北海道日記(16)

(前回までのあらすじ)昼の公演を見ました。

楽屋に戻りました。今日もお弁当を用意していただいたので、ありがたくいただきました。夜、おそらく打ち上げがあって誘っていただけると思うのですが、誘われない可能性も考慮して、しっかり食べました。学生さんたちも楽屋に休憩にきましたが、昨日同様、人見知りを発揮したので全くしゃべりませんでした。窓から雪の影がちらついているのが見え、前田さんが「明日、飛行機飛ぶかなあ」と心配していました。前田さんは前回訪れた時、雪の影響で帰るのが1日遅れたそうです。僕も明日飛行機が飛ばないと、次の日は朝から仕事なので困るなあと思いました。

休憩していると、チーフマネージャーのIさんが来て、「夜公演のアフタートーク、前田さんと藤原さんには出ていただくのですが、俳優のみなさんにも出ていただきますか?」と聞かれました。僕は、「どちらでもかまいませんが、自分が役者として出ている時に、アフタートークに呼ばれるのはあまり好きではありませんでした。」と答えて、楽屋内を苦笑で満たしました。出演作品で、何回かアフタートークに出させてもらったことがあるのですが、どういう顔をしていたらいいのかわからないし、大したコメントができるわけでもないので、居心地が悪いのです。Iさんが「では、前田さんと藤原さんのお二人で行うことにしましょう。」と言い、楽屋を去りました。しまった、と思いました。前田さんと二人きりでしゃべるより、人数が多い方が話が弾むに決まってるじゃないか、という当たり前のことに今さら気付きました。でも後の祭りです。あれだけ俳優はアフタートークに出るのが嫌な生き物だと熱弁した上に(個人差があります)、すでに楽屋を去ったIさんを追いかけて「やっぱり俳優も含めて、なんなら乗組員のみなさんも一緒にやりましょう!」と言う勇気なんて僕にはありません。前田さんがたくさんしゃべってくれると信じて、僕はちょこちょこ合いの手をはさむという作戦を自分の頭の中で立てて、二人でアフタートークをする腹をくくりました。

「悪い天気」の公演が始まりました。千秋楽です。俳優のみなさんはもう、ちょっと台詞を覚えはじめている様子でした。生水さん、序盤ほとんど台本を見てませんでした。たしかにこのリーディングでは、覚えてる方がやりやすいシーンが多いな、と思いました。昨日の公演でも傘がこわれたのですが、今日もこわれました。無茶な使い方を書いたからです。申し訳ないなあと思いました。昼の公演中も、裏で稽古されていたようで、テンポも昨日より安定していました。全体のテンポを作ってくれているのは、たぶん小林エレキさんでした。もちろんエレキさん自身の資質による部分が多分にありますが、エレキさんに演じてもらった役が、そういうポジションの役なのだなと、見ていて気付きました。書いている時にはまったく意識していないことでした。途中、江田さんの役が測量するシーンがあるのですが、台本にはざっくりとした指示しか書いていないのに、ずいぶんプロっぽい測量をしていただきました。客席がわいて、うれしかったです。何度でも言いますが、短い稽古期間でここまでのものを作っていただいて、感謝の言葉もありません。僕はあいかわらず緊張していました。それは作品をお客さんに見てもらっていること自体に緊張しているのか、アフタートークがあるから緊張しているのか、わかりませんでした。

アフタートークが始まりました。のっけから前田さんが「藤原さん、『いま、会いにゆきます』みたいな作品を書いてください。」と言いました。『いま、会いにゆきます』を見たことがなかったので、「どんなお話ですか?」と聞きました。前田さんは「病気の人がいて、今から会いに行くんだと思います。」と言いました。それは、俺もタイトルでわかる、と思いました。「今度、見てみます。」と答えました(まだ見てません)。
次に前田さんが「『セカチュー』は見たことがありますか?」と言いました。セカチューも見たことがなかったけれど、ウィキペディアを見たことはあったので、「ウィキペディアで見たので、あらすじは知っています。」と答えました。「じゃあセカチュー書いてください。藤原さんが書いたセカチューなら、僕、見に行きます。」と言いました。よくわかりませんでしたが、前田さんが見に来てくれるんなら、と思い「はい。」と答えました。だから僕の次回作は、セカチューです(未定です)。前田さんがおっしゃっていたのは、「しっかりとしたストーリーのある作品を書いてみろ。」ということなんだろうと、あとから気付きました。

作品についても、突っ込んで聞かれました。「乗組員」と違い、登場人物がどういう心情でこうなったのか、などはあまり重要な作品ではないので、どういうイメージでこのシーンを書いたのか、とか、自分で演出する時、ここはどうするつもりだったのか、といった話をしました。途中、カニが登場するシーンがあるのですが、前田さんから「カニ、用意しないといけないじゃありませんか。カニだってお金かかるんだから、そういうの考えて書いてくださいよ。」と怒られました。「すみません。」と答えました。「本番を4回行うとして、絶対カニが4匹必要でしょ?カニはあとでおいしくいただかないといけないから、カニ刺しに、焼いたカニに、カニ鍋に、あとカニごはんも食べないといけないじゃありませんか。」と怒られました。「あ、でもゲネもあるから、最低5匹いりますね。」と僕が言うと、「そうですよ。一体カニにいくら予算をさくつもりですか。ちょっと考えてくださいよ。」と怒られました。カニ、お好きなんだな、と思いました。別に本物のカニが登場する必要はないからです。
後半はなぜかカーリングの話と、店員さんが語尾に「ぽんぽこぽん」って言うお好み焼き屋さんの話をして、アフタートークが終わりました。30分くらい話していました。

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