鳥かごの鍵 6
私達はお互いの近況を話す。
私は同僚の浮気の話しはしなかった。
なぜかその話しはしたくなかった。
彼は相変わらず会社の愚痴を言っている。
お互い本心を隠している。
そんな感じがした。
時計を見るともう9時になっていた、
「もう帰るの面倒だから、今日は泊まってもいい?」
と彼が聞いて来た。
「えっ?あっ!いいよ。」
私は少し返事に困った、
夜は「月」と話そうと思っていたからだ。
「なんだよ俺が止まったら迷惑?」
「そんなことないよ!お風呂入ったら?」
「うん、そうする。」
ほろ酔いの彼は泊まって行くことになった、
今夜は「月」と話せないのか…と少し残念に思ってしまった。
彼がお風呂に入っている間にアプリの通知をOFFにして、
メールの確認をした。
「月」からのメールは来ていない。
食器を洗い部屋を片付ける。
彼の着替えをソファに出しておいた。
そして彼がお風呂から出て来たので、
私も入ることにした、
お風呂場にスマホを持って来た。
これじゃ浮気してる人みたい!と思いながら、
アプリを開くと、
「月」からメールが来ていた。
「今夜は月が見えないね。
今何しているの?忙しいの? 月より」
私は「今夜は忙しいと」返信しようとすると、
彼が「ねー俺のTシャツは?」と聞いてドアを開けて来た。
私は焦ってスマホを落としてしまった!
「何落としたの?スマホ?」
「洋服のポケットにスマホが入ってたみたいで、
洋服脱ごうとしたら落ちちゃった。」
私は下手な嘘をついた。
「ふ~ん。重いのに気が付かなかったの?」
「え?あー気が付かなかった!
Tシャツでしょ?棚の中だよ、いつもの場所!」
「あ~そっか!わかった!」
彼は不思議そうな顔をしながら、
部屋に戻った。
シャワーを浴びながら、
自分の態度を反省した。
彼に気が付かれないように、
いつも通りにしよう!
私はお風呂から出て部屋に戻る。
すると部屋は暗くなっていた。
部屋に入ると、
彼に後ろから抱きしめられて、
そのままベッドに向かう。
私はそんな気分にはなれなかった。
「ねー髪の毛乾かすから!」とやんわり断ってみたけど、
彼を止めることは出来なかった。
彼と重なり合いながらも、
頭の中では「月」のことを考えていた。
彼にも彼女がいて今頃はベッドの中にいるのかな?
こんなことを考えている自分が恥ずかしい。
欲求が満たされた彼はすぐに寝てしまった。
明日は彼が7時には家を出るので、
私は6時半に起きないといけない。
朝ごはんは今日買って来たパンにして、
明日の彼の着替えのシャツを出してと明日の準備をした。
時々、今日のように私の家に彼が泊まることがあるので、
着替えのYシャツが用意してある。
時計を見ると12時になっていた。
私は電気を消してベッドに入る、
彼に背中を向けて寝ていると、
彼が寝返りをして寝ぼけながら私を後ろから抱きしめて来た。
彼が寝ている間に「月」にメールしようか迷っていたが、
メールはしなかった。
「月」とはゆっくり話したいと思ったからだ。
28歳になってネットで知り合った相手に恋?
バカみたい。
もし相手が40代の既婚のおじさんだったらどうするの?
彼とのこの幸せをそんなことの為に壊すの?
この幸せは壊したくない、
でも刺激が欲しい…
そんなことを考えながら私は眠りに落ちた。
つづく
もっと飛躍する為の活動資金宜しくお願い致します。