少女少年Ⅶ〜CHIAKI〜が狂わせたセカイ
人がオタクへ堕ちる時、それはいつだって突然だ。
皆さんも脳みそをオタク細胞に塗り替えられた原初体験を思い出して欲しい。僕の友人のN君はCCさくらでパワーのカードで公園の滑り台を担ぐさくらに初めての性的興奮を覚え、K君はハルヒの消失で長門がキョンの制服の裾を摘んだ事に脳みそを破壊され、I君は.hackのノベル版でやけにミストラルを推してくるせいで中学生の癖に人妻好きになった。まぁ上記の3人は全て僕なんだが。
とにかく人にはそれぞれ多様な歴史がある。あるはずなんだ。
僕の原初体験は何だろうと考えると、一つの作品に思い当たった。それこそが「少女少年Ⅶ〜CHIAKI〜」である。
皆さんはやぶうち優先生の少女少年シリーズという漫画をご存知だろうか?この漫画は1997年から2005年にかけて、小学生向け漫画雑誌である小学4〜6年生において連載されていた。ちゃお系の少女漫画のような可愛らしい絵柄で年度毎に新しいストーリーが始まるのが特徴だが、最大の特徴と言えばどの作品も「女装した男子小学生が主人公」ということである。
「女装した男子小学生が主人公」の漫画が、「小学四年生」という小学生四年生しか読まない雑誌に掲載されていたのである。冷静に考えてヤバくないか……?
少女少年Ⅶの主人公、十河太一は男の子にして女の子顔負けの可愛らしいアニメ声の持ち主。演劇部の演目である白雪姫でヒロインに抜擢され女装することになったが、それを見ていた芸能関係のプロデューサーに声優としてスカウトされる。芸名は万丈千秋。
千秋(太一)は声優としてデビューして吹き替え、ラジオパーソナリティ、写真集など、今で言うところのアイドル声優のような多角的な活動を行いキャリアを積んでいく。プライベートでも親友の京極瞬やクラスの美少女である阿僧百香、太一が幼少の頃の初恋の相手であり、芸能を志すきっかけとなった物語の主軸となる少女、毛利零那などが絡んだ複雑な三角関係が展開され、恋愛漫画としても読み応えがある内容となっている。
太一の憧れであり初恋の人である毛利零那はとある事情で芸能活動を停止しており、それを知った太一は芸能の世界を志すキッカケである彼女を救うために自身の芸能活動を通して東奔西走するのであった。
途中モヤっとすることもあるものの、自身のややこしい恋愛関係にケリを付けつつ毛利零那を救い出す千秋(太一)。
物語のクライマックスは、太一が憧れの人を追い求めたように、千秋を憧れの人として追い求めた人物が太一の前に現れるのであった……ラスト完璧すぎるだろ。
特に太一が声変わりの時期に突入し自身の活動の終わりを悟るシーンは、コンプレックスを利用して好きな人に近付いた罪悪感とコンプレックスを武器として好きな人を救う事ができたという複雑な感情をよく表していて、あまりにも儚い男子小学生の女装と相まってとんでもないエモーショナル。
最後の一撃は切ないように、男子小学生の女装は儚いのである。
当時、コロコロコミックもボンボンも読んでおらず健全な精神性を持っていた僕は、親から買い与えられていた小学○年生の漫画雑誌しか読んでいなかったのだが、そんなピュア学生の僕にとって、とにかくこの少女少年という作品がもたらしたインパクトたるや想像に難くないと思う。刺激的な三角関係も含めて異常な可愛さの女装男子小学生が、10歳の僕の脳細胞を徹底的に破壊し、オタク細胞を注入していったのだ。
今回は最も思い入れのあるⅦを紹介したが、少女少年はなんとⅠ〜Ⅶまで7作品あり、番外編のようなGOGOICHIGOやドーリィカノンも含めるとかなりの作品数がある。作品によってシリアス度が違ったり、コメディ感の強い物もあるが、共通しているのは女装少年が登場することである。
もちろん内容は小学生向きの漫画のため、小学生向きという前提で、女装少年に興味のある方は是非読んでみてください。
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