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vol.6 議員になりたいあなたへ「自治を邪魔する地方自治法と地方議会」

こんにちは。らぷちゃです。
議員という立場・職業に興味がある方に向けて発信をしています。

首長もダメ、議員も役立たず、みたいな自治体は多い。だからこそ機能してほしい市民の主体的な政治参加の手段として、地方自治法に「直接請求」という制度がある。これは、代表者が一定数の有権者の署名を集めると、条例の制定や改廃、監査請求、議会解散、議会議員・首長・主要公務員の解職を求められる、というもの。

1.条例の制定(改廃)
有権者の1/50の署名を集めて首長へ。首長は20日以内に議会を開いて、意見を付けて議案にしますよ、という流れ。

2.監査請求
有権者の1/50の署名を集めて監査委員へ。監査委員は、請求事項を監査して、議会・首長・関係機関に報告します、という流れ。

3.議会の解散、議員や首長の解職請求
有権者の1/3の署名を集めて選挙管理委員会へ。選挙をして、過半数が同意すれば解散・解職へ。

4.公務員の解職
有権者の1/3の署名を集めて首長へ。首長は議会を開いて、議員の2/3が出席し、その3/4が同意すれば失職へ。

こんな感じにはなっていて、よくあるのは1。横浜カジノの住民投票運動なんかがそう。他の例でいうと「庁舎建設の是非を問う」とか「駅前開発はすべきか」みたいなことで、住民投票をせよ=住民投票条例を制定せよ、を請求するというもの。

1/50っていうのは、どうにもならないほど難しい数ではないけども簡単な数字でもなく、1カ月以内(政令市は2カ月以内)に集めなきゃならないので楽ではない。直接請求の内容にもよるけれども、ある程度市民全体に認知された内容であり、かつ多くの人が問題視しているような内容でなければ難しいかな。そして、これはとても大きな改善だと思うのだけども、令和3年の法改正前までは、印鑑が必要だった!!ということ。人が集まる場所=スーパーとか駅前で、声をかけて内容を説明して、署名OKとなっても「あ、印鑑ないわー」だったから、物理的・気持ち的なハードルがあって集めにくかった。それがコロナ禍、行政関係が脱押印へと動いたのは大きい。

提出された署名は、選挙管理委員会で、一人ひとり、選挙人名簿と照らし合わせる。市外在住者とか、18歳以下の子の名前を書いて人数を稼ごうなんてことはできない。署名が定数に達していることが認められると、首長はそれに「意見を附して」議会に出すことになる。

首長は「私は、住民投票する必要なんてないと思いますよ、そもそも選挙で選ばれた私がやろうとしてるんです。市民の代表である議会も、これまで建設費予算を可決してきましたよね?」とか。「議会が反対を繰り返してますが、市民の皆さんは私(首長)と同じ意見ではないですか?ぜひ住民投票で白黒はっきりさせましょう」とか。

そして議会で審査となるが、これが超最難関。市民は、登り方すらわからない高い壁に遭遇することになる。行政に対する不満+追随する議会への不満=直接請求になるので、直接請求自体をけしからん、と思っている議員はいるし、首長が附する意見が妥当だと忖度する議員もいる。

ともあれ、議会の審査っていうのは、陳情や請願を審査するときも似たようなもので、賛否の決め手になる優先順位は ①どこの誰(団体)が出したのか、誰派(誰の議員の新派なのか)の市民だ出したのか、②首長が賛成するか反対するか ③予算がかかるか ④陳情内容 みたいな感じ。

私が議員をしていた頃、市民からあがった陳情が国政に関係するもので、内容はとても妥当、というものがあったけど、自公は反対するわけにはいかなくて「陳情内容に反対できそうな部分がないか重箱の隅をつつく」ことをしていた。

そして反対理由を議会でこう述べた。「この陳情項目には、〇〇について抜本的な改善が必要である、とあります。確かにこの制度は改善しなければなりません。ただ抜本的、というのはどうでしょう。私はそこまでする必要はないと考えます。反対です!」みたいな。抜本的な、という抽象的な言葉を見つけて、そこを突いて反対することにしたわけだけど、本質はそこじゃないだろと思うけども仕方ない。議会の審査ってそんな感じ。

なんでこんな議員ばかりの議会になってしまうのか。一定の年齢以上の方に特にお願いしたいのは「地縁、血縁だけで投票するな」ということ。あと頼まれたから、と相手を知らずに投票しないでほしい。地元の人間に悪い奴はいないという根拠のない考え方もやめて。

まぁ、そもそも議員は競争率1.17倍の世界。落選しない。

それに、当選した人に本当に一定の支持が集まったのかといえば、そうでもないんじゃん?ということも多い。例えば、定数7の自治体に10人の候補者がいて、1000人が投票した場合、以下のような構図になる場合も。

1位 500票でAさん当選
2位 250票でBさん当選
3位 145票でCさん当選
4位 26票でDさん当選
5位 19票でEさん当選
6位 17票でFさん当選
7位 15票でGさん当選


8位 13票でHさん落選
9位 10票でIさん落選
10位 3票でJさん落選

決して、きちんと仕事する人が上位とは限らないが、支持を受けている人が当選した、という結果でもないように思う。トップ当選しても、最下位当選しても、議会内では同じ1票ずつしかないので、もし上位3名が賛成しても、残りの7名が反対すれば3vd7で否決となる。選挙の票数にしたら895 vs 72で圧倒的に反対のほうが多いはずなんだけども。

というわけで、高いハードルを越えて直接請求が来たとしても、審査前には結末が見えていることが結構ある。

2018年には、鎌倉市で「住民投票条例制定」の直接請求をして議会に議案が上程されたけどやっぱり議会で否決されて住民投票は実現しなかった。

私は、住民からの直接請求は、議会を通さなくて良い!!!と思う。基準となる署名数を増やしてもよいから集まったら必ず住民投票を実施する、で良い。(と思っていたら、元我孫子市長の福嶋さん(現在、中央学院大学教授)が我孫子市で条例制定していたことが判明。まさに署名の数増やして、それクリアして請求してきたら必ず実施するというもの。福嶋さんは地方自治の本を何冊か出しているので読んでほしい。ぶんぶん頷ける。)

市民の権利が本当に低すぎる。
これじゃ自治なんてできない。
「市民の力でまちづくり」そんなキャッチフレーズで選挙を戦う首長・議員は多い。ぜひ、どうしたら市民の力を発揮できるか、しっかりと考えてほしい。

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