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オタクは「探偵」と「美少女」に弱い『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』は両方の性質を併せ持つ

ある日突然、あなたの目の前に名探偵が現れたらどうしますか?
それも……とびっきり神秘的で
とびっきり素直で
とびっきり愛らしくて
とびっきりの霊媒士(?)。
しかも、そのうえ……
彼女は、とびっきり!
美少女なんです……

というわけで『medium 霊媒探偵城塚翡翠』というミステリー小説を読んだのですが、かなり良かったです。
作者の相沢沙呼先生はこの作品でミステリの賞5冠を獲得しているらしく、2019年のミステリーの賞を総ナメしています。
でも気持ちは非常に分かる。おそらく皆さん、城塚翡翠ちゃんに脳を破壊されたんだと思います。

●探偵ってカッコいいですよね……

突然ですが皆さん、探偵って好きですか?
ただでさえカッコいい概念である『探偵』。
わずかな証拠から事象全てを見通す洞察力と推理力。
圧倒的な知識量と、時に己の肉体を用いて犯人を追い詰める行動力と正義の心。
僕はそもそも小説をあまり読まないのでミステリー小説に詳しい訳ではありませんが、例えばシャーロックホームズやエルキュールポワロ、金田一耕助や明智小五郎は魅力的でカッコいい探偵ですよね。
そう、我々が本質的に推理小説に求めている物って複雑怪奇なトリックや犯人の悲しい生い立ちではなく、我々が思い至らなかった犯人やトリックを、明快かつ論理的な推理で、時にハッタリを交えながら滔々と説明をし、気持ち良いほどズバっと解決する名探偵じゃないですか。
この『medium 霊媒探偵城塚翡翠』にはその要素が詰まっています。

●語りたいけど語れない、城塚翡翠という探偵

あらすじ
死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――

http://kodanshabunko.com/medium/

さて、2019年発表の作品なので今更内容について触れても仕方ないですし、触れようにも「全てが、伏線。」のキャッチコピーの通り、内容に触れると全てがネタバレに直結してしまう、非常にデリケートな作品です。
それでも触れたくなってしまうのは、やはりどうしようもなく城塚翡翠の魅力にハマってしまうからでしょう。

前半は城塚翡翠の霊能力と推理作家の香月史郎の推理、二人のタッグで事件を解決していきます。
城塚翡翠は人形のように完璧に整った超絶美少女。
二十歳前後で瞳は碧玉色、しかも霊媒の能力によって現場を見ただけで犯人が分かってしまうミステリー作家泣かせのチート能力者。
ビジュアルも強けりゃ能力も強すぎる。
しかしながら、霊媒の能力によって犯人は分かってしまうものの、何故その人物が犯人なのかを論理立てて説明することはできません。
そこで相棒となるミステリー作家の香月史郎が理詰めで犯人を詰めていきます。
証拠を集めて犯人に辿り着くという従来のミステリーの構造ではなく、犯人が分かっている状態で証拠を積みあげていくという構造は、倒錯していて新鮮味がありますね。
城塚翡翠のあまりにあざといギャルゲーのような言動と、それにいちいちドキドキしてる香月先生のデレデレした態度と過剰なイチャイチャも、まぁ良しとしてやるかという気持ちになります。
しかし最終章、世間を賑わす最凶の連続殺人鬼との対決によって、城塚翡翠の真の能力が発露されます。
その衝撃的な内容にページをめくる手が止まらなくなり、あっという間に読み切ってしまいました。
最後まで作者の掌の上で踊らされてしまったという快楽。
この気持ちよさは読んでみないと味わえないですね。

二作目のinvertからは倒叙形式という、特殊な構成を採用しているそうです。犯人の視点で物語が動くのでしょうか……犯人たちの事件簿かな?
まだ読んでいないので、早く……早く読んで僕といっしょに気持ちよくなろうや……(闇タマモクロス)

ちなみにアフタヌーンで清原紘先生のコミカライズも連載されているようです。あの「十角館の殺人」のコミカライズも務めた清原紘先生の美麗なタッチで城塚翡翠が見れるなんて……最高じゃあないっすか……


非常に余談ですが、相沢先生は僕が大好きな漫画「私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い! 」の小説アンソロジーに夏帆のSSを寄稿しております。
夏帆というサブキャラクターに焦点を当て、黒木智子に蠱惑された加藤明日香へのデカい感情を緻密に描いた激エモ青春SSなので、興味がある方は是非読んでみてください……


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