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【MBA - 論文要約】中期経営計画と業績の関係

実効性のある中期経営計画の策定方法の検証、 及び中期経営計画の実効性の検証
主査:平野 正雄 教授 副査:内田 和成名誉教授、久保 克行教授

仮説に対する検証結果の詳細

本論文では、中期経営計画の実効性と策定の是非について検証するために、7つの仮説を立て、それぞれについて詳細な分析を行いました。ここでは、それぞれの仮説に対する検証結果を詳しく見ていきましょう。

仮説1: 中期経営計画の策定において、主導部門が存在すると、実効性のある計画となる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画策定の主導部門の有無を質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。

  • 結果: 主導部門の有無はROAに有意な影響を与えないという結果になりました。つまり、特定の部門が主導して策定した計画であっても、そうでなくても、業績への影響は変わらないということです。

  • 考察: 中期経営計画の実効性は、主導部門の有無よりも、計画の内容や策定プロセス、そして全社的な協力体制に依存する可能性が高いと考えられます。

仮説2: 中期経営計画の策定において、社内向けメッセージングを目的に策定されるほど、実効性のある計画となる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画策定の目的を質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。具体的には、「投資家向け」「社内向け」「両方」といった選択肢から回答を選択してもらい、それぞれの目的がROAに与える影響を分析しました。

  • 結果: 社内向けメッセージングを目的とした計画は、ROAに対して正の相関があることがわかりました。つまり、従業員のモチベーション向上や組織の方向性統一を目的とした計画ほど、高いROA(総資産利益率) を得られる可能性が高いということです。

  • 考察: 中期経営計画を、従業員にビジョンや戦略を共有し、一体感を醸成するためのツールとして活用することで、計画の実効性が高まり、業績向上に繋がる可能性が示唆されました。

仮説3: 中期経営計画の策定が頻繁になされるほど、実効性のある計画となる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画の策定頻度を質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。

  • 結果: 策定頻度とROAとの間には有意な関係性は見られませんでした。

  • 考察: 頻繁に計画を策定することが、必ずしも計画の実効性向上に繋がるとは限らないと考えられます。むしろ、策定頻度よりも、計画の内容や策定プロセス、そして計画の遂行度が重要である可能性が高いです。

仮説4: 中期経営計画のアップデートが頻繁になされるほど、実効性のある計画となる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画の更新頻度を質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。

  • 結果: 更新頻度とROAとの間には有意な関係性は見られませんでした。

  • 考察: 頻繁に計画を更新することが、必ずしも計画の実効性向上に繋がるとは限らないと考えられます。外部環境の変化に対応するために、定期的な見直しは必要ですが、更新頻度よりも、更新の内容やその後の対応が重要である可能性が高いです。

仮説5: 中期経営計画がローリング方式、もしくは前進ローリング方式で更新される場合は、実効性のある計画となる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画の更新方法を質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。具体的には、「ローリング方式」「前進ローリング方式」「その他」といった選択肢から回答を選択してもらい、それぞれの更新方法がROAに与える影響を分析しました。

  • 結果: 更新方法とROAとの間には有意な関係性は見られませんでした。

  • 考察: ローリング方式や前進ローリング方式といった更新方法を採用することが、必ずしも計画の実効性向上に繋がるとは限らないと考えられます。更新方法よりも、計画の内容や策定プロセス、そして計画の遂行度が重要である可能性が高いです。

仮説6: 中期経営計画の位置付け次第で、計画の実効性に変化が生じる。

  • 検証方法: アンケート調査において、中期経営計画の位置付けを質問し、その回答とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。具体的には、「全社的」「部門別」「その他」といった選択肢から回答を選択してもらい、それぞれの中期経営計画の位置付けがROAに与える影響を分析しました。

  • 結果: 中期経営計画の位置付けとROAとの間には有意な関係性は見られませんでした。

  • 考察: 中期経営計画の位置付けよりも、計画の内容や策定プロセス、そして計画の遂行度が、計画の実効性に影響を与える可能性が高いと考えられます。

仮説7: 中期経営計画を策定しない方が、業績に対しポジティブに影響する。

  • 検証方法: Topix Core30、Topix Large70、Topix Mid400の構成企業約500社を対象に、中期経営計画の策定有無を調査し、その結果とROAとの関係性を重回帰分析を用いて分析しました。

  • 結果: 中期経営計画を策定している企業は、ROAが低いという結果になりました。

  • 考察: 中期経営計画を策定すること自体が、必ずしも業績向上に繋がるとは限らないことが示唆されました。これは、計画策定に時間とコストがかかり、経営の柔軟性を損なう可能性があるためと考えられます。しかし、社内メッセージングを目的とした計画はROAに正の相関があるという結果も得られているため、実効性のある計画を策定できる体制が整っている場合は、計画策定が業績にプラスの影響を与える可能性も考えられます。

これらの検証結果から、中期経営計画は、社内メッセージングを重視し、実効性のある計画策定体制を構築することで、企業の成長を促進する効果を発揮すると考えられます。

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