立ち止まれない街
都会は立ち止まることを許してくれない
ちょっとした停滞も商業の敵として排除される
都市空間のデザインはつまるところ
土地建物の所有者の利にかなうように創造されるのであり
実際にそこで歩く人の疲労や考えは全く軽視されている
新宿や梅田のような都心を歩いたことのある人なら
ご理解いただけるとと思うがベンチがない
探しても探してもベンチがない、トイレもなかなか見つからない
高級ブティックや腕時計を販売する店は一瞬で見つかるのに
用を足すのに必要な場所を見つけるには徒労を要する
まったく都市とは商人や地主の欲望を三次元に可視化した空間なのだと再認識させられる
きっと彼ら商売をするもの達にとってみれば
停滞や滞在をうながす休憩施設は
商機を押しつぶす阻害要因としか映っていないのだろう
私たちの思考能力を奪い、判断効力を奪い
一円でも多くの不用品を売りつけてやろうという算段なのであろう
ふと立ち止まって腰を落ち着けたり
荷物を整理したりといったことは親の仇のように映っているのだろう
無料で立ち止まろうとするものは都市の敵
喫茶店やネットカフェといった有料で立ち止まれる施設も
なかなか見つからないように巧妙に細工されている
華やかな都市で最も追いやられ排斥されているのは
歩行者全員なのである
都市の動線、金銭を浪費させるよう最も合理的に仕組まれた動線
資本主義のグロテスクさが歩行者の移動範囲に凝縮されているのである
その意味で歩行者にとってもっとも理想的な都市は横浜だ
横浜の関内にはベンチがたくさんたくさんある
まったく急かされない
ホームレスも安楽を感じて居座っている
寛容な思想と都市設計を施した都市だから
日本最大の地方自治体まで登り詰めたのも全くうなづける
日本の各都市が横浜のようになればきっと良い国になる
私は横浜には住んでいないけれども
常に自分は横浜人であるという自覚を持って生きたい