕は「千と千尋の神隠し」のラストで、ハクの本当の名前はコハク川だと告げた後、空を舞いながら流す千尋の涙が、感覚的に理解できず、何回見てもあそこで置いてけぼりにされるという話を披露し、誰からの共感も得られませんでした。前田さんが「幼少期のトラウマじゃないですか?」と言いました。違うと思います。
それから好きな本の話もしました。北海道で「やし酒飲み」の話をするとは思いませんでした。好きなんです、やし酒飲み。みんなの読んだ面白い本はチェックして、帰ってから読もうと思いました。好きな本を他人と共有したのは、今回がたぶん初めてです。

小島さんが僕と島田さんの写真を撮り、ツイッターにアップしてくれていました。俺、こんな顔で笑えるんだな、と驚きました。地元じゃあまずしない笑顔でした。ピースもしてました。北九州に帰ってから見たので、気持ち悪いと思いました。でもその笑顔が、僕のこの3日間を物語っているなあと思ったのでした。

3時頃、お開きになりました。みんなにたくさん、「ありがとうございました。」と言い、別れました。

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