君達の激情、もっと発露してくれよ。少女歌劇レヴュースタァライトTV版の感想
去年あたりに劇場版が大変評判良く、僕のTLでもかなり持て囃されていたアニメ「少女歌劇レヴュースタァライト」ですが、劇場版がアマプラで配信されたようです。
つきましては無事トレンドに乗り遅れた哀れなオタクが、劇場版を観る前にTV放映版と総集編映画(ロンドロンドロンド)を見ようと思い立ち、一気に視聴しました。
割と独特な設定
歌劇少女レヴュースタァライトは、舞台芸術を学ぶ名門学校の俳優学科に通う少女達を描いた物語。
その中でも一握りのきらめきを持つ学生が、夜な夜な開催される異空間(精神世界?)のオーディション「レヴュー」に参加する。
その内容は歌いながら物騒な得物を振り回すというシンフォギアでしか見たことない独特な剣戟を行い、相手の上掛けのボタンを落とした方が勝つというウテナみたいなシステム。
しかもそのオーディションで勝ち抜くと、時空さえ歪められるめちゃくちゃな特典が与えられる。
その代わり二位以下はきらめきと呼ばれる舞台への情熱を奪われてしまう。
なんそれ!(赤井俊之:ZAZYの本名)
勝った時の得られる特典がデカすぎんだろうがよ。
キリン、お前はキュゥべえか。
少女歌劇って言うもんだから、宝塚音楽学校をモデルにした斉木久美子先生の「かげきしょうじょ!!」のようなスポ根舞台演劇モノや、色々あって打ち切りになってしまったゴリゴリの天才型演劇バトル(?)漫画「アクタージュ」のようなモノを想像してしまっていた。
しかしながら本質はクローズドサークル内のゴリゴリ精神世界バトル。
ありとあらゆる演出でイクニフォロワー臭がすごいですが、実際監督の方は幾原邦彦監督の直弟子のようなお人らしい。
無味無臭な少女達
メインキャラクター9名。
主人公の愛城華恋含めて、大義がない。
愛城華恋、途中から「ひかりちゃんと一緒にスタァになる!」しか言わないロボットと化す。
どうも舞台少女となったのもひかりちゃんこと神楽ひかりが起点なので、舞台と華恋を繋ぐものは神楽ひかりのようだ。まぁ、もちろん舞台にも並々ならぬ思いがあるようだが、神楽ひかりが現れ、幼少の頃の約束を再認識するまではそんなに成績が良さそうでもなく、遅刻の常習犯であったことから、元々そこまでやる気無かったのでは?と正直訝しんでしまう。
目的が「ひかりちゃんと一緒にスタァになること」のため、通常このような舞台演劇モノで動機付けに使われがちな「観客を楽しませ、感動させること」や「演じるキャラクターの魅力を最大限に引き出すこと」など、スタァの先にある筈の事柄に関してはほぼ言及されない。
視野狭窄気味なエゴイスティックさを感じてしまう。
幼少の頃に約束したのは分かるんだが、じゃあお前は何のために「ひかりちゃんと一緒にスタァになる」んだ?
他の登場人物達もキャラクター自体は立っているし愛城華恋よりは舞台に対する情熱を感じるものの、もう少し動機付けと関係性の深掘りが欲しいところ。
個人的には露崎まひるの嫉妬のレヴューは華恋に依存することで補っていた自信の無い自己からの脱却を端的に表現していて良かった。
また天堂真矢と西條クロディーヌの強キャラコンビの関係性は僕の好みドンピシャなので、10話で華恋ひかりコンビと天堂西条コンビでのレヴューでStar Divineとかいう名曲と共にバトっていたのは素直に興奮した。西條が「天堂は負けていない!」と叫ぶところなど、まさしく僕が見たかった「少女と少女の関係性」であり、思わず天を仰ぎこの瞬間のためにこのアニメを見ていたんだなと震えた。
しかし、強者は多くを語らず(動機がなく)とも戦うことに説得力が増すから得である。
さて、ここまで意図的に触れてこなかった化物。
「大場なな」だが……
もうこの人だけ動機が異次元な狂人なので、正直あまり触れたくない。けど、ロンドロンドロンドまで見れば見るほど本質的な主人公がこの人だと理解(わからせて)くる上に、デカい、強い、二刀流という男の子が好きな三要素が詰まっていて魅力がありすぎるため無条件で好きになってしまう。
外部要因で輪廻を外れた結果、否応なしに内省してしまったのが少々残念だが、僕の観点では優しさに溢れるエゴい狂人というあたりで着地したので絶妙なバランスだと思う。
ばななちゃんには限界効用逓減の法則という言葉を教えてあげたい。
大場ななという異常者はともかく、全体的に彼女達がレヴューに臨む動機が弱いというのが気になってしまう。
さらに言うと関係性も薄い。だいたい2人1組のカップルになっているが、なっているだけ感がすごい。
終わり方について
考察とかを読んでないので現時点では終盤の展開をイマイチよく理解していないが、ざっと流れとしては、スタァライトという演劇はめちゃくちゃバッドエンドで、それになぞらえたレヴューもバッドエンドな感じ。
神楽ひかりはオーディションを勝ち抜き、異空間で無限演劇を一人で続けることで、他の8人のきらめきを奪うことを防いだ。
愛城華恋は無限演劇に飛び入りすることで演劇を止め、悲劇スタァライトを再生産(再解釈)し、永遠の別れを運命の再会へと変えた。
華恋とひかりはお互い相手をスタァとすることできらめきを補完し、2人揃って現世に帰還。
マジで適当ですが、なんかそんな感じだったように思う。間違っていたらごめんなさい。
しかし、きらめきシステムが分からなさすぎる。
ノリと勢いのアンツィオ式でスルーしていいのかもしれないけど、そこまでの積み重ねが薄いからノリと勢いでは押し切れず、どういうことなの……?って首を傾げたまま最後までいってしまった。
でもひかりちゃんが帰ってきたのは素直に良かったよ。あんなクローズドな精神世界バトルに囚われて存在が消えてしまったら悲しすぎる。
劇場版を見るにあたり
僕が言いたいのはただ一つ、もっと激情を発露してくれ。
殺意を、憎悪を、嫉妬を。
羨望を、憧憬を、愛情を。
孤独を、恐怖を、後悔を、無念を、苦痛を。
幸福を、恍惚を、歓喜を、感嘆を、希望を。
そういうモノがドロドロした群像劇、少女と少女の関係性を見せてくれ。
多分、劇場版でかなりそういった部分が表現されている気がする。
ロンドロンドロンドの終わり方は、明らかに不穏で、舞台少女の死を直接的に表現をしていた。
もちろん物理的に死ぬとは思わないので、それに値する強烈な映像体験を期待しています。
なんか改めるとかなり辛辣な感想になりましたが、なんだかんだで楽しく見れたので、また時間のある時に劇場版を観たいと思います。