とにかく威勢よくドーンでMLK通りを走る (Jeezy - "MLK BLVD" ft. Meek Mill)
Writer: @vegashokuda
このアルバムをもって引退(!?)なんてことも言っている、ジージー(Jeezy)の『TM104: The Legend of the Snowman』がドロップしました!
皆さんもご存知のとおり、ラッパーの引退宣言はこの世で最も信用ならないものの一つなので、これからもジージーの素晴らしい音楽に期待しましょう!
ということで、彼の今後の活躍を祈りつつ、ミーク・ミル(Meek Mill)との「MLK BLVD」のリリックを読み解いていきたいと思います!
その前に
タイトルの"MLK BLVD"ですが、これは"Martin Luther King Boulevard"のことです。試しにこの名前をGoogle マップなどで検索してみていただきたいのですが、ヒューストン、ボルチモア、オースティン、リバーサイド、ニューヨーク…そう、全米の至る所に存在します。私が以前参加したツアーのガイドは「黒人が5人でも住んでいる街には必ずマーティン・ルーサー・キング・ブルヴァードがある」とまで言っていました。さすがにそれは盛りすぎかもしれませんが、実際それくらいどこにでもある通りなのは確かです。
そして、偉大な公民権運動活動家であったマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの名前を冠しているだけあって、やはり黒人が多く居住するあたりを通るストリートであることが多いようです(伝聞)。私が先日行ったLAのそれも、たしかにレイマート・パークなど黒人が多く住むエリアを通る通りでした。
では、このストリートの名前をタイトルにした曲で、ジージーとミーク・ミルはどんなことを言っているのでしょうか? 見てみましょう。
イントロ(Jeezy)
Ah
Hahaha
Turn everything up in a lil' bit
Oh, we gon' keep that
Yeah
【意訳】
アー
ハハハ
全部ちょっとずつ上げろ
その調子でいくぜ
イェー
(Lex Luger on the beat, so what the fuck you lookin' at?)
【意訳】
(レックス・ルーガーのビートだ、お前ら何を見てやがる?)
*この曲のプロデューサーは、リック・ロス(Rick Ross)の「B.M.F.」などで知られるレックス・ルーガー(Lex Luger)です。
You claim you real but your Rollie fake
Say you my dawg but you know you're snake, fuck 'em
Like Makaveli, I'm about to snap
Like Curtis Jackson, go and get the strap
【意訳】
お前はリアルを気取ってるが、お前のローリーは偽物だ
お前は俺の仲間だと言うが、裏切り者だろ クソくらえ
マキャベリみたいにやってやるぜ
カーティス・ジャクソンみたいに銃を取ってくるぜ
*2行目では"dawg"(犬)と"snake"(蛇)という2種類の動物を使い、それぞれ「仲間」「裏切り者」の意味となっています。
*3行目の「マキャベリ」はルネサンス期の政治思想家であるとともに、2パック(2Pac)の別名でもあります。獄中でマキャベリの著書『君主論』を読んで感銘を受けたパックは自らをそう名乗り、死後にはマキャベリ(Makaveli)名義のアルバム『The Don Killuminati: The 7 Day Theory』がリリースされ、人々を驚かせました。
*4行目の「カーティス・ジャクソン」は、すっかりSNS芸人になってしまった感もある50セント(50 Cent)のことです。彼は"Get the strap"というフレーズを多用します。
サビ(Jeezy)
I got the Dawn on Martin Luther King
Hop out the Dawn on Martin Luther King
I hustle hard, I go and get the check
They want me dead just like I'm Malcolm X
【意訳】
俺はマーティン・ルーサー・キングでドーンに乗る
マーティン・ルーサー・キングでドーンから飛び降りる
俺はハードにハッスルする 金を手にするんだ
みんな俺にマルコム・Xみたいに死んでほしがってる
*ここで「マーティン・ルーサー・キング」(以下"MLK")が出てきました。彼がハッスルするストリートがMLK通りのようです。
*ジージーの曲にはよくロールスロイスが登場します(参考)。ここで登場する「ドーン」もロールスロイスの車種です。
*マルコム・XはMLKと並んで公民権運動の時代を代表する活動家です。スパイク・リー(Spike Lee)監督の作品に、彼の一生を描いた『マルコムX』(原題:'Malcolm X'、1992年)という作品があるので、まだの方はぜひご覧になってください。
ブリッジ
Had that ambition from the very start
Back of that Bentley like I'm Rosa Parks
You get that dirty money, best to wash it
Just keep your eyes out for them false prophets
【意訳】
最初っから大志を抱いていた
ローザ・パークスみたいにベントレーの後ろに座って
汚い金を得たなら、きっちり洗浄しな
偽物の預言者には気をつけろ
*ローザ・パークスは、ジム・クロウ法と呼ばれる人種隔離法が施行されていた時代に、バスで白人に席を譲ることを拒んだことで有名な活動家の黒人女性です。英語の教科書等で読んだことのある方も多いかもしれませんね。
1バース目(Jeezy)
This nigga talkin' like he 'Ye or something
That nigga must be on that yayo or something
Heard what I said, nigga, fuck Trump
Say it again, nigga, fuck Trump
【意訳】
こいつ、自分がイェか何かのつもりで話してやがる
あいつはコカインか何かをやってるにちがいない
俺の言ってること聞いたか? ファック・トランプ
もっかい言ってやるよ、ファック・トランプ
*1行目の"Ye"はカニエ・ウェスト(Kanye West)、2行目の"yayo"はコカインのことです。昨年トランプ大統領への支持を表明したカニエを引き合いに出し、トランプ支持者に対し「こいつはどうかしてる(コカインでもやってるのか)」と強気な態度を貫いています。
Somebody better call CNN
Hello? I'm 'bout to make this shit G again
I'm war-ready like I'm Ricky Ross
Yeah, boys in the hood, we knockin' Ricky off
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